前立腺全摘除術後に尿失禁が続く患者への看護として適切なのはどれか。 | MyMerci
排泄機能障害のある患者の看護
問題

前立腺全摘除術後に尿失禁が続く患者への看護として適切なのはどれか。

解説
前立腺摘出後の尿失禁には、骨盤底筋体操が有効であり、尿道括約筋の機能回復を促進する。1は誤りで、水分制限は尿路感染症や脱水のリスクを高める。3は誤りで、カテーテル長期留置は感染や尿道損傷の原因となる。4は誤りで、パッドはこまめに交換し、皮膚のびらんを予防する必要がある。5は誤りで、腹圧を高める運動は尿失禁を悪化させる可能性がある。

詳細解説

核心解説 この問題は、前立腺全摘除術 (Radical Prostatectomy) 後の合併症である尿失禁 (Urinary Incontinence)に対する看護介入の優先順位を問うています。前立腺摘出術では、尿道括約筋や周囲の神経・筋が侵襲を受けるため、術後一過性または持続性の腹圧性尿失禁 (Stress Urinary Incontinence) が高頻度で生じます。この病態生理を理解することが鍵となります。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! ③の骨盤底筋体操 (Pelvic Floor Muscle Exercises / Kegel Exercises)は、尿失禁に対する非侵襲的かつエビデンスレベルの高い看護介入です。尿道括約筋の随意収縮を強化し、腹圧上昇時の尿漏れを防ぐ機能を改善します。術後早期から継続的に指導することで、多くの患者で症状が改善します。 誤答の分析 (Distractor Analysis)混同注意! パッドの交換回数を「1日1回」と制限するのは誤りです。尿失禁が続く状態でパッドを長時間放置すると、皮膚びらん (Skin Maceration / Erosion)、接触性皮膚炎、褥瘡 (Pressure Injury)のリスクが高まります。こまめな交換(状況に応じて数時間ごと)が基本です。 ② 腹圧を高める運動(腹筋運動、重い物を持ち上げるなど)は、腹圧性尿失禁を悪化させる可能性が高いため、推奨されません。術後はむしろ腹圧をかけない生活指導が必要です。 ④ 水分摂取を制限すると、尿量は減りますが、尿路感染症 (Urinary Tract Infection / UTI) のリスク上昇、脱水 (Dehydration)、便秘の悪化を招き、結果的に排尿コントロールを困難にします。適切な水分摂取(1日1500~2000ml程度)は継続すべきです。 ⑤ 尿道カテーテルの長期留置は、カテーテル関連尿路感染症 (Catheter-Associated UTI / CAUTI)、尿道損傷、膀胱結石のリスクを著しく高めるため、術後の一過性尿閉など特別な適応がない限り行いません。 関連概念の整理 (Related Concepts) - 尿失禁の分類:腹圧性尿失禁 (Stress Incontinence)、切迫性尿失禁 (Urge Incontinence)、溢流性尿失禁 (Overflow Incontinence)、機能性尿失禁 (Functional Incontinence)。前立腺全摘後は主に腹圧性が主体ですが、手術侵襲による膀胱機能の変化で切迫性が混在することもあります。 - 術後排尿管理:尿道カテーテル抜去後、残尿測定、排尿日誌 (Voiding Diary) の活用、骨盤底筋体操の開始タイミング(抜去後早期から可)が重要です。
概念整理: 前立腺全摘術後の尿失禁は、主に尿道括約筋の機能低下による腹圧性尿失禁である。治療の第一選択は骨盤底筋体操 (Kegel Exercise)であり、薬物療法や外科的再建術(人工尿道括約筋留置など)は保存的治療が無効の場合に考慮される。
一目で比較!:
尿失禁タイプ特徴看護介入
腹圧性尿失禁咳・くしゃみ・笑う・立ち上がるなど腹圧上昇時に尿漏れ骨盤底筋体操、体重管理、便秘予防
切迫性尿失禁急な尿意(尿意切迫感)が出現し我慢できずに漏れる膀胱訓練(排尿間隔延長)、抗コリン薬の内服指導、骨盤底筋体操も有効
溢流性尿失禁膀胱に尿が過剰に溜まり、少しずつ漏れ出る残尿測定、間欠的自己導尿 (CIC) 指導、排尿誘導

