核心解説
この問題は、地域精神保健活動における
精神障害者 (Person with Mental Disorder) の家族からの緊急相談に対する、
保健師の初期対応の優先順位を問うています。
最重要! 危機介入 (Crisis Intervention) の基本は、まず
安全の確保 と
状況の正確なアセスメント です。いきなり転送や強制入院を検討するのではなく、まずは情報収集を行い、緊急性とリスクを評価することが看護の第一歩です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
③番が正解です。保健師が最初に行うべきは、
相談者(家族)から詳細な状況を聴取し、安全確認と支援ニーズを把握することです。「暴れており危険な状態」という情報だけでは、具体的なリスク(自傷他害の切迫性、暴力の程度、本人の精神状態、家族の安全)を評価できません。電話での初期トリアージとして、緊急度・切迫度を判断し、その後の対応(訪問、関係機関への連絡、措置診察の依頼など)を決定するための基盤となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番の精神保健福祉センターへの転送は、情報収集後の判断であり、初期対応としては時期尚早です。
②番の警察への通報指示は、明らかな生命の危険がある場合を除き、初期段階で家族に指示するのは適切ではありません。
④番の強制入院(措置入院)は、
精神保健福祉法第29条に基づき、自傷他害のおそれがあると指定医が診察し判断した場合にのみ適用されます。保健師が単独で開始できる手続きではなく、まずは状況把握が必要です。
⑤番の電話のみでの対応指導は、現状のリスクが不明なため非常に危険です。対面での状況確認や必要に応じた訪問支援が不可欠です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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混同注意! 任意入院 (Voluntary Admission) vs
医療保護入院 (Medical Protection Admission) vs
措置入院 (Involuntary Admission): これらは入院形態の違いです。措置入院は都道府県知事の権限で、指定医の診察結果に基づき行われます。
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精神保健福祉法 (Act on Mental Health and Welfare for Persons with Mental Disorders): 精神障害者の医療と保護、社会復帰、自立と社会参加を目的とする法律。保健師の活動もこの法律に基づきます。
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危機介入 (Crisis Intervention): 急性の危機状態にある個人・家族に対して、短期間で集中的に行う心理社会的支援。アセスメント、安全確保、情緒的支援、問題解決のプロセスを経ます。
概念整理: この問題の核心は「
相談初期における情報収集とアセスメントの優先」です。保健師は直接的な介入(転送、通報、入院)の前に、必ず「何が起きているのか」「誰がどのようなリスクにさらされているのか」「どんな支援が必要か」を評価する必要があります。
一目で比較!:
| 対応ステップ | 優先度 | 具体的内容 |
|---|
| ①状況把握 | 最優先 | 詳細な聴取、安全確認、リスク評価 |
| ②初期介入 | 状況に応じて | 訪問、電話での助言、緊急時の連絡先提示 |
| ③関係機関連携 | 必要時 | 精神保健福祉センター、警察、医療機関への連絡・調整 |
| ④法的措置検討 | 最終手段 | 措置診察の依頼、強制入院の手続き(医師の判断が必要) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 本人の精神症状(幻覚・妄想の有無、興奮状態)、危険行動の有無(物を投げる、暴力を振るう)、家族の安全と対処能力を評価。
看護診断: 「
暴力リスク状態 (Risk for Other-Directed Violence)」「
対処行動非効果的 (Ineffective Coping)」「
家族内対立 (Interrupted Family Processes)」などが考えられます。
計画・実施: 安全が最優先。必要であれば警察や救急と連携。クライシスプランを家族と共有。
評価: 本人と家族の安全が確保されたか、適切な支援機関につながったか。
暗記のコツ: 「
慌てず、聴け!」と覚えましょう。緊急時こそ、まずは話を聴く(聴取)ことで状況を冷静に分析します。「転送」「通報」「入院」という行動は、すべてこの「聴く」というプロセスの後です。
国試頻出ポイント: 精神看護の領域では、
精神保健福祉法に基づく対応手順、特に「措置入院」の要件と手続き、
地域包括ケアシステムにおける保健師の役割と連携の流れが頻出です。状況設定問題(事例問題)で、「最初に行うべき対応」「優先すべき看護介入」を問う形で出題されます。
出題パターン注意!: 「家族からの電話相談」という初期段階を問う問題では、「情報収集」より前に「具体的な行動(転送・通報)」を選んでしまう誤答に注意。また、「強制入院」は医師の判断を経た最終手段であることを理解しておきましょう。