核心解説
この問題は、分娩後出血(Postpartum Hemorrhage, PPH)の主要原因のうち、最も頻度が高い病態を問うています。分娩後出血は、母体死亡の主要原因の一つであり、その発生機序を理解することは助産・母性看護の根幹です。
核心概念の分析:分娩後出血の原因は、大きく「4つのT(Tone, Trauma, Tissue, Thrombin)」に分類されます。最も頻度が高いのは「Tone(緊張)=子宮収縮不全(Uterine Atony)」であり、全分娩後出血の約70~80%を占めます。胎盤娩出後、子宮筋層が強く収縮することで胎盤剥離面の血管(螺旋動脈)が圧迫閉塞され止血されますが、この収縮が不十分なために持続的な弛緩出血が生じます。
正解の根拠:
最重要! ⑤番の
子宮収縮不全(Uterine Atony / 子宮弛緩症)が最も頻度の高い原因です。子宮収縮不全のリスク因子として、巨大児・多胎・羊水過多による子宮筋の過伸展、遷延分娩による筋疲労、多産婦、全身麻酔やMgSO4投与による子宮弛緩作用などがあります。看護介入として、分娩後直ちに
子宮底の触診(子宮収縮の確認)と子宮マッサージ、出血量の視覚的評価(ドレープ・パッドの重量測定)が必須です。
誤答の分析:
混同注意! ①番の
子宮内反症(Uterine Inversion)は弛緩出血の原因の一つですが、頻度は極めて稀(約0.05%)で、子宮底の過剰な圧迫や臍帯牽引が原因となります。②番の
胎盤遺残(Retained Placenta / Tissue)は、胎盤の一部が子宮内に残存することで子宮収縮を妨げ出血の原因となりますが、頻度は子宮収縮不全より低いです。③番の
血液凝固異常(Thrombin / Coagulopathy)は、常位胎盤早期剥離や羊水塞栓症などに続発する播種性血管内凝固症候群(DIC)などが原因で、頻度は高くありません。④番の
産道裂傷(Trauma / Laceration)は、子宮頸管・腟壁・会陰の裂傷であり、子宮収縮は良好でも持続性の赤色出血がみられるのが特徴で、頻度は子宮収縮不全に次ぎます。
関連概念の整理:分娩後出血の原因を「4つのT」で覚えましょう。1. Tone(子宮収縮不全)、2. Trauma(産道裂傷・子宮破裂)、3. Tissue(胎盤遺残)、4. Thrombin(凝固異常)。このうちToneが最も多く、看護師はまず子宮収縮状態と出血量を同時に評価します。弛緩出血の際は、
子宮収縮薬(オキシトシン、メチルエルゴメトリン)の投与と両手による子宮圧迫・マッサージが第一選択です。
概念整理: 分娩後出血(PPH)の原因「4つのT」。Tone(子宮収縮不全)が70-80%で最多。Trauma(裂傷)、Tissue(遺残)、Thrombin(凝固異常)の順に頻度が低下。看護アセスメントでは「子宮底の硬さ(収縮状態)」「出血の色調と量」「バイタルサイン」を同時評価する。
一目で比較!:
| 原因分類 | 病態 | 頻度 | 看護の観察ポイント |
| Tone(緊張) | 子宮収縮不全 | 最も多い(70-80%) | 子宮底が軟らかい・輪郭不明瞭・出血持続 |
| Trauma(外傷) | 産道裂傷・子宮破裂 | 2番目に多い | 子宮収縮良好でも赤色出血持続・裂傷部位の確認 |
| Tissue(組織) | 胎盤遺残 | 中程度 | 胎盤の欠損部位確認・超音波検査 |
| Thrombin(凝固) | 凝固異常(DIC) | 稀だが重篤 | 血液が固まらない・紫斑・FDP・Dダイマー上昇 |
看護過程ポイント:
アセスメント:分娩後1時間は「第4期」と呼ばれ最も弛緩出血のリスクが高い。子宮底の位置(臍の高さ)、硬さ(収縮の程度)、悪露の性状(量・色・凝血塊)を15分毎に評価する。
看護診断:『出血リスク状態(Risk for Bleeding)』または『体液量減少(Deficient Fluid Volume)』
計画・介入:子宮収縮薬の準備(オキシトシン点滴のルート確保)、子宮マッサージの実施、出血量の正確な測定(ドレープの目盛り・パッドの重量計測)。
評価:バイタルサイン(血圧低下・脈拍増加)の安定、子宮底の硬さ維持、出血量の減少。
暗記のコツ:
「4つのT」の語呂合わせは「Tで始まる4つの単語」。「Tone(トーン)が7割!」と覚える。弛緩出血=子宮が「弛んで緩む(弛緩)」→収縮しないから出血。子宮底を触って「ブヨブヨ」していたら、
最重要! すぐにマッサージ開始!
国試頻出ポイント:
「分娩後出血の原因として最も頻度が高いのは?」という選択問題は頻出。さらに、事例問題で「弛緩出血を起こした患者への優先的な看護介入は?」と発展することが多い。子宮マッサージとオキシトシン投与の順序、医師への報告基準(出血量500mL以上、バイタルサイン異常)をセットで覚えること。
出題パターン注意!:
単純な知識問題から、「分娩後30分、子宮底が臍上3横指で軟らかく、悪露が多量の赤色出血。まず行うべき看護は?」のような状況設定問題に発展。子宮マッサージ→医師報告→薬剤準備の優先順位を問われる。