看護過程ポイント: アセスメントでは、尿失禁のタイプ・頻度・量・誘発因子を具体的に聴取し、排尿日誌の記録を促す。看護診断としては「尿失禁(腹圧性)」や「スキン・インテグリティ障害のリスク」が優先される。計画では、患者のADLや生活スタイルに合わせた骨盤底筋体操の指導計画と、パッド管理を含むスキンケア計画を立案する。
暗記のコツ: 「前立腺全摘後の尿失禁=骨盤底筋体操」とセットで覚える。骨盤底筋体操のイメージは「排尿を途中で止めるようにお尻の穴と尿道をギュッと締める」運動。
国試頻出ポイント: 尿失禁の看護は、高齢者看護、産後ケア(母性)、前立腺手術後(成人/老年)の文脈で頻出。特に「骨盤底筋体操が有効な尿失禁のタイプは?」という形式で問われることが多い。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario) 「前立腺全摘除術後5日目、尿道カテーテルが抜去されました。翌日、患者様から『咳をすると尿が漏れてしまう。パッドがすぐに濡れてしまうんだけど、どうしたらいいの?』と不安そうに相談がありました。」 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 1. 観察とアセスメント: まず、尿失禁の状況を具体的に聴取します(いつ、どんな時に、どの程度漏れるか)。排尿日誌(排尿時刻、尿量、失禁の有無と量、誘因)の記録を依頼します。スキンケアの状態(発赤、びらんの有無)も確認します。 2. 報告と相談: 医師や専門看護師(WOCN:皮膚・排泄ケア認定看護師)に情報共有し、骨盤底筋体操の指導を開始するタイミングや具体的な方法について確認します。多くの場合、抜去後早期から開始可能です。 3. 介入(指導): 最重要! 骨盤底筋体操の方法を、患者様が理解できるように実演を交えながら指導します。「おしっこを途中で止める感じで、お尻の穴と尿道をゆっくり5秒間締めて、その後ゆっくり5秒間リラックスする。これを10回1セットとして、朝昼晩の3セット行ってみてください。」パッドの適切な選択と交換頻度(こまめに交換し、皮膚を清潔に保つこと)も合わせて指導します。 4. 評価: 1~2週間後に、尿失禁の改善度(パッド使用枚数の変化、漏れる頻度の減少)を確認します。効果が乏しい場合は、専門的な骨盤底リハビリテーション(バイオフィードバック療法など)の紹介を検討します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) - スキンケアの徹底:尿で長時間湿潤した状態が続くと、皮膚びらんや真菌感染(カンジダ症)を引き起こします。パッド交換時には、洗浄(ぬるま湯または皮膚洗浄フォーム)と保湿ケア(スキンケアバリアクリームの塗布)を指導します。 - 便秘の予防:便秘による排便時の強いいきみは腹圧を上昇させ、尿失禁を悪化させます。水分摂取と食物繊維の十分な摂取を促します。 - 感染徴候の観察:発熱、排尿時痛、尿の混濁など尿路感染症の兆候を見逃さないようにします。
看護プロトコル: SBARで医師報告する際の例。 - S (Situation): 「前立腺全摘術後5日目、カテーテル抜去翌日のA様。咳嗽時に尿失禁が出現しています。」 - B (Background): 「手術は問題なく終了。抜去後の残尿は30mlと問題ありませんでした。」 - A (Assessment): 「腹圧性尿失禁と考えます。骨盤底筋体操の指導を開始しても良いでしょうか?」 - R (Recommendation): 「パッド管理とスキンケアの指導も併せて行いたいと考えています。WOCNへのコンサルトも検討します。」
先輩看護師の一言: 「前立腺全摘後の尿失禁は、多くの患者さんが悩むけど、『言い出しにくい』デリケートな問題です。『よくあることですよ』と安心させて、具体的なケアの選択肢を提示することが看護師の役割です。国試では正解を選ぶだけでなく、『この選択肢を選んだ場合、患者さんにどんな説明をするか』までイメージできると、臨床でも役立ちますよ!」

重要概念

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