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高齢者の健康
問題

82歳の女性。要介護1。一人暮らし。週2回の訪問介護と週1回の通所リハビリテーションを利用している。最近、訪問介護員が「冷蔵庫にほとんど食べ物がなく、やせてきたように見える」と報告した。本人は「食欲はあるけど、買い物に行くのが面倒で」と話す。この高齢者の状態を最も適切に表すのはどれか。

解説
フレイルは、加齢に伴い筋力・活動量・栄養状態などが低下し、健康障害を起こしやすい脆弱な状態を指す。この事例では、体重減少(やせ)、活動量低下(買い物に行かない)、食欲はあるが栄養摂取不足という複数の要素が重なっており、フレイルの概念が最も包括的に説明できる。サルコペニアは筋量減少に特化した概念である。
同じテーマの次の問題85歳の女性。認知機能の低下はないが、最近転倒し大腿骨頸部骨折を受傷した。入院中はリハビリテーションを行い歩行器歩行で退院したが、自宅では「怖くて一人で歩けない」と歩行器を使用せず…

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の フレイル (Frailty) の概念を理解しているかを問うています。フレイルとは、加齢に伴い筋力・活動量・栄養状態など複数の機能が低下し、健康障害を起こしやすい脆弱な状態を指します。この事例では、「やせてきた(体重減少・栄養状態低下)」「買い物に行かない(活動量低下)」「食欲はあるが摂取不足(低栄養傾向)」という複数の要素が重なっており、フレイルの概念が最も包括的かつ適切に説明できます。最重要! フレイルは、要介護状態 の前段階であり、早期発見・介入により 健康寿命の延伸 が期待できる概念です。 正解の根拠 (Answer Rationale)
③ フレイル (Frailty) が正解です。日本老年医学会が提唱するフレイルの診断基準には、体重減少(意図しない年間4.5kg以上または5%以上)疲労感(「この2週間わけもなく疲れた感じがある」)活動量低下(歩行や軽い運動をしていない)歩行速度低下筋力低下(握力低下) の5項目が含まれます。この事例では、体重減少(やせ)、活動量低下(買い物に行かない)の2項目に該当し、フレイルの可能性が示唆されます。単一の要因ではなく、身体的・精神的・社会的要素が複合的に絡み合う脆弱性を捉えた概念です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
① 低栄養 (Malnutrition) は、この事例の一側面です。確かに栄養摂取不足の状態ですが、フレイルは「低栄養」「活動量低下」「筋力低下」など、より広範囲な脆弱性を包括する概念です。低栄養はフレイルの一因であり、部分的な説明に過ぎません。
② 閉じこもり (Housebound) は、週2回の訪問介護と週1回の通所リハビリテーションを利用していることから、外出自体はある程度できていると考えられます。「買い物に行かない」というのは活動範囲の狭さを示しますが、完全な閉じこもり状態とは言えません。
④ サルコペニア (Sarcopenia) は、混同注意! 骨格筋量と筋力の低下に特化した概念です。フレイルの身体的な要素の一つですが、この事例では栄養状態や活動量の低下も含めた包括的な評価が必要であり、サルコペニアだけでは不十分です。
⑤ 買い物難民 (Shopping refugee) は、社会的な問題を示す用語であり、医学的・看護的な健康状態の評価には適していません。この事例の本質は、高齢者の脆弱な健康状態です。 関連概念の整理 (Related Concepts)
概念整理
概念定義の焦点事例への当てはまり
フレイル (Frailty)複合的脆弱性(身体・精神・社会)◎ 最も包括的
サルコペニア (Sarcopenia)筋量・筋力低下△ 一側面のみ
低栄養 (Malnutrition)栄養素の摂取・代謝異常△ 一側面のみ
閉じこもり (Housebound)外出頻度の著しい減少△ 外出はある程度あり
一目で比較! フレイル vs サルコペニア:フレイルは「虚弱」全般、サルコペニアは「筋肉減少」に特化。フレイルの診断基準にサルコペニアは含まれませんが、両者は強く関連し、サルコペニアはフレイルの身体的な中核要素です。 看護過程ポイント - アセスメント: 体重推移、食事摂取量、買い物や調理の実態、握力測定、歩行速度の評価。本人の「面倒」という発言の背景(身体的不調か、心理的意欲低下か、社会的孤立か)をアセスメント。 - 看護診断: 「栄養バランスの変化:必要量以下に関連する」や「活動耐性低下に関連するセルフケア不足」などが考えられます。 - 計画・介入: 栄養状態改善(宅配サービスや配食サービス導入)、活動量維持(通所リハの頻度調整や買い物支援)、社会参加の促進。 - 評価: 体重増加、活動範囲の拡大、主観的QOLの向上。 暗記のコツ 「フレイル (Frailty) = 虚弱 = 複合的な脆弱性」と覚えてください。語源の「fragile(壊れやすい)」をイメージすると、ちょっとしたことで健康を崩しやすい状態と理解しやすいです。フレイルの5基準(体重減少・疲労感・活動量低下・歩行速度低下・筋力低下)は、「減った・疲れた・動かない・遅い・弱い」のゴロ合わせで覚えましょう。 国試頻出ポイント 高齢者のフレイルは、健康日本21(第二次)介護予防 の文脈で頻出です。フレイルとサルコペニアの区別、フレイルの診断基準(J-CHS基準)、介入方法(栄養・運動・社会参加)をセットで問われる傾向があります。また、フレイルの前段階である プレフレイル の概念も重要です。 出題パターン注意! 事例問題では、「この高齢者の状態を最も適切に表す用語はどれか」という形で、複数の類似概念(フレイル、サルコペニア、低栄養、ロコモティブシンドロームなど)から選ばせる問題が頻出です。単なる用語の暗記ではなく、各概念の定義と包含する要素の違いを理解しておくことが合格の鍵です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
訪問看護師として、82歳女性(要介護1、一人暮らし)の自宅を初めて訪問しました。訪問介護員から「最近やせてきた」「冷蔵庫が空っぽ」との情報提供があり、ケアマネジャーからフレイル評価の依頼がありました。本人は「食欲はあるんだけどね、買い物が面倒で。昔は歩いて行けたスーパーも、今は途中で休まないと行けなくなったよ」と話します。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察とアセスメント: まず 体重測定BMI算出 を行います。意図しない体重減少の有無(1年間で5%以上または4.5kg以上)を確認。次に 握力測定歩行速度 を評価します。さらに「この2週間わけもなく疲れた感じがあるか」を聴取。これらでフレイルの該当項目をチェックします。 2. 報告と連携: 評価結果を SBAR 形式でケアマネジャーと主治医に報告。栄養状態が悪化している場合は、栄養補助食品の導入や配食サービスの検討を提案します。 3. 介入と評価: 栄養指導(たんぱく質摂取量 体重1kgあたり1.2~1.5g/日を目標)、運動指導(週2回の通所リハに加え、自宅でできる スクワットやかかと上げ を指導)、社会参加の促進(地域のサロンや老人クラブの情報提供)。1ヶ月後に再評価し、体重変化や活動量の改善を確認します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒リスク: フレイル高齢者は筋力低下により転倒リスクが高い。自宅内の環境評価(段差、手すり、敷物の滑り止め)を必ず行う。 - 低栄養による免疫低下: 感染症(特に肺炎や尿路感染症)に注意。予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)の確認と推奨。 - 急激な体重減少や嚥下障害の兆候(むせ、食べこぼし)がないか観察。誤嚥性肺炎の予防が重要。 看護プロトコル - 観察項目: 体重、BMI、握力、歩行速度、食事摂取状況(食事記録)、活動量(歩数計など)、主観的疲労感、気分(うつ傾向のスクリーニングも重要)。 - 報告基準 (SBAR): S(状況)「フレイル評価の結果、体重減少と歩行速度低下を認めました」、B(背景)「週2回の訪問介護と週1回の通所リハを利用中、買い物困難」、A(アセスメント)「フレイルの可能性が高く、栄養介入と運動指導が必要」、R(提案)「配食サービスの導入と理学療法士による自宅運動指導の追加を提案します」。 - 記録のポイント: フレイルの評価項目(J-CHS基準など)の該当数、具体的な体重値、食事摂取量、運動内容と頻度、本人の主観的評価(「以前より元気になった」など)。 先輩看護師の一言 「高齢者のフレイルは、『まだ何とか自分で動けているけど、もう少しで介護が必要になりそう』というグレーゾーンを捉えた概念です。この事例のように、『食欲はあるけど買い物が面倒』という一言に、身体機能の低下、意欲の低下、社会的孤立のサインが隠れています。国試では用語の定義を問われますが、現場では『この患者さん、去年より歩くのが遅くなったな』『体重が減ってるな』といった小さな変化に気づき、フレイルの視点で包括的にアセスメントすることが、要介護状態への移行を防ぐ第一歩です。単なる『やせ』と片付けずに、『なぜやせたのか』を多面的に考えられる看護師になりましょう!」

重要概念

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