核心解説
この問題は、
アルツハイマー型認知症 (Alzheimer’s Disease) の高齢者に見られる皮膚乾燥と掻痒(Pruritus)に対する訪問看護師の対応を問うています。
高齢者の皮膚は皮脂腺の萎縮により水分保持能が低下し、乾燥肌(乾皮症、Xerosis)を生じやすいことが病態生理の基盤です。特に認知症により適切な掻痒コントロールが困難なため、
最重要! 非薬物的介入として保湿剤塗布(Moisturizing)と爪切り(Nail Care)による二次的皮膚障害(掻爬痕、二次感染)の予防が最優先となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
① 保湿剤の塗布と爪切りを指導する。
最重要! 高齢者の乾燥性皮膚掻痒症では、まず保湿ケア(尿素含有クリーム、ヘパリン類似物質など)により角質層の水分を保持し、バリア機能を回復させることが基本です。同時に爪を短く切ることで、掻破による皮膚損傷(二次感染、潰瘍)を予防します。訪問看護師として、家族への具体的なケア指導(入浴後の保湿タイミング、爪切りの頻度と方法)を提供することが適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
② かきむしりを防ぐため、ミトン型手袋を常時装着する。
混同注意! ミトン型手袋は身体的拘束に該当する可能性が高く、認知症高齢者のQOL低下や行動心理症状(BPSD)の悪化を招く恐れがあります。
常時装着は患者の尊厳を損ない、転倒リスクも高まるため禁忌に近い対応です。夜間のみ一時的に使用する場合も、まずは保湿や環境調整を優先すべきです。
③ すぐに皮膚科受診を勧める。
乾燥肌による掻痒は高齢者に極めて一般的であり、皮膚科受診の前に看護師が実施可能な保湿ケアや生活指導が優先されます。皮疹や感染徴候(発赤、滲出液、膿疱)がない限り、まずは非薬物的介入を試みるべきです。
④ 掻痒の原因として、シーツの素材を確認する。
シーツの素材(ウールなど刺激性のもの)が原因となる可能性は否定できませんが、
高齢者で最も頻度の高い原因は皮脂減少による乾燥であり、対応の優先順位としては保湿ケアが先です。
⑤ 入浴を中止し、清拭のみとする。
混同注意! 入浴は皮膚の清潔を保ち、血行促進やリラックス効果もあるため、むしろ推奨されます。ただし、
湯温はぬるめ(38~40℃)、石鹸は中性または弱酸性の低刺激製品を使用し、入浴後すぐに保湿剤を塗布するのが標準ケアです。入浴中止はかえって乾燥を悪化させることがあります。
概念整理
| 項目 | 高齢者乾皮症(Xerosis) | アトピー性皮膚炎(参考) |
| 原因 | 皮脂腺萎縮、加齢による皮膚バリア機能低下 | アレルギー炎症、フィラグリン遺伝子異常 |
| 好発部位 | 下腿、背部、前腕伸側 | 肘窩、膝窩、頸部 |
| 一次対応 | 保湿剤塗布、低刺激性石鹸、爪切り | ステロイド外用薬、保湿、抗原除去 |
看護過程ポイント
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アセスメント: 皮膚の乾燥程度、掻爬痕の有無と範囲、感染徴候(発赤、熱感、膿性分泌物)、睡眠状態、認知症の重症度とBPSDの有無。
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看護診断: 「皮膚統合性の障害 (Impaired Skin Integrity)」関連因子:乾燥、掻破行動 / 「睡眠パターン混乱 (Disturbed Sleep Pattern)」関連因子:掻痒による中途覚醒。
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計画・実施: 家族への保湿剤塗布指導(入浴後5分以内に塗布)、爪切り指導(週1回程度)、環境調整(部屋の湿度50~60%に加湿)。
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評価: 掻爬痕の減少、患者の睡眠時間延長、家族のケア実施状況の確認。
暗記のコツ
「高齢者の痒みは『乾燥』が9割!まずは『保湿』と『爪切り』で攻めろ!」
認知症+痒みのケアは、「薬より先にケア(Non-pharmacological Intervention)」が基本線。
国試頻出ポイント
- 高齢者の皮膚トラブルは「乾燥」が最大リスク因子であること。
- 掻痒時はまず保湿ケア、次に爪切り、その後に環境調整・薬物療法(抗ヒスタミン薬など)の順で考える。
- 身体的拘束に当たるケア(ミトン手袋常時装着など)は「尊厳の保持」の観点から不適切と判断できる。