看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
42歳、1型糖尿病の患者さんが、嘔気・多飲・高度の全身倦怠感を主訴に救急搬送されました。意識はやや混濁しており、呼吸は深く速い(
クスマウル呼吸 (Kussmaul respiration))。血糖値は
650 mg/dL、動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスを認め、DKAと診断されました。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
初期アセスメント:ABC(気道・呼吸・循環)の確保。バイタルサイン、意識レベル、脱水徴候(皮膚ツルゴール低下など)、呼吸パターンを評価。
2.
最優先介入:
ここがポイント! 心臓モニターを装着し、不整脈の有無を継続監視します。 同時に、カリウムを含む輸液製剤やカリウム補充用の薬剤を準備します。
3.
治療の実施とモニタリング:医師の指示に基づき、生理食塩水による急速輸液を開始。インスリン持続点滴を開始したら、
1-2時間ごとの血糖値および電解質(特にカリウム)のモニタリングを厳密に行います。カリウム値が
3.5 mEq/Lを下回れば、補充療法が開始されます。
4.
患者の安全と注意事項 (Precautions):インスリン投与中は低血糖に注意。また、小児や若年者では治療に伴う脳浮腫のリスクがあるため、神経学的所見(頭痛、意識レベルの変化など)の変化に細心の注意を払います。
看護処置と与薬フロー
| 段階 | 看護ケア・処置 | 注意点・根拠 |
|---|
| 1. 安定化 | 酸素投与、2本の太い末梢ライン確保、心モニター装着 | 組織の低酸素を防ぎ、急速輸液と薬剤投与のルートを確保。不整脈の早期発見。 |
| 2. 輸液療法 | 生理食塩水の急速投与(例:最初の1時間で1L) | 循環血液量を補充し、ショックと腎不全を予防。インスリン投与の前提。 |
| 3. インスリン療法 | レギュラーインスリンの持続静脈内投与 | 血糖を徐々に低下させ(目標:50-75 mg/dL/hr)、ケトン体産生を抑制。急激な低下は危険。 |
| 4. 電解質補正 | カリウム値に応じたカリウム補充(通常、輸液に混注) | 不整脈予防。尿排泄が確認されてから補充開始が原則。 |
先輩看護師からの一言
「DKAの患者さんを受け持ったら、まず『心臓』と『カリウム』に目を向けてください。モニターの波形が乱れ始めたら、それはカリウムが危険なレベルに達しているかもしれないサインです。治療はチームで行いますが、ベッドサイドで最も長く患者さんを見ている看護師のあなたが、この『静かなる危機』に最初に気づく守り手です。国試でも『優先度』を問う問題は多いですよ。『何が一番命に関わるか?』という視点で考えれば、自ずと答えが見えてきます!」