看護学のコア解説
この問題は、
眼球穿孔・破裂 (Globe rupture/perforation)を疑う緊急時の、
優先度の高い看護アセスメント (Priority nursing assessment)について問うています。金属片が角膜に刺さっているという状況は、
混同注意! 単なる異物ではなく、眼球の内部構造に深刻な損傷を与え、失明に至る可能性のある緊急事態です。
重要概念の分析 (Key Concept)
外傷性の眼損傷では、
ABC(気道・呼吸・循環)に次ぐ「D(Disability:神経学的評価)」の一部として、視覚機能の脅威を評価することが重要です。特に、鋭利な物体による穿孔では、眼内容(水晶体、硝子体、網膜)の脱出や、眼内感染(眼内炎)のリスクが高まります。このため、
ここがポイント! 最初のアセスメントでは、
さらなる損傷を引き起こす可能性のある検査(視力検査、眼圧測定)は避け、非侵襲的に「穿孔の有無」を確認することが最優先となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の③「眼球破裂または穿孔の徴候の評価」が最優先される理由は以下の通りです。
1.
生命・視機能の脅威の特定: 眼球穿孔は、眼内組織の脱出や重度の感染を招き、迅速な外科的処置(縫合)が必要な緊急事態です。これを最速で見極めることが、患者の視力予後を決定します。
2.
二次損傷の防止: 穿孔が疑われる場合、眼球を圧迫する行為(眼瞼を強く開ける、眼圧計を当てるなど)は、眼内容をさらに押し出し、損傷を悪化させる絶対的な禁忌です。したがって、視力検査(①)や眼圧測定(④)は、穿孔の可能性が否定されるまで行ってはいけません。
3.
非侵襲的アセスメントの実施: 初期評価では、患者の訴え(急激な視力低下、痛み)、観察(角膜の不正な裂傷、茶色の虹彩組織の脱出(虹彩脱出)、硝子体の脱出、前房の深浅不同、著明な低眼圧)、および軽く行う対光反射(②)の情報を集めます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、眼の状態を評価する重要な検査ではありますが、この緊急時には優先順位が低く、場合によっては有害です。
①
視力検査: スネレン視力表を用いた正式な検査は、患者に目を細めさせたり、圧迫を加えたりする可能性があり、穿孔時には禁忌です。簡易的な「指の本数がわかるか」などの問いかけは可能ですが、体系的な検査は後回しです。
②
瞳孔対光反射: これは非侵襲的で重要な神経学的所見です。しかし、穿孔の有無を「評価する」という主目的に対しては、間接的な所見に過ぎません。穿孔があっても反射は保たれる場合があります。優先度は穿孔の直接徴候を探す③よりも低くなります。
④
眼圧測定: 穿孔がある場合、眼圧は通常
低下しています。しかし、トノメーターを角膜に当てて測定することは、穿孔部位を確実に悪化させる行為であり、
絶対に行ってはいけません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
眼内炎 (Endophthalmitis): 穿孔により細菌が眼内に入り、重篤な化膿性炎症を起こした状態。緊急の抗菌薬投与と硝子体手術が必要。
・
対処法: 穿孔が疑われる場合の基本は「何もせず、保護する」です。金属片が刺さったままの場合は抜去せず、硬い眼シールド(アイシールド)で患眼を保護し、安静を保ちながら速やかに眼科医に引き継ぎます。
概念のまとめ
・眼球穿孔の疑い → 最優先は「穿孔の徴候を非侵襲的に評価」。
・視力検査・眼圧測定 → 穿孔の可能性が否定されるまで「禁忌」。
・基本対応 → 異物は抜かず、眼を保護し、安静、速やかな専門医受診。
一目で比較!
| 評価項目 | 眼球穿孔「あり」が疑われる時 | 眼球穿孔「なし」が確認された時 |
|---|
| 視力検査(詳細) | 禁忌。二次損傷のリスク。 | 実施可。視機能評価の基本。 |
| 眼圧測定 | 絶対禁忌。眼内容脱出の危険。 | 実施可。緑内障などの評価に重要。 |
| 初期対応 | 異物は触らず、硬い眼シールドで保護。 | 異物の除去、洗眼などの処置を検討。 |
解剖生理と薬理のポイント
・眼球は外壁(強膜・角膜)で内部の房水、水晶体、硝子体、網膜などを保護する「閉鎖空間」です。穿孔によりこの空間が開放されると、内部圧力(眼圧)が維持できず、組織が脱出したり、外界からの細菌が侵入したりします。
・緊急時に使用される薬剤としては、抗菌薬(点眼・全身)による感染予防と、破傷風トキソイドの接種が重要です。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位の覚え方:「穿孔(せんこう)を疑ったら、触るな、測るな、守れ!」
「触るな」→ 異物を抜去しない。
「測るな」→ 眼圧測定をしない。
「守れ」→ 硬い眼シールドで保護する。
国試頻出ポイント
眼球外傷は「何をしてはいけないか」という禁忌行為と、その理由(病態生理)をセットで問われることが非常に多いです。「金属片が刺さっている」「鋭利なもので刺した」というキーワードが出たら、まず「眼球穿孔」を疑い、圧迫を加える行為を選択しないようにしましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「眼の外傷」でも、化学熱傷(アルカリ・酸)では「直ちに大量の生理食塩水で洗眼する」が最優先ケアです。損傷の機序(物理的穿孔 vs 化学的腐食)によって、最優先の看護介入が真逆になる点に注意が必要です。