核心解説
この問題は、
労働者災害補償保険(労災保険)の基本的な制度設計と財源負担、適用範囲、給付申請経路を問うています。看護師は病院で働く労働者であり、業務上の怪我や疾病(例:針刺し事故、腰部負傷、院内感染)に備える労災保険の仕組みを正確に理解しておくことは、自身の権利保護と職場の安全対策の両面で重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 労災保険の
保険料は全額事業主(病院などの使用者)が負担します。これは、業務上の事由による労働者の負傷や疾病に対して使用者の無過失責任を補償するという制度の大原則に基づいています。労働者側に保険料負担は一切ありません。正解は③です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の「通勤中の事故は補償の対象外」は誤りです。労災保険は「業務災害」に加えて「通勤災害」も補償対象としています。通勤とは、住居と就業場所との間を合理的な経路・方法で往復する行為を指します。②番の「適用は常時10人以上を雇用する事業所に限られる」は誤りです。労災保険は
混同注意! 原則として
全ての事業所(労働者を1人でも雇用している場合)に適用されます。これは、健康保険や厚生年金保険のように事業所規模による適用要件があるのとは異なります。④番の「保険料は労働者と事業主が折半」は、健康保険・厚生年金保険の保険料負担の特徴であり、労災保険では誤りです。⑤番の「給付申請は健康保険組合を通じて行う」は誤りです。労災保険の給付申請は、
所轄の労働基準監督署に対して行います。健康保険組合は労災保険の窓口ではありません。
概念整理:
労災保険の核心
労災保険は、業務上または通勤中の災害(負傷、疾病、障害、死亡)に対して、
労働者災害補償保険法に基づき給付を行う社会保険制度です。財源は全額事業主負担(国庫の一部補助あり)で、労働者負担はゼロです。主な給付には、療養補償給付(療養費)、休業補償給付(休業手当)、障害補償給付(障害等級に応じた年金・一時金)、遺族補償給付、葬祭料などがあります。
最重要! 医療現場では、
針刺し事故(Needlestick Injury)や患者の転倒介助時の腰部負傷、院内感染症(結核など)は労災請求の対象となり得ます。
一目で比較!:
労災保険 vs 健康保険
| 項目 | 労災保険 | 健康保険(協会けんぽなど) |
| 目的 | 業務上・通勤中の災害補償 | 業務外の疾病・負傷・出産・死亡 |
| 保険料負担 | 事業主全額負担 | 労働者と事業主の折半 |
| 適用事業所 | 原則全ての事業所(1人以上) | 常時5人以上(適用事業所)など規模要件あり |
| 申請窓口 | 労働基準監督署 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
看護過程ポイント:
労災発生時の看護師の役割
-
アセスメント: 労働者(同僚も含む)が業務中に負傷・疾病に罹患した場合、その原因が「業務起因性」があるかどうかを初期評価(例:針刺しは明らかに業務起因)。
-
看護介入: 発生時の応急処置(止血・洗浄など)を実施し、速やかに
産業医や労務管理担当者に報告。被災労働者に労災保険の仕組み(申請方法、窓口)を情報提供。
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記録: 事故発生時刻、状況、使用した器具、負傷の程度を詳細に記録。これは後の労災申請の重要な証拠となる。
暗記のコツ:
「労災は事業主の無過失責任」と「保険料は事業主のみ」をセットで覚える
「労災」という言葉から「労働者のための保険で労働者が払う」と連想しがちですが、逆です。「会社が労働者を危険から守れなかった責任を取る」という発想で、「保険料は会社(事業主)が全額負担」と覚えましょう。通勤も含む点も重要です。
国試頻出ポイント: 労災保険の基本事項(保険料負担者、適用事業所、給付内容)は、社会保険制度の一環として頻出です。特に
混同注意! 「健康保険」や「雇用保険」との比較問題が出題されやすいです。保険料負担や適用範囲の違いを必ず整理しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「
看護師が針刺し事故に遭った場合、どの保険から給付を受けるか」という実践的な事例問題や、「
通勤災害の定義」を問う問題も考えられます。