看護学のコア解説
この問題は、
疥癬 (Scabies)という感染症を持つ幼児のケアにおいて、
最優先すべき看護介入 (Priority nursing intervention)を問うています。疥癬は、
ヒゼンダニ (Sarcoptes scabiei var. hominis)というダニが皮膚の角質層に寄生することで起こる、
接触感染 (Contact transmission)を主とする非常に感染力の強い皮膚疾患です。
重要概念の分析 (Key Concept)
疥癬ケアの核となる概念は「
ここがポイント!感染拡大の防止 (Prevention of transmission)」です。ダニは宿主の皮膚から離れると数日で死滅しますが、濃厚な皮膚接触や、寝具や衣類を介した間接的な接触でも感染が成立します。特に家族内での感染(家庭内感染)が非常に起こりやすいため、患者本人だけを治療しても、無症状の保菌者である家族から再感染するリスクが高くなります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢③「厳重な隔離予防策を実施し、すべての家族を同時に治療する」が正解です。その根拠は以下の通りです。
1.
感染源の遮断:患者本人の治療と並行して、濃厚接触者である全家族を同時に治療することで、感染の連鎖を断ち切ります。
2.
標準予防策+接触予防策の適用:疥癬患者には、標準予防策に加えて接触予防策が推奨されます。これは、患者の皮膚や衣類に触れる可能性のある看護師や家族を保護するためです。
3.
再感染の防止:これが最も重要な点です。家族の一人が治療されずに保菌していると、治癒した患者がすぐに再感染してしまいます。したがって、
「同時治療 (Simultaneous treatment)」が感染制御の絶対条件となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は症状緩和には有効ですが、感染拡大防止という最優先課題には直接寄与しません。
- ① 外用抗菌薬の塗布:二次的な細菌感染(膿痂疹など)を予防するケアですが、一次原因であるダニの駆除にはなりません。優先度は低いです。
- ② 経口抗ヒスタミン薬の投与:激しい掻痒感(特に夜間)を軽減する対症療法です。患者のQOL向上には重要ですが、感染制御そのものではありません。
- ④ 患部への冷罨法:炎症や掻痒感を一時的に和らげるケアです。根本的な治療や感染予防にはつながりません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
疥癬の特徴的な症状として、
夜間の激しい掻痒 (Nocturnal pruritus)と、
疥癬トンネル (Burrow)と呼ばれる皮膚の線状の隆起があります。治療には、
イベルメクチン (Ivermectin)の内服や、
フェノトリン (Phenothrin)や
ペルメトリン (Permethrin)などの外用殺虫剤が用いられます。治療と並行して、衣類や寝具の
熱処理(50℃以上10分間の洗濯または乾燥)も必須です。
概念のまとめ
・疥癬の第一の看護目標:
感染拡大の防止。
・最優先介入:
患者と全濃厚接触者(家族)の同時治療。
・二次的ケア:掻痒の緩和、二次感染の予防、環境整備(衣類・寝具の洗濯)。
一目で比較!
| 疾患 | 感染経路 | 隔離予防策 | ケアの優先事項 |
|---|
| 疥癬 (Scabies) | 接触感染(直接/間接) | 標準予防策 + 接触予防策 | 家族を含む同時治療 |
| 水痘 (Chickenpox) | 飛沫感染、空気感染、接触感染 | 標準予防策 + 空気予防策 + 接触予防策 | 空気予防策の徹底、ワクチン未接種者への曝露防止 |
| 膿痂疹 (Impetigo) | 接触感染 | 標準予防策 + 接触予防策(滲出液が多い場合) | 抗菌薬治療、局所の清潔保持 |
暗記のコツとゴロ合わせ
「
疥癬は、家族全員で退治せんと、再発する」
→ 家族全員の同時治療が必須であることをイメージしましょう。
国試頻出ポイント
疥癬は「感染症看護」と「小児看護」の融合問題として頻出です。単に「掻痒へのケア」を選ばせるのではなく、
「感染管理上、最優先すべきことは何か?」という視点で問われます。常に「公衆衛生学的アプローチ(集団への対策)」を考えることがポイントです。
国試出題パターンの変化に注意!
・基本パターン:本問のように「最優先の看護介入」を選択させる。
・応用パターン:「家族への指導内容として適切なものは?」と問われ、「衣類や寝具を熱洗濯すること」や「症状がなくても全員が治療を完了すること」を選ばせる問題もあります。
・鑑別パターン:他の小児の皮膚感染症(水痘、伝染性膿痂疹)と、必要な隔離予防策の種類を比較させる問題も出題されます。