核心解説
この問題は、
ポジティブリスト制度 (Positive List System) の定義と仕組みを問うています。
ポジティブリスト制度とは、原則として全ての農薬等に対して残留基準値を設定し、その基準を超えた食品の流通を禁止する制度です。2006年(平成18年)に導入され、食品の安全性を高めるために、これまでの「使用禁止農薬以外は原則OK」というネガティブリスト制度から移行しました。この制度の根底にあるのは、
食品衛生法 (Food Sanitation Act) に基づく、国民の健康保護という考え方です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢⑤「農薬ごとに残留基準値が設定されており、基準値を超えた食品の流通は禁止される制度である」が正解です。ポジティブリスト制度では、農薬、動物用医薬品、飼料添加物のそれぞれに、食品ごとに残留基準値(許容一日摂取量などから科学的に算出)が設定されます。この基準値を超えて農薬等が残留する食品は、食品衛生法第6条違反となり、販売や輸入などの流通が禁止されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 「使用が禁止された農薬以外はすべて制限なく使用できる制度」は、ポジティブリスト制度導入以前の
ネガティブリスト制度 (Negative List System) の説明です。ポジティブリスト制度では、基準値が設定されていない農薬については、一律基準(
0.01 ppm)が適用され、原則として使用が規制されます。
② ポジティブリスト制度は、国産食品と輸入食品の両方に適用されます。国内で流通する全ての食品が対象であり、外国で使用が許可されていても、日本の残留基準を満たさない食品は輸入できません。
③ ポジティブリスト制度の最大の特徴は、まさに「残留基準が設定されていない農薬」を規制の対象とする点にあります。基準がない場合は、
一律基準 (0.01 ppm) という厳しい基準が適用され、これを超える残留がある食品は規制されます。
④ 残留農薬の基準値設定は、国(
厚生労働省 (Ministry of Health, Labour and Welfare) および
食品安全委員会 (Food Safety Commission))が科学的評価に基づいて全国一律の基準を定めます。都道府県が独自に設定することはありません。
概念整理:
ポジティブリスト制度は、「原則禁止、例外として許可されたものだけ使用可能」という考え方です。一方、旧制度の
ネガティブリスト制度は、「原則許可、例外として禁止されたものだけ使用不可」という真逆の考え方です。この原則の違いを理解することが重要です。
一目で比較!:
| 項目 | ポジティブリスト制度 | ネガティブリスト制度 (旧) |
|---|
| 基本原則 | 原則禁止 | 原則許可 |
| 規制対象 | 全ての農薬等 (基準値あり・なし問わず) | 使用が禁止された農薬のみ |
| 基準値未設定の物質 | 一律基準 0.01 ppm で規制 | 規制なし (実質的に使用可能) |
| 食品の安全性 | 高い | 低い (規制の抜け穴) |
看護過程ポイント: 看護師が直接この制度を運用することはありませんが、
食事療法 (Dietary Therapy) や
栄養指導 (Nutrition Guidance) において、患者の食の安全に関する不安(例:「残留農薬が心配で野菜を食べられない」など)に対応する際の基礎知識として重要です。食品安全に関する最新の情報を提供できることが、患者の健康支援につながります。
暗記のコツ: 「ポジティブ = 前向き = 許可リストがある」と誤解しがちですが、逆です。「ポジティブに規制する = 全てに対して基準を設定して許可する」と覚えましょう。キーワードは「
一律基準 0.01 ppm」と「
原則禁止」です。
国試頻出ポイント: ポジティブリスト制度は、
公衆衛生学 (Public Health) や
食品衛生学 (Food Hygiene) の分野で頻出です。特に、①旧制度(ネガティブリスト)との比較、②一律基準の数値(
0.01 ppm)、③国産・輸入品の両方に適用される点、が問われます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題としてだけでなく、事例問題で「輸入された冷凍野菜から基準値を超える農薬が検出された」という状況を設定し、「この野菜をどのように処分すべきか」「輸入業者の取るべき対応は何か」を問う発展的な出題も想定されます。