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高齢者の健康
問題

90歳の男性。認知症(アルツハイマー型)で要介護4。特別養護老人ホームに入所中。夜間に不穏状態となり、「家に帰る」と言って施設内を歩き回る。日中は車椅子で過ごすことが多く、職員の声かけに反応は乏しい。この高齢者の行動に最も関連する身体・精神・生活の連動の観点からの説明はどれか。

解説
高齢者の睡眠障害や夜間の行動障害は、日中の活動量不足や日光曝露不足、昼寝の増加など生活リズムの乱れと密接に関連する。日中車椅子で過ごすことが多く活動量が少ないことが、夜間の睡眠を浅くし、結果として徘徊や不穏行動につながっている可能性が高い。身体・精神・生活の連動の観点からは、生活リズムの調整が重要である。
同じテーマの次の問題85歳の女性。認知機能の低下はないが、最近転倒し大腿骨頸部骨折を受傷した。入院中はリハビリテーションを行い歩行器歩行で退院したが、自宅では「怖くて一人で歩けない」と歩行器を使用せず…

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の認知症(アルツハイマー型)に伴う行動障害(徘徊、不穏)を、身体・精神・生活の連動という観点から分析する力を問うています。単に認知症の症状として捉えるのではなく、生活リズムの乱れ活動量の低下が夜間の行動に与える影響をアセスメントする視点が重要です。特に、施設入所中の高齢者では、日中の活動量不足が概日リズム (Circadian Rhythm) を崩し、夜間の不穏や徘徊を誘発することが知られています。 正解の根拠 (Answer Rationale)
設問では「日中は車椅子で過ごすことが多く、職員の声かけに反応は乏しい」とあり、最重要! この情報から、日中の身体活動量が極めて少ないことが読み取れます。高齢者の睡眠は加齢により本来浅くなりやすい上に、日中に十分な活動や日光曝露がないと、夜間の睡眠がさらに妨げられます(睡眠相後退)。この日内リズムの乱れが、夜間の覚醒レベルの不安定さや「家に帰る」といった行動に結びついていると考えられます。よって、正解は③番です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番:身体的痛みは確かにBPSD(行動・心理症状)の原因となり得ますが、問題文に痛みを示唆する記述(表情の歪み、特定の部位を気にする等)がなく、「最も関連する」説明としては優先度が低いです。
②番:せん妄 (Delirium) は急性の発症で日内変動が特徴ですが、本例は「夜間に繰り返す」パターンであり、認知症の行動症状にせん妄が重なる「重複せん妄」の可能性は否定できませんが、問題は「身体・精神・生活の連動」という観点であり、より基礎的な生活リズムの問題が優先されます。
④番:見当識障害の悪化は認知症の自然経過ですが、「夜間のみ」という時間的特徴や「日中活動量が少ない」という生活背景を説明するものではありません。
⑤番:施設環境への適応障害も考えられますが、入所初期であればともかく、既に入所している状態であり、これだけが夜間特異的に出現する説明としては弱いです。 概念整理: 高齢者の睡眠障害と行動障害の関連
高齢者は、加齢による睡眠構造の変化(深いノンレム睡眠の減少、中途覚醒の増加)に加え、生活不活発病 (Disuse Syndrome) により活動量が低下し、睡眠相が後退しやすい。これが夜間の徘徊や不穏、昼夜逆転の原因となる。認知症患者ではこのリズム障害がさらに顕著になり、BPSD(行動・心理症状)として現れる。介入の基本は、日中の活動促進規則正しい生活リズムの確立である。 一目で比較!: せん妄 (Delirium) vs 認知症行動症状 (BPSD)
項目せん妄 (Delirium)認知症行動症状 (BPSD)
発症急性・亜急性緩徐・慢性経過中に出現
経過日内変動あり、変動性が強い比較的安定、夜間に悪化傾向
意識変動する意識障害(混濁)基本的に清明(進行期を除く)
原因身体疾患、薬剤、環境変化脳の器質的変化、環境、心理
看護過程ポイント: アセスメント (Assessment)
