看護学のコア解説
この問題は、
熱傷 (Burn)患者、特に小児における
初期評価の優先順位 (Priority of initial assessment)を問うています。看護師国家試験では、
ここがポイント! どんな状況でも、
ABC(気道・呼吸・循環)のアセスメントが最優先であるという原則が繰り返し出題されます。
重要概念の分析 (Key Concept)
問題の患児は、
顔面 (Face)、
頸部 (Neck)、
上胸部 (Upper chest)に熱傷を負っています。これらの部位は、
気道熱傷 (Inhalation injury)のリスクが非常に高い領域です。火災では、高温の煙や有毒ガスを吸入することで、気道粘膜が熱傷を受け、急速に浮腫を起こし、気道閉塞に至ることがあります。小児は気道が狭いため、成人よりもさらに短時間で重篤な状態に陥ります。したがって、
混同注意! 熱傷面積や痛みの評価よりも、まず
気道開通性 (Airway patency)と
呼吸状態 (Respiratory status)を確認することが絶対的な優先事項です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は「③ 気道開通性と呼吸状態」です。その根拠は以下の通りです。
1.
生命の直接的な脅威:気道閉塞や呼吸不全は、数分で死に至る可能性があります。他の評価は、気道と呼吸が確保されてから行います。
2.
受傷機転と部位:家屋火災(密閉空間での火災)と顔面・頸部の熱傷は、吸入損傷の強力なリスク因子です。
3.
小児の解剖学的特徴:小児の気道はより狭く、粘膜が柔らかいため、浮腫による閉塞の進行が速いです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 年齢に適した疼痛スケールを用いた痛みの評価:疼痛管理は重要ですが、
二次的優先事項です。まず命を守るための評価(ABC)が完了してから、系統的な疼痛アセスメントを行います。
② 尿量モニタリングによる水分・電解質バランスの評価:広範囲熱傷では、
血管透過性の亢進 (Increased vascular permeability)により大量の体液が喪失し、
熱傷ショック (Burn shock)を起こすリスクがあります。そのため、
パークランド公式 (Parkland formula)に基づく輸液療法と尿量モニタリングは極めて重要です。しかし、これも気道・呼吸の確保の
次に行うべきケアです。
④ 9の法則を用いた熱傷の深さと範囲の評価:熱傷面積の算定(小児では修正9の法則を使用)は治療計画立案に必須ですが、
初期一次評価(ABCDEアプローチ)の中では、D(障害:神経学的評価)やE(全身露出・環境制御)に該当し、気道・呼吸・循環の評価の後に行います。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
吸入損傷 (Inhalation injury)の徴候:嗄声、喘鳴、顔面・鼻毛の熱傷、痰にすすが混じる、呼吸困難など。
・
小児の熱傷面積算定:成人の「9の法則」は小児の体表面積比率と異なります。小児では頭部の比率が大きく、下肢の比率が小さいため、「小児用修正9の法則」または「ラウンド・バックスの図表」を使用します。
概念のまとめ
・熱傷患者の初期評価:
ABC(気道・呼吸・循環)が最優先。
・顔面・頸部熱傷、密閉空間火災 → 吸入損傷のリスクが高い → 気道アセスメントが最優先。
・小児は気道が狭く、症状の悪化が早い。
・疼痛管理、輸液療法、創部評価は、気道・呼吸が安定してから開始する二次的優先事項。
一目で比較!
| 評価項目 | 優先度 | 理由とタイミング |
|---|
| 気道・呼吸 (Airway & Breathing) | 最優先 (Immediate) | 生命の直接的な脅威。到着後すぐに評価・介入。 |
| 循環 (Circulation) | 第2優先 (Secondary) | ショック予防のための輸液ライン確保とバイタルサイン、尿量モニタリング。 |
| 疼痛評価 (Pain assessment) | 第3優先 (Tertiary) | ABCが安定した後、系統的に評価し鎮痛を開始。 |
| 熱傷範囲・深度の詳細評価 | 第3優先 (Tertiary) | 治療計画立案のために必要だが、緊急度は低い。 |
解剖生理と薬理のポイント
・
吸入損傷の病態:熱や化学物質による気道粘膜の損傷 → 毛細血管透過性亢進 → 気道粘膜浮腫 → 気道狭窄・閉塞。また、一酸化炭素(CO)中毒も併発しやすい。
・
熱傷ショックの病態:広範囲熱傷により、サイトカインの放出などにより全身の毛細血管透過性が亢進 → 血管内液が組織間隙へ漏出 → 循環血液量減少 → ショック。
・初期輸液:
乳酸リンゲル液 (Lactated Ringer's solution)が第一選択。パークランド公式(4ml × 体重(kg) × 熱傷面積(%))に基づき、受傷後24時間で投与。
暗記のコツとゴロ合わせ
・優先順位の基本は「
気道(A)> 呼吸(B)> 循環(C)> その他」。熱傷でも外傷でも変わりません。
・吸入損傷のリスクが高いのは「
顔に火の粉、声がかれ」(顔面熱傷、密閉空間火災、嗄声)。
国試頻出ポイント
熱傷患者の看護では、以下の流れで出題されます。
1.
到着直後の最優先観察項目は? → 気道・呼吸状態(特に顔面・頸部熱傷や吸入の疑いがある場合)。
2.
次に行うべき看護ケアは? → 静脈ライン確保と輸液開始(循環の確保)。
3.
小児の熱傷面積の算定方法は? → 成人の9の法則とは異なることを覚える。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「熱傷の優先度」でも、患者背景によって正解が変わる可能性があります。
・
本例題:顔面熱傷+小児 → 気道が最優先。
・
別パターン:四肢のみの広範囲熱傷で、明らかに気道に問題がない場合 → 「循環(輸液)の確保」が最初の優先介入になる場合もあります。常に患者の全体像から、最も切迫した問題は何かを判断することが求められます。