看護学のコア解説
この問題は、
熱傷 (Burn injury)の
急性期 (Acute phase)における最優先の看護介入について問うています。特に、小児の広範囲熱傷(体表面積25%)という状況下では、病態生理に基づいた優先順位付けが重要です。
重要概念の分析 (Key Concept)
熱傷の急性期(受傷後〜48時間程度)は、
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic shock)のリスクが最も高い時期です。これは、熱傷による毛細血管の透過性亢進により、大量の血漿成分が血管外(組織間隙)へ漏出するためです。小児は体重あたりの循環血液量が少なく、代償能も限られているため、成人よりも急速にショックに陥る危険性が高くなります。したがって、この時期の最優先目標は、
ここがポイント! 循環動態の安定化と臓器灌流の維持です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢④「体液と電解質バランスを綿密にモニタリングし、適切な水分補給を維持する」が正解です。その根拠は以下の通りです。
1.
パークランド式 (Parkland formula)などの輸液公式に基づき、
ここがポイント! 受傷後24時間以内に大量の輸液が必要となります。これは、血管外への体液喪失を補い、尿量を維持して腎機能を保護するためです。
2. モニタリングの指標としては、
尿量 (Urine output)(小児で1-2 mL/kg/hr)、バイタルサイン、意識レベル、末梢循環(capillary refill time)などが重要です。
3. 電解質、特に
ナトリウム (Sodium)や
カリウム (Potassium)のバランスも乱れやすいため、血液検査による継続的な評価が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、いずれも重要な看護ケアではありますが、急性期の「最優先」ではありません。
① 高タンパク・高カロリー摂取の奨励:これは
回復期 (Recovery phase)や
代謝亢進期 (Hypermetabolic phase)における重要な介入です。急性期は腸管浮腫などで消化管機能が低下していることが多く、早期からの積極的な経口摂取は困難な場合があります。
② 創部への外用抗生物質の塗布:
感染予防 (Infection prevention)は重要ですが、創部管理は循環動態が安定してから本格的に開始されます。急性期の最優先は「命を守る」ことです。
③ 患児の要求時のみの鎮痛薬投与:
疼痛管理 (Pain management)は人道的にも、過度のストレス反応を防ぐためにも必須です。しかし、「要求時のみ」という対応は不適切です。熱傷の疼痛は激しく、定期的な疼痛アセスメントに基づいた予防的・定時的な鎮痛薬投与が必要です。依存性を恐れるよりも、適切な疼痛コントロールが優先されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
・
熱傷深度の分類 (Burn depth classification):第1度(表皮)、第2度(真皮)、第3度(皮下組織・それ以上)。本症例の「第2度」は水疱形成と激しい疼痛が特徴です。
・
小児の体表面積計算 (Pediatric TBSA calculation):小児は頭部の相対的表面積が大きく、下肢が小さいため、
9の法則 (Rule of nines)をそのまま適用できません。小児用の修正版や
ラウンド・バウチャー図 (Lund-Browder chart)の使用が推奨されます。
概念のまとめ
熱傷急性期の最優先は「循環動態の安定化」。そのためには、綿密な輸液管理とモニタリングが不可欠。他のケア(栄養、感染予防、疼痛管理)は、この基盤の上に成り立つ。
一目で比較!
| 時期 | 病態の特徴 | 看護介入の優先順位 |
|---|
| 急性期 (受傷〜48時間) | 毛細血管透過性亢進、体液喪失、ショックリスク | 1. 輸液・循環管理 2. 気道確保 3. 疼痛管理・感染予防 |
| 回復期 (48時間以降) | 体液再吸収、代謝亢進、感染・創傷治癒期 | 1. 栄養管理 2. 創部管理・感染予防 3. リハビリテーション・心理的ケア |
解剖生理と薬理のポイント
・
毛細血管透過性 (Capillary permeability):熱傷によりヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、血管内皮細胞間に隙間が生じます。これにより、アルブミンを含む血漿成分が組織間隙へ漏出し、
浮腫 (Edema)と
血液濃縮 (Hemoconcentration)を引き起こします。
・輸液療法:パークランド式(乳酸リンゲル液 4 mL × 体重(kg) × 熱傷面積(%))の半分を最初の8時間、残りを次の16時間で投与します。輸液の目的は、循環血液量を維持し、
尿量を確保することです。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位の覚え方:「
まずは命、水(輸液)で守れ」。熱傷のABC… Airway(気道)、
Breathing(呼吸)、
Circulation(循環)のうち、急性期で最も問題となるのはC(循環)です。小児は「水(体液)」が足りなくなりやすい、とイメージしましょう。
国試頻出ポイント
・熱傷面積の計算(小児 vs 成人の違い)。
・急性期の合併症(ショック、気道熱傷、コンパートメント症候群)。
・輸液公式(パークランド式)の概要とモニタリング指標(特に尿量)。
・深度別の創所見(第2度は水疱と発赤、疼痛あり。第3度は白く乾燥した皮革様、疼痛なし)。
国試出題パターンの変化に注意!
単に「急性期の看護は?」と問うだけでなく、「受傷後6時間の患児。尿量が0.5 mL/kg/hrの場合、看護師は何を疑うか?」(答え:輸液不足、ショックの進行)や、「パークランド式に基づく最初の8時間の輸液速度を計算させる」といった応用問題が出題される傾向があります。常に「なぜ?」を考え、数字の意味を理解しておきましょう。