- 観察項目: 24時間の行動記録(睡眠・覚醒パターン、活動量、食事摂取状況)、日中・夜間のバイタルサイン (Vital Signs)、痛みの有無(表情や動作の観察)、薬剤の影響(特に抗コリン薬や睡眠薬)、環境要因(室温、騒音、照明)。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「睡眠パターン障害 (Disturbed Sleep Pattern)」、「活動耐性低下 (Activity Intolerance)」、「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」。
- 計画・介入 (Planning & Intervention): 日中は車椅子からの離床(可能な範囲で歩行訓練)、日光浴の実施、集団リハビリテーションやレクリエーションへの参加促進。夜間は、安楽な臥床姿勢の提供、照明を落とす、リラクゼーション(音楽療法、足浴など)の実施。必要に応じて医師と相談し、睡眠薬の調整や痛みのコントロールを検討する。
- 評価 (Evaluation): 夜間の行動(徘徊・不穏)の頻度・持続時間の変化、日中の覚醒状態の改善、転倒・外傷の有無を評価する。 暗記のコツ: 「高齢者の行動障害を見たら、まずは生活リズム活動量をチェック!
『昼間寝てばかりいると、夜に起きて動き回る』→ これが基本原則です。認知症だからといってすぐに薬に頼らず、まずは日中の活動量増加を試みることが大事。」 国試頻出ポイント: 認知症のBPSDに対するケアの第一選択は非薬物療法(環境調整、生活リズムの調整、コミュニケーション)である。特に「夜間の不穏・徘徊」の問題では、日中活動量の低下が原因の一つとして必ず出題される。 出題パターン注意!: 単純に「認知症の症状はどれか?」を問う問題から、「この患者の夜間徘徊の原因として最も考えられる生活背景はどれか?」というような、事例を読んで原因をアセスメントする状況設定問題として出題される。また、介入の優先順位を問う問題(例:薬物療法 vs 環境調整 vs 拘束)にも注意。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
特別養護老人ホームで夜勤中の看護師あなた。認知症の90歳男性、Aさんが突然起き出し、部屋を出て「家に帰る」と言いながら施設内を歩き始めました。日中はほとんど車椅子で過ごし、ウトウトしている時間が長いAさんです。あなたはどのように対応しますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 安全確保: まずAさんの安全を最優先に。転倒リスクが高いため、無理に制止せず、優しく声をかけながら付き添います。「Aさん、どうしました?一緒にお茶でも飲みませんか?」と気をそらすように誘導します。
2. アセスメント: バイタルサイン (Vital Signs) の測定、痛みの有無、排泄の有無(尿意や便意)、空腹の有無を確認。急な体調変化(感染症、脱水、薬の副作用)の可能性も考慮します。
3. 報告: 状態が落ち着かない、または新たな症状(発熱、意識レベルの変動)があれば、SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) を用いて医師または日勤リーダーに報告します。
4. 介入の振り返り: 翌日、日中の活動量記録を確認。車椅子での過ごし方が長すぎないか、散歩やリハビリの機会は十分だったかを検討し、ケア計画の見直しを提案します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒・骨折リスク: 徘徊中の転倒は重度の外傷につながるため、必ず見守りを徹底。やむを得ない場合はセンサーマットの使用やベッドの高さ調整を行う。 - 抑制の禁止: 身体拘束は最終手段であり、認知症のBPSDに対しては原則禁忌。まずは環境調整(安全なスペースの確保、サーキュレーションの誘導)を優先する。 - 脱水・低栄養: 夜間の活動が続くとエネルギー消費が増え、脱水や低血糖を起こしやすい。水分や軽食をこまめに提供する。 - 薬剤の影響: 睡眠薬や抗精神病薬の使用が、転倒リスクや日中の過鎮静を悪化させていないか評価する。 先輩看護師の一言: 「『徘徊=悪いこと』と捉えず、患者さんの『伝えたいこと』をくみ取ろうとしてください。『家に帰る』という言葉の裏には、『不安で落ち着かない』『寂しい』『トイレに行きたい』など、様々な思いが隠れています。まずは一緒に歩いて気持ちを落ち着かせてあげて、そのあとで『なぜ?』を考えてみてください。」

重要概念

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