大腿骨骨折のため牽引療法中で、ギプス固定が必要な8歳の女児。この児の安楽を図るための看護ケアとして最も適切なのはどれか。 | MyMerci
さまざまな状況にある小児と家族への看護
問題

大腿骨骨折のため牽引療法中で、ギプス固定が必要な8歳の女児。この児の安楽を図るための看護ケアとして最も適切なのはどれか。

解説
長期のギプス固定や牽引では、不動による筋萎縮や関節拘縮が生じやすい。等尺性運動(筋肉の長さを変えずに収縮させる運動)は、ギプス内でも実施可能で、筋力維持に有効である。小児にもわかりやすく指導し、積極的に実施させることが安楽と回復促進につながる。

詳細解説

核心解説 この問題は、大腿骨骨折 (Femoral Fracture) のため 牽引療法 (Traction Therapy)ギプス固定 (Cast Immobilization) 中の8歳女児に対する 安楽を図る看護ケア を問うています。小児看護の視点では、成長発達段階を考慮し、不動による合併症予防と子どもの主体的な参加を促すことが重要です。特に長期の固定では、不動による筋萎縮 (Disuse Muscle Atrophy)関節拘縮 (Joint Contracture) が生じやすく、これを予防するための運動指導が安楽と回復促進に直結します。 正解の根拠 (Answer Rationale)正解! ギプス固定中の筋萎縮予防に等尺性運動を指導する
最重要! 等尺性運動 (Isometric Exercise) は、筋肉の長さを変えずに収縮させる運動で、ギプスや牽引による不動状態でも実施可能です。関節を動かさずに筋力を維持できるため、筋萎縮や関節拘縮の予防に有効であり、患肢の安静を保ちながらも子どもの身体機能を維持する、安楽かつ回復促進的な看護介入です。8歳児には「ギプスの下で筋肉をぎゅっと力を入れて、ゆっくり休ませてね」と具体的に指導します。 誤答の分析 (Distractor Analysis)混同注意! 痛みがある場合は安静を保ち、鎮痛薬は使用しない
骨折後の痛みは強いストレスであり、安楽を阻害します。小児であっても適切な 鎮痛薬 (Analgesics) の使用(医師の指示に基づく)は必要です。「痛みは我慢させるもの」という認識は誤りで、疼痛コントロールは安楽の基本です。 ② ギプスが乾くまで患肢を動かさないように指導する
誤り! これは 混同注意! ギプス (Plaster Cast) が完全に乾燥・硬化するまでは(通常24~48時間)、変形や圧迫を防ぐために安静を保つ必要があります。しかし、本問の状況は「牽引療法中でギプス固定が必要」とあり、ギプスはすでに硬化しているか、または牽引により自動的に安静が保たれている状態です。ギプス乾燥前の注意事項と混同しないようにしましょう。 ③ ギプス端の皮膚の観察は毎日行わない
誤り! ギプス端は皮膚が擦れて 褥瘡 (Pressure Ulcer)皮膚炎 (Dermatitis) を起こしやすい箇所です。また、ギプス内に異物(食べかすや砂など)が入り込むと感染の原因となります。ギプス端の皮膚の観察は 毎日必須 の観察項目です。 ⑤ ギプス内の痒みに対して、棒などでかくことを許可する
禁忌! ギプス内に棒や針金などを差し込むと、皮膚を傷つけたり、ギプス内部に汚染を招いたりする危険があります。痒みがある場合は、ドライヤーの冷風をギプス端から当てる か、皮膚科医の指示による外用薬 を使用します。子どもには「中でかくと傷ができちゃうから、冷たい風を当てようね」と説明します。 概念整理
運動の種類定義ギプス固定中の適応
等尺性運動 (Isometric Exercise)関節を動かさずに筋肉を収縮させる運動筋萎縮予防に最適。ギプス内でも安全に実施可能。
等張性運動 (Isotonic Exercise)関節を動かしながら筋肉を収縮させる運動ギプス固定中は患肢の関節可動域制限があるため実施困難。
他動的運動 (Passive Exercise)介助者が患者の関節を動かす運動ギプス除去後の関節拘縮予防に有効だが、固定中は不可。
一目で比較!
  • 混同注意! ギプス乾燥前の注意(安静・動かさない・手のひらで支える) vs ギプス硬化後のケア(等尺性運動・皮膚観察・痒みへの対応)
  • 「鎮痛薬は使わない」という考えは、小児の疼痛管理の基本(適切な鎮痛は必要)と真逆の認識。
看護過程ポイント
  • アセスメント: ギプス端の皮膚の色・温度・浮腫の有無、疼痛の程度(Face Scaleなど小児用スケール使用)、筋萎縮の兆候(患肢周囲径の減少)
  • 看護診断: 「不動による筋萎縮のリスク状態」「急性疼痛」「皮膚統合性の障害リスク状態」
