核心解説
この問題は、在宅療養中の
慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD) 終末期患者における
DNAR (Do Not Attempt Resuscitation: 心肺蘇生不要指示) 方針決定後の看護対応を問うています。
核心概念の分析 (Key Concept):
最重要! DNARは「心肺蘇生法(胸骨圧迫、気管挿管、除細動など)を行わない」という限定された指示であり、
それ以外のすべての治療・ケア(症状緩和、酸素投与、輸液、内服薬管理など)を中止することを意味しません。 患者の尊厳を守り、苦痛を和らげるための全人的ケアを継続・強化することが看護師の役割です。
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は5番です。DNARの方針が決定されたとしても、在宅では予期せぬ急変が起こりえます。患者の状態悪化時に「どのような症状(例:呼吸困難の増強、意識レベルの低下)が見られたら」「誰に連絡し(訪問看護ステーション、かかりつけ医)」「どのような処置を行うか(レスキュー薬の使用、救急搬送の判断基準)」といった
具体的な対応計画(アドバンス・ケア・プランニング: Advance Care Planning; ACP) を医師から文書も含めて指示・共有してもらい、患者・家族と合意しておくことが、安全で安心な在宅療養継続に不可欠です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の「バイタルサイン測定は不要」は誤りです。心肺蘇生を行わないだけで、病状進行や新たな苦痛の出現をアセスメントするための観察はむしろ重要度を増します。②番の「家族以外には伝えない」も不適切で、DNAR指示は訪問看護ステーション内の他スタッフ、かかりつけ医、場合によっては夜間対応の看護師やケアマネジャーなど、関係する多職種チームで情報を共有し、方針を統一することが必須です。③番の「心肺蘇生以外の治療を全て中止する」はDNARの概念を完全に誤認しています。④番の「悪化したらまず救急車を要請」は、DNARの事前指示があるにもかかわらず、蘇生を前提とした救急システムを作動させることになり、患者・家族の意向と矛盾します。
関連概念の整理 (Related Concepts): DNARと混同しやすい概念として、
DNI (Do Not Intubate: 気管挿管不要)、
緩和ケア (Palliative Care)、
終末期鎮静 (Palliative Sedation)、
尊厳死 (Death with Dignity) があります。いずれも患者の自己決定権を尊重し、苦痛除去を最優先する点で共通しますが、適用範囲が異なります。
概念整理:
DNAR (Do Not Attempt Resuscitation): 心肺停止状態に陥った場合に、胸骨圧迫や電気的除細動などの蘇生処置を試みないという医療指示。積極的治療の継続や症状緩和ケアは引き続き提供されるべきであり、終末期における患者の尊厳を守るための重要な方針決定プロセスです。
一目で比較! | 概念 | DNAR | 緩和ケア |
|---|
| 主な対象 | 心肺停止時の蘇生処置 | 生命を脅かす疾患に関連する全人的苦痛 |
| ケアの範囲 | 蘇生以外の治療・ケアは継続 | 治癒的治療と並行または単独で提供される全ケア |
| 目的 | 無益な蘇生を回避し尊厳を守る | QOL(生活の質)の改善と苦痛の予防・緩和 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患者・家族のDNARに対する理解度、不安、希望、呼吸困難や疼痛などの苦痛の有無、生活環境、在宅で利用可能な社会資源。
看護診断: 死への不安、非効果的呼吸パターン、介護者役割緊張など。
計画: 医師への具体的指示の確認・文書化、ACPの促進、多職種との情報共有計画、急変時連絡体制図の作成。
実施: 症状緩和ケアの提供、精神的サポート、医師や他職種との連絡調整。
評価: 患者・家族が希望する療養生活が送れているか、苦痛は緩和されているか、緊急時の対応が明確に共有されているか。
暗記のコツ: DNAR =
Do
Not
Attempt
Resuscitation。 「心肺蘇生『だけ』しない。他のケアは『全力』で続ける」と覚えましょう。具体的指示の確認は「お(怒り)か(確認)し(指示書)て(徹底)」など語呂合わせで印象づけるのも有効です。
国試頻出ポイント: 終末期医療、DNAR、緩和ケアは国試で毎年出題される重要テーマです。DNARの定義、看護師の役割、多職種連携、ACP(人生会議)は必須知識です。特に「DNAR=全治療中止ではない」という点は誤答選択肢として頻出するため、正確に理解しましょう。
出題パターン注意!: 在宅看護論や終末期看護の状況設定問題で、「患者から『もう何もしてもらえないのですか』と質問された看護師の対応」など、コミュニケーションと倫理的判断を問う事例問題としても頻出します。