看護学のコア解説
この問題は、小児の皮膚疾患の鑑別、特に
疥癬 (Scabies)の特徴的な所見を問うています。疥癬は
ヒゼンダニ (Sarcoptes scabiei var. hominis)というダニが皮膚の角質層に寄生することで起こる、強いかゆみを伴う感染症です。
重要概念の分析 (Key Concept)
疥癬の診断において最も重要な身体的所見は、
疥癬トンネル (Burrow)です。これはメスのダニが角質層内を移動・産卵するために作る、細く線状(時にジグザグや波打った)の灰白色の隆起です。好発部位は、指の間、手首の内側、肘、腋窩、腰部、外陰部など、皮膚が柔らかく薄い部分です。特に夜間や入浴後など、体が温まるとかゆみが
ここがポイント!激しくなる(夜間掻痒)のが特徴です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の選択肢「指の間や手首にみられる細く波打った糸状のトンネル」は、まさにこの
疥癬トンネルを正確に描写しています。これが確認できれば、疥癬を強く疑うことができます。小児では、このトンネルに加えて、掻き壊しによる二次感染や、全身に広がる丘疹(赤いぶつぶつ)もみられることがあります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、疥癬と混同しやすい他の小児の皮膚感染症を表しています。
① 頭皮の円形で鱗屑を伴い、縁が盛り上がった皮疹:これは
頭部白癬 (Tinea capitis)、いわゆる「しらくも」の典型的な所見です。真菌(カビ)感染症です。
② 口や鼻の周りの蜂蜜色のかさぶたを伴った病変:これは
伝染性膿痂疹 (Impetigo contagiosa)、いわゆる「とびひ」の特徴です。黄色ブドウ球菌や溶連菌による細菌感染症です。
③ 体幹に線状に配列する小水疱:これは
帯状疱疹 (Herpes zoster)の特徴です。水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により、神経の走行に沿って帯状に水疱が出現します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
疥癬は
接触感染で広がります。家族内や集団生活施設(保育園、学校、高齢者施設)で集団発生することが問題となります。看護師は、患者へのケアだけでなく、
感染予防対策 (Infection control)(標準予防策の徹底、リネン・衣類の適切な処理、家族や濃厚接触者の検査・治療)が非常に重要です。
概念のまとめ
疥癬の三徴:① 激しい夜間掻痒、② 指間・手首などに好発する疥癬トンネル、③ 家族内・集団内感染の可能性。
一目で比較!
| 疾患 | 原因 | 特徴的な皮疹 | 主な好発部位・特徴 |
|---|
| 疥癬 | ヒゼンダニ | 細く波打った灰白色のトンネル(疥癬トンネル) | 指間、手首、腋窩、腰部。夜間の激しいかゆみ。 |
| 伝染性膿痂疹 | 細菌(黄色ブドウ球菌など) | 水疱・膿疱が破れ、蜂蜜色の痂皮を形成 | 口周囲、鼻周囲。接触で「飛び火」する。 |
| 頭部白癬 | 真菌 | 円形の脱毛斑、鱗屑、断毛(毛が折れる) | 頭皮。リング状に広がる。 |
| 帯状疱疹 | 水痘・帯状疱疹ウイルス | 紅斑上に小水疱が帯状に配列 | 体の片側の神経支配領域に沿って出現。疼痛を伴う。 |
解剖生理と薬理のポイント
疥癬の治療には、
イベルメクチン (Ivermectin)の内服や、
フェノトリン (Phenothrin)や
クロタミトン (Crotamiton)などの外用殺虫剤が用いられます。重要なのは、
患者本人だけでなく、濃厚接触者全員に同時治療を行うことです。また、衣類や寝具は50℃以上のお湯で10分間洗濯するか、乾燥機にかけることでダニを死滅させられます。
暗記のコツとゴロ合わせ
疥癬の好発部位は「
指の間は手首、肘の内、腋の下、おへその周り」とリズムで覚えましょう。また、「
夜、温まるとかゆい」は疥癬の大きな特徴です。
国試頻出ポイント
疥癬は、
「夜間の激しいかゆみ」と「疥癬トンネル」の組み合わせで出題されることが圧倒的に多いです。また、
集団発生のリスクと感染対策、
治療は本人と接触者全員が対象という点もよく問われます。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「疥癬の皮疹はどれか」と問うだけでなく、「保育園で集団発生が疑われる場合の看護師の対応として最も適切なのはどれか」など、
感染管理の実践的な視点を組み合わせた問題が増えています。皮疹の知識と感染対策の知識をセットで押さえましょう。