  • 計画・実施: 等尺性運動の指導(1日数回、1回10~20回程度から開始)、痒みに対する非薬物的介入(冷風、気晴らし)、疼痛時は鎮痛薬の指示確認と投与
  • 評価: 筋萎縮や関節拘縮が生じていないか、疼痛が適切にコントロールされているか
暗記のコツ
  • 「ギプス固定 + 牽引 = 不動 (Immobilization)」→ 合併症は「筋萎縮」と「関節拘縮」→ 対策は「等尺性運動 (Isometric Exercise)
  • 「イソメトリー(Isometry)= 長さが同じ」→ 筋肉の長さを変えずに力を入れる運動と覚えましょう。
国試頻出ポイント
  • 骨折患者の看護(ギプス・牽引・手術後)における合併症予防は頻出。特に「等尺性運動」の適応と禁忌をセットで問われます。
  • 小児の骨折看護では、成長発達に合わせた説明方法や、遊びを取り入れたリハビリテーションの視点も重要です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
整形外科病棟で、8歳の女児が大腿骨骨折のため 直達牽引 (Skeletal Traction) 中で、患部には ギプス包帯 (Plaster Bandage) が巻かれています。日勤帯のラウンドで、女児が「足が痒くて仕方ない」と訴え、隣のベッドから持ってきたボールペンでギプスの中をかこうとしている場面に遭遇しました。あなたは看護師としてどのように対応しますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
  1. 観察: まず女児を落ち着かせ、ボールペンを安全に取り上げます。ギプス端の皮膚に傷や発赤がないか確認し、痒みの部位と程度を聞き取ります。
  2. アセスメント: ギプス内の痒みは、皮膚の乾燥や汗、ギプス端の刺激が原因であることが多いです。棒などでかく行為は、皮膚損傷や感染リスクを高めます。
  3. 報告・相談: 痒みが強い場合は、医師に報告し、抗ヒスタミン薬 (Antihistamines) の内服や外用ステロイド薬の処方を検討してもらいます。
  4. 介入: ドライヤーの冷風をギプス端から当てる ことで痒みを緩和します。同時に、等尺性運動(ギプスの中で足の指をぎゅっと曲げたり、足首を動かさずにふくらはぎに力を入れる運動) を一緒に行い、気をそらしながら筋萎縮予防も促進します。「痒いときは、冷たい風を当てようね。そして、ここに力を入れて、お姉さんと一緒に運動しよう!」と声をかけます。
  5. 評価: 痒みが軽減したか、皮膚に損傷がないかを再確認します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
  • 禁忌! ギプス内をかくための棒や針金の使用は絶対に禁止。
  • 最重要! 小児は痒みに耐えられずに自分でかいてしまうリスクが高いため、保護者への指導も徹底する(「お子さんがかかないように見守ってください」「かきそうになったらすぐにナースコールを」)。
  • ギプス端の皮膚は毎日の観察項目であり、発赤・水疱・ただれの有無を確認する。
  • 看護プロトコル
    • 観察項目: ギプス端の皮膚状態、疼痛・痒みの程度(小児用数値評価スケールやFace Scale)、患肢の色・温度・毛細血管再充満時間(CRT)、浮腫の有無、足背動脈の触知、感覚・運動機能
    • 報告基準 (SBAR):
      S(状況): 「8歳女児、大腿骨骨折でギプス固定中です。ギプス内の痒みが強く、ボールペンでかこうとしていました。」
      B(背景): 「現在、痒み以外に疼痛や感覚障害はありません。ギプス端の皮膚に異常は認めません。」
      A(アセスメント): 「痒みのコントロールが必要と考えます。皮膚損傷のリスクがあります。」
      R(提案): 「冷風の使用を試みましたが効果が不十分です。抗ヒスタミン薬の内服や外用薬の処方を検討いただけますか?」
    先輩看護師の一言 「小児の整形外科看護で大事なのは、『動かしてはいけない』という制限の中でも、子どもが自分でできることを見つけてあげることです。等尺性運動は『力を入れて、ゆっくり休ませて』の繰り返しで、ゲーム感覚でできます。そして痒みの訴えは必ず真剣に受け止めて、安全な方法で対処してあげてください。『我慢しなさい』は子どもの心と体に優しくありません。国試でも、『子どもの主体性を引き出すケア』が正解になることが多いですよ!」

重要概念

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