核心解説
この問題は、
エリクソン (Erikson, E.H.) の心理社会的発達理論における「基本的信頼感」の獲得時期を問うています。発達課題は全8段階にわたりますが、この「基本的信頼感」はその全ての基盤となる極めて重要な概念です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、エリクソンの発達段階理論における「基本的信頼感 (Basic Trust)」です。これは、乳児が
養育者 (Caregiver)から一貫した愛情と応答を得ることで、「世界は安全で信頼できる場所である」という感覚を獲得することを指します。この感覚は、その後の人生における健全な人格形成や対人関係の基盤となります。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は⑤番の「乳児期」です。エリクソンは、乳児期(0~1歳頃)の発達課題を「基本的信頼感 対 基本的不信感」と定義しました。この時期に、泣いたり、空腹を訴えたりする乳児の要求に対して、養育者が温かく一貫して応えることで、乳児は「自分は大切にされている」「世界は安全だ」という基本的な信頼感を獲得します。この獲得が不十分だと、生涯にわたって他者や世界に対して不安や不信感を抱きやすくなるとされています。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 各発達課題は特定の年齢とセットで覚える必要があります。
- ①番の「青年期」: 発達課題は「自我同一性 (Identity) 対 役割混乱 (Role Confusion)」です。「私は何者か」を問い、自己の連続性と一貫性を確立する時期です。
- ②番の「幼児期」: 発達課題は「自律性 (Autonomy) 対 恥・疑惑 (Shame and Doubt)」です。排泄の自立や「イヤイヤ期」に代表されるように、自分の意志で行動する力を獲得する時期です。
- ③番の「老年期」: 発達課題は「統合性 (Integrity) 対 絶望 (Despair)」です。自らの人生を振り返り、受け入れ、意味を見出す最終段階です。
- ④番の「学童期」: 発達課題は「勤勉性 (Industry) 対 劣等感 (Inferiority)」です。学校などの集団生活で、勉強やスポーツを通じて有能感や達成感を獲得する時期です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): エリクソンの理論は、フロイト (Freud, S.) の心理性的発達理論と比較されることが多いです。フロイトが「口唇期」「肛門期」など生物学的な欲動に焦点を当てたのに対し、エリクソンは社会的・文化的な相互作用に着目している点が異なります。また、発達課題は「危機 (Crisis)」を伴い、その葛藤をうまく解決することで次の段階へと進むことができます。
概念整理: エリクソンの8段階は、「
基本的信頼感(乳児期)→ 自律性(幼児期)→ 積極性(遊戯期)→ 勤勉性(学童期)→ 同一性(青年期)→ 親密性(初期成人期)→ 世代性(成人期)→ 統合性(老年期)」の順番です。各段階の肯定的な獲得と否定的な獲得の両方をセットで覚えましょう。
一目で比較!:
| 発達段階 | 発達課題(肯定的 vs 否定的) | 重要な他者 |
|---|
| 乳児期 (0-1歳) | 基本的信頼感 (Basic Trust) vs 不信感 | 母親(養育者) |
| 幼児期 (1-3歳) | 自律性 (Autonomy) vs 恥・疑惑 | 両親 |
| 遊戯期 (3-6歳) | 積極性 (Initiative) vs 罪悪感 | 家族 |
| 学童期 (6-12歳) | 勤勉性 (Industry) vs 劣等感 | 学校・近隣 |
| 青年期 (12-20歳) | 同一性 (Identity) vs 役割混乱 | 仲間集団 |
看護過程ポイント:
小児看護学では、入院中の乳幼児の発達支援が重要です。アセスメントでは、患者の年齢に応じた発達課題を評価し、入院による発達の退行や遅れを予防する看護計画を立案します。例えば、乳児期の子どもには、一定のケアを提供して基本的信頼感を損なわないよう、タッチングやアイコンタクトを積極的に行うなどの介入が効果的です。
暗記のコツ: 各段階の「キーワード」を覚えるのが最も効果的です。「乳児は信頼 (Trust)」「幼児は自律 (Autonomy)」「青年は同一性 (Identity)」のように、年齢と発達課題の核となる単語を結びつけて覚えましょう。「信頼」の「信」と「乳児」の「乳」を「しんにゅうじ」と語呂合わせするのも良いでしょう。
国試頻出ポイント: この問題は、発達心理学の基礎を問うもので、毎年のように出題されます。単に段階と課題の暗記だけでなく、各発達課題が「なぜその時期に重要なのか」、そして「看護師としてどのようにその発達を支援できるか」という視点が、状況設定問題に発展した際に必要となります。
出題パターン注意!: 「エリクソンの発達段階の順番を並べ替えよ」という問題や、「青年期の看護で特に重視すべき発達課題は何か」という応用問題、あるいは「高齢患者の『人生の統合』を支援する看護介入はどれか」といった老年看護と結びついた問題も頻出です。