看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
術後24時間、患者はベッド上安静中です。患側上肢はやや腫脹し、自発痛を訴えています。ドレーンチューブからは少量の血性排液が確認されます。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント: バイタルサイン、疼痛の程度(疼痛スケール使用)、患肢の色調・皮膚温・腫脹の程度・知覚・橈骨動脈拍動を観察します。ドレーン排液の量・性状・色も記録します。
2.
優先介入: 患側上肢を
枕やクッションで支持し、心臓より高い位置に挙上します。肘関節は軽度屈曲位が安楽です。この体位を維持するよう患者と家族に説明します。
3.
二次的介入: 医師の指示に基づき疼痛薬を投与し、安楽な体位を整えます。離床の許可が出たら、患側上肢を三角巾やアームスリングで固定・支持してから歩行を援助します。創部のドレッシングは滲出液がなければ無理に交換せず、観察を続けます。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
患肢への点滴刺入、血圧測定は絶対に禁忌です。患者が無意識に患肢を下にして寝てしまわないよう、定期的な体位確認と声かけが必要です。腫脹が急速に増強したり、激痛やチアノーゼが出現した場合は、血管障害などの緊急事態を疑い、直ちに報告します。
看護処置と与薬フロー
| ケア | 目的・ポイント |
|---|
| 患肢の挙上 | リンパ・静脈還流促進、浮腫予防。心臓より高い位置を維持。 |
| ドレーン管理 | 排液の停滞による感染・血清腫予防。排液量・性状の観察記録。 |
| 疼痛管理 | 早期リハビリへの参加を促す。定時投与または必要時投与を活用。 |
| 肩関節可動域訓練 | 医師指示で開始。急性期は自動介助運動から。無理な他動運動は禁止。 |
先輩看護師からの一言
「乳房切除術後は、身体的な変化だけでなく、女性としてのアイデンティティに関わる大きな心理的ダメージを受けている患者さんが多いです。患肢を挙上するという物理的なケアは、『あなたの将来の生活の質を守るための、今できる最も大切なことですよ』と説明しながら行うと、患者さんの理解と協力が得られます。看護師は、合併症を予防する技術者であると同時に、患者さんの心に寄り添うケアの提供者でもあることを忘れないでくださいね!」