股関節骨折で手術待機中の患者の右大転子部の皮膚に、次の写真のような病変が観察された。皮膚の損傷はないが、周囲組織より冷た… | MyMerci
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看護学
問題

股関節骨折で手術待機中の患者の右大転子部の皮膚に、次の写真のような病変が観察された。皮膚の損傷はないが、周囲組織より冷たく硬く触れる紫色の変色を認める場合、この所見の解釈として正しいのはどれか。

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解説

皮膚は損傷していないものの、圧力とずれ力による深部軟部組織の高度な損傷のために限局性の紫色または栗色の変色を呈する、深部組織損傷(DTI)疑いの褥瘡の所見です。外見上は皮膚が覆われていても、その下では組織壊死がきわめて深く進行している危険性が高い状態です。

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詳細解説

問題解説

提示された写真と記述を総合すると、皮膚表面は損傷していないものの紫色(purple)ないし暗赤紫色に変色し、周囲組織より冷たく硬く触れる状態です。これは皮膚表面の下、すなわち真皮層より深部の軟部組織にすでに高度な虚血性損傷が進行していることを示す典型的な深部組織損傷疑いの褥瘡(Suspected Deep Tissue Injury, sDTI)の臨床像です。したがって正答は4番です。

誤答の分析と病態生理学的機序

各選択肢を病態生理学的機序と結びつけて検討すると、なぜ他のステージではなく深部組織損傷を疑うべきかが明確になります。

- 1番(表在性のステージⅠ褥瘡): ステージⅠの褥瘡は、皮膚が損傷していない状態で限局性の消退しない発赤(non-blanchable erythema)を認めることが要点です。これは真皮層の毛細血管が圧力により損傷して反応性充血が生じた状態であり、触れると周囲組織より温かく、浮腫を伴うことがあります。一方、本問の病変は紫色に変色し、冷たく硬いため、より深部組織の虚血と壊死を示唆しており、ステージⅠとは区別されます。

- 2番・5番(ステージⅢおよびステージⅣの褥瘡): ステージⅢは皮下脂肪が露出する程度、ステージⅣは筋膜・筋・骨が露出する程度に皮膚の全層が欠損した状態です。問題文に「皮膚は損傷していない」と明記されているため、全層皮膚欠損を伴うステージⅢやⅣは該当しません。

- 3番(判定不能の褥瘡): 判定不能の褥瘡とは、壊死組織(エスカー)や黄色いスラフが創底を覆っているために、その下の組織損傷の深さを肉眼で確認できない状態をいいます。本問の病変は皮膚が閉じたまま変色のみを認め、創底を覆うスラフや痂皮は観察されないため、判定不能には当たりません。

- 4番(深部組織損傷疑いの褥瘡): 正答であるこの段階は、強く持続する圧力やずれ力(shear force)が骨突出部(bony prominence)周囲の筋および軟部組織を直接損傷することで生じます。筋組織は皮膚よりも虚血にはるかに脆弱であるため、皮膚表面は健常に見えても、その下の筋層ではすでに広範な虚血性壊死が始まっています。これにより血管が破綻して血液成分が組織へ漏出し、皮膚表面に紫色の変色として現れ、血流供給が途絶することで組織温度が低下し、浮腫と硬結によって硬く触れるのです。これは表在性の皮膚損傷ではなく、真皮層より深部の軟部組織の重篤な損傷を反映する所見です。

臨床実践への応用と評価

このような深部組織損傷を早期に発見することはきわめて重要です。肉眼的評価だけでは、すでに進行した損傷しか確認できないためです。根拠資料[1]では、皮膚表面が発赤したりステージⅠの褥瘡へ進行したりする前に、皮膚下の水分量(subepidermal moisture, SEM)の変化を測定することが初期の組織損傷を予測する指標となりうることが示されています。この研究において、SEM値の上昇は、皮膚損傷が肉眼で確認できる約1週間前から現れる限局性の炎症反応と浮腫を反映しています。したがって実務では、紫色の変色のようなsDTIの徴候を認めた際には、単なる皮膚の変色ではなくすでに進行した深部組織の損傷とみなし、直ちに除圧(offloading)の介入を行い、状態の変化を綿密に経過観察する必要があります。
参考文献(論文出典)
  • [1]
    Subepidermal moisture predicts erythema and stage 1 pressure ulcers in nursing home residents: a pilot study.研究論文Bates-Jensen BM, McCreath HE, Kono A, Apeles NC, Alessi C. (2007) · DOI: 10.1111/j.1532-5415.2007.01261.x

臨床シナリオ

深部組織損傷疑いの褥瘡(sDTI)鑑別ガイド皮膚損傷がなく紫色の変色・冷感・硬結を認めたときの対応

皮膚表面は損傷していないが紫色または暗赤紫色の変色があり、周囲より冷たく硬く触れる場合は、深部組織損傷疑いの褥瘡をまず考える。これは真皮層より深部の軟部組織で虚血性壊死がすでに進行中であることを示唆する。

ステージⅠの褥瘡は消退しない発赤が特徴で、触れると温かく浮腫を伴うことがあり、sDTIと区別される。ステージⅢ・Ⅳは全層皮膚欠損により皮下脂肪や筋などが露出するため、皮膚が閉じているsDTIとは異なる。

注意

sDTIは急速に悪化して広範な全層壊死へ進行しうるため、発見後ただちに圧力の軽減ずれ力の低減を目的とした体位変換および体圧分散寝具の使用が不可欠である。変色部位のマッサージは損傷を助長するため絶対に行わない。

重要概念

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