看護学のコア解説
この問題は、
妊娠高血圧腎症 (Preeclampsia)に続発した
播種性血管内凝固症候群 (Disseminated Intravascular Coagulation: DIC)の患者に対する、
最優先の看護介入を問うています。
重要概念の分析 (Key Concept)DICは、
過凝固状態 (Hypercoagulable state)と
線溶亢進状態 (Hyperfibrinolytic state)が同時に起こる重篤な病態です。妊娠高血圧腎症では、血管内皮障害により組織因子が放出され、凝固カスケードが全身的に活性化されます。その結果、微小血管内で血栓が多発し、
血小板 (Platelets)や
凝固因子 (Coagulation factors)が大量に消費されます。同時に、血栓溶解系も亢進するため、最終的には全身の出血傾向が顕著になります。
正解の根拠 (Answer Rationale)ここがポイント! DICは「原因疾患に対する治療」が最も重要です。本例では、DICの根本原因は「28週の重症妊娠高血圧腎症」です。したがって、
原因の除去 (Removal of the underlying cause)、すなわち「胎盤の娩出」が唯一の根治的治療となります。看護師の最優先介入は、
出血徴候のモニタリング (Monitoring for signs of bleeding)(皮下出血点、歯肉出血、注射部位からの持続的出血、血尿、性器出血など)を行いながら、
緊急分娩 (Immediate delivery)に備えることです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)混同注意! ②の「ヘパリン投与」は、血栓性疾患(例:深部静脈血栓症)では適応ですが、DICの急性期、特に出血傾向が強い場合には禁忌です。凝固亢進と出血が混在するDICでは、ヘパリンは出血を悪化させる危険があります。
③の「歩行の奨励」は、DICの患者には不適切です。出血リスクが高く、また重症妊娠高血圧腎症では安静が基本です。さらに、DIC自体が血栓と出血の両方を引き起こすため、単純な「血栓予防」としての歩行は誤りです。
④の「水分摂取の増加」は、重症妊娠高血圧腎症では
肺水腫 (Pulmonary edema)のリスクがあるため、慎重に行う必要があります。輸液管理は医師の指示に基づき、厳密な
水分出納 (Intake and output)管理とともに実施されます。単純な「水分摂取増加」は優先度が低く、場合によっては危険です。
関連概念の整理 (Related Concepts)DICの診断には、
血小板減少、
フィブリノゲン低下、
FDP (フィブリン・フィブリノゲン分解産物) またはD-ダイマーの上昇、
PT (プロトロンビン時間) ・APTT (活性化部分トロンボプラスチン時間) の延長が重要です。治療は、原因除去に加え、補充療法(新鮮凍結血漿、血小板濃厚液、クリオプレシピテート)が中心となります。
概念のまとめ
・DIC:過凝固と線溶亢進が同時に起こる重篤な消費性凝固障害。
・根本治療:原因疾患の除去が最優先(本例では緊急分娩)。
・看護の焦点:出血徴候の早期発見と、根治的治療(分娩)への迅速な準備。
一目で比較!
| 病態 | 主な機序 | 優先すべき看護介入 |
|---|
| 播種性血管内凝固 (DIC) | 全身の微小血管内での血栓形成と、それに伴う凝固因子・血小板の消費、および出血傾向。 | 出血徴候のモニタリングと根本原因の除去(例:感染症の治療、分娩)への準備。 |
| 深部静脈血栓症 (DVT) | 主に下肢の静脈に血栓が形成される局所的な病態。 | 安静、患肢挙上、抗凝固療法(ヘパリンなど)の適切な管理、肺塞栓症(PE)徴候の観察。 |
解剖生理と薬理のポイント
・
妊娠高血圧腎症:胎盤の血流障害と全身の血管内皮障害が起点。これが凝固系を活性化させ、DICを引き起こす。
・
ヘパリン (Heparin):抗トロンビンIIIを活性化し、凝固因子(Xa, IIa)を阻害する
抗凝固薬。出血リスクを高めるため、DICの急性期には通常使用しない。
暗記のコツとゴロ合わせ
DICの治療原則:「
原因を止めろ、足りないものを補え」。まず原因除去(分娩など)、次に補充療法(FFP、血小板など)。出血傾向がある時のヘパリンは「
火に油を注ぐ」行為と覚える。
国試頻出ポイント
「DICにおける最優先の看護」は、ほぼ確実に「
出血徴候の観察と、原因除去への準備」です。特に産科領域(常位胎盤早期剥離、羊水塞栓症、重症妊娠高血圧腎症)に合併したDICは頻出です。
国試出題パターンの変化に注意!
同じDICでも、原因疾患が「敗血症」の場合や「急性前骨髄球性白血病(APL)」の場合など、背景によって治療アプローチが異なります(例:APLではレチノイン酸が原因治療)。常に「このDICの根本原因は何か?」を第一に考えるクセをつけましょう。