核心解説
この問題は、分娩第3期(胎盤娩出後)に最も注意すべき合併症である
弛緩出血 (Uterine Atony / Postpartum Hemorrhage)の予防と初期対応に関するものです。弛緩出血は、子宮筋が十分に収縮せず、胎盤剥離面の血管が圧迫・閉鎖されないことで発生する
最重要!産科的危機的状態です。看護師の役割は、この兆候を早期に発見し、生命を脅かす大量出血を防ぐことです。そのためには、
子宮収縮状態の直接的な評価が最優先となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 分娩第3期とは、胎児娩出後から胎盤が完全に娩出されるまでの期間を指します。この時期、子宮は急速に収縮し、胎盤を剥離・排出すると同時に、胎盤剥離面のらせん動脈を収縮・閉鎖して止血します。この
生理的な止血メカニズムが破綻した状態が弛緩出血です。子宮収縮不全の原因としては、遷延分娩、巨大児、羊水過多、多産婦、子宮筋腫合併などが挙げられます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ④番の「胎盤娩出後の子宮底の高さと硬度の確認」が正解です。弛緩出血を予防し、早期発見するためには、胎盤娩出後、
子宮底が臍の高さにあり、硬く収縮しているかを頻回に確認することが最も重要です。子宮底が軟らかく触知する、あるいは高さが臍より上方にある場合は、子宮収縮不全のサインであり、直ちに
子宮底マッサージ (Uterine Massage / Fundal Massage)を開始し、医師へ報告する必要があります。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番: 胎盤の重量や大きさは、胎盤遺残の有無や形態異常の評価に用いますが、弛緩出血の直接的な観察項目ではありません。
- ②番: 体温測定は産褥熱(子宮内感染など)のスクリーニングとして重要ですが、弛緩出血の予防・初期対応として30分ごとに行う優先度は低いです。
- ③番: 腟分泌物の観察は重要ですが、子宮収縮状態の確認が最優先されます。弛緩出血では、多量の血液が腟から流出する場合もあれば、子宮内に貯留して外出血として現れにくい場合もあります。したがって、
混同注意! 腟分泌物の観察だけでなく、子宮の触診が不可欠です。
- ⑤番: 血圧測定は循環動態の評価に必須ですが、
血圧が低下してからではショック状態に陥っている可能性が高く、弛緩出血の早期発見にはなりません。血圧低下は出血量が循環血液量の約30%を超えてから顕在化するため、子宮収縮状態の確認がより早期の指標となります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 分娩第3期の管理では、アクティブ・マネジメント(子宮収縮薬投与、臍帯牽引、子宮底マッサージ)とエクスペクタント・マネジメント(自然胎盤娩出を待つ)の2つの方針があります。弛緩出血のリスク因子として、
弛緩出血の既往、多産、巨大児、羊水過多、遷延分娩、前置胎盤、癒着胎盤などが知られています。
概念整理: 分娩第3期における出血性ショックの予防には、子宮収縮状態の触診評価が最優先。子宮底が臍高で硬く収縮していることを確認する。軟らかい場合や高さが高い場合は弛緩出血のリスクと判断し、子宮底マッサージとオキシトシン投与を検討する。
一目で比較!:
| 観察項目 | 弛緩出血の評価における意義 | 優先度 |
|---|
| 子宮底の高さ・硬度 | 子宮収縮の直接的指標、弛緩出血の最早期発見に必須 | 最高 |
| 腟出血量・性状 | 外出血量の評価、子宮内貯留の有無も考慮 | 高 |
| 血圧・脈拍 | 循環動態の評価、出血量が30%を超えると変動 | 中(早期発見には不十分) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 分娩直後から15分ごとに子宮底の触診、出血量、バイタルサインを観察。子宮底が臍上2横指以上で軟らかい場合は弛緩出血のリスク大。
看護診断: 「出血リスク状態」または「体液量減少リスク状態」。
介入: 子宮底マッサージ、医師への報告、オキシトシン点滴の準備(医師の指示)、バイタルサイン測定の頻回化。
暗記のコツ: 「胎盤が出たら、まず子宮を触れ!」子宮底マッサージは「C」の字を描くように優しく、しかし確実に圧迫するイメージ。子宮の硬さは「鼻先」のように硬いのが正常、「耳たぶ」のように柔らかいと弛緩のサイン。
国試頻出ポイント: 弛緩出血の予防(子宮底マッサージ)、初期対応(輸液、子宮収縮薬投与)、リスク因子(多産、巨大児、羊水過多)は国試で頻出。特に「子宮底の硬度」と「バイタルサイン」のどちらが早期発見に有用か、という観点で出題されやすい。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(④を選ぶ)だけでなく、「胎盤娩出直後、子宮底が軟らかく臍上2横指に触知。腟出血は少量。まず何をするか?」といった状況設定問題に発展。この場合は「子宮底マッサージ」が正解となる。また、「弛緩出血が続き、出血性ショックに移行した場合の看護」への応用も求められる。