看護学のコア解説
この問題は、
急性閉塞隅角緑内障 (Acute angle-closure glaucoma)の緊急度を判断するための
フィジカルアセスメント (Physical assessment)のポイントを問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)急性閉塞隅角緑内障は、眼内の房水(Aqueous humor)の流出路である隅角(Angle)が急激に閉塞し、
眼圧 (Intraocular pressure, IOP)が急激に上昇する眼科救急疾患です。正常眼圧は
10〜21 mmHgです。眼圧の急激な上昇は、視神経を直接圧迫・損傷し、数時間から数日で不可逆的な視力障害を引き起こす可能性があります。そのため、
ここがポイント! 眼圧の数値と、それに伴う臨床症状(激しい眼痛、悪心・嘔吐、虹視症(Halos around lights)、固く固定した散瞳)の組み合わせが、緊急介入の必要性を判断する最も重要な指標となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)選択肢①「眼圧45 mmHg、固く固定した瞳孔」が正解です。理由は以下の通りです。
1.
眼圧45 mmHg: 正常上限の2倍以上であり、
重度の高眼圧状態を示しています。このレベルでは視神経への血流が阻害され、急速な神経線維の虚血と死滅が進行します。
2.
固く固定した瞳孔 (Hard, fixed pupil): 高眼圧により虹彩の動きを司る筋肉(瞳孔括約筋)が麻痺し、瞳孔が中等度に散大し、対光反射が消失した状態です。これは隅角閉塞が進行している直接的な徴候であり、緊急性が極めて高いことを示します。
これらの所見は、患者の訴え(激しい眼痛、悪心、虹視症)と合致し、
緊急の減圧処置(薬物療法、レーザー虹彩切開術など)が必須であることを意味します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)混同注意! ② 軽度の末梢視野狭窄と徐々に進行する発症:これは
原発開放隅角緑内障 (Primary open-angle glaucoma)の典型的な経過です。慢性で無症状に進行するため、緊急性は低く、定期的な管理が主体となります。
③ 眼の充血と瞬き時の中等度の不快感:これは結膜炎や眼瞼炎など、他の一般的な眼疾患でも見られる所見です。緑内障の緊急性を示す特異的な所見ではありません。
④ 眼圧22 mmHgの軽度上昇:正常上限をわずかに超える値であり、緊急介入を要するレベルではありません。慢性緑内障や眼圧が不安定な状態を示唆します。
関連概念の整理 (Related Concepts)急性閉塞隅角緑内障の管理では、眼圧を迅速に下げることが最優先です。薬物療法として、房水産生を抑制する炭酸脱水酵素阻害薬(例:アセタゾラミド)の静脈内注射、房水流出を促進する浸透圧利尿薬(例:マンニトール)の点滴、瞳孔を収縮させ隅角を開放させる
ピロカルピン点眼薬などが用いられます。
概念のまとめ
急性閉塞隅角緑内障は「眼痛・頭痛・悪心・虹視症・視力低下」が5大症状。緊急度は「眼圧の高さ」と「瞳孔所見(固く固定した散瞳)」で判断する。
一目で比較!
| 特徴 | 急性閉塞隅角緑内障 | 原発開放隅角緑内障 |
|---|
| 発症 | 急激(数時間〜数日) | 緩徐(数年〜数十年) |
| 症状 | 激しい眼痛・頭痛・悪心・嘔吐・虹視症 | 自覚症状に乏しい(末期まで気づかない) |
| 眼圧 | 著明上昇(30mmHg以上が多い) | 正常〜中等度上昇 |
| 瞳孔 | 中等度散大、対光反射消失(固く固定) | 通常は変化なし |
| 緊急性 | 眼科救急(視神経救済のため即時減圧が必要) | 緊急性は低い(生涯にわたる管理が必要) |
解剖生理と薬理のポイント
房水は毛様体で産生され、後房→瞳孔→前房→隅角(線維柱帯・シュレム管)を通って眼外へ流出する。隅角が閉塞すると房水が溜まり、眼圧が上昇する。治療薬は「産生抑制(β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬)」「流出促進(プロスタグランジン関連薬)」「隅角開放(縮瞳薬:ピロカルピン)」に大別される。
暗記のコツとゴロ合わせ
急性緑内障の症状は「痛い(眼痛)、吐く(悪心・嘔吐)、ハロ(虹視症)が見える」で覚える。緊急サインは「眼圧が高い(>30mmHg)+瞳孔が固い」。
国試頻出ポイント
「急性閉塞隅角緑内障の症状」「緊急度の判断基準(眼圧と瞳孔)」「禁忌(散瞳薬の使用は絶対にダメ!)」が頻出。また、悪心・嘔吐から消化器疾患と誤診されやすい点も出題される。
国試出題パターンの変化に注意!
単に症状を選ばせる問題から、「この患者に看護師が最初に行うべき行動は?」(例:医師への緊急連絡、安静と暗室の確保、嘔吐に備えた体位管理)や、「禁忌となる薬剤は?」(例:抗コリン薬、三環系抗うつ薬など散瞳作用のある薬)など、看護実践に直結した応用問題へ変化しています。