核心解説
この問題は、
経尿道的前立腺切除術(TURP: Transurethral Resection of the Prostate)後の膀胱洗浄(Bladder Irrigation)における、出血状態のアセスメントを問うています。TURP後は、切除創からの出血と、洗浄による血腫形成予防が重要です。
膀胱洗浄液の色調と性状の変化は、出血量の増減を直接反映する最も重要な観察項目の一つです。
正解の根拠(Answer Rationale)
最重要! 洗浄液の色が「淡い紅色」から「濃い紅色」に変化した場合、これは活動性出血または出血量の増加を示す
危険信号(Critical Sign)です。術後は経時的に出血が減少し、洗浄液の色は徐々に淡くなっていくのが正常経過です。濃い紅色への変化は、血管の再開通や全身の血圧上昇による出血増加などが原因として考えられ、直ちに医師へ報告し、バルーンタンポナーデや牽引の確認、必要に応じて輸血や止血処置の準備を行います。
誤答の分析(Distractor Analysis)
混同注意!
①番:「洗浄液の量が注入量より少なくなった」は、膀胱洗浄における尿量測定では、本来注入量とほぼ同量(+尿量分)が回収されます。回収量が少ない場合は、
洗浄液の貯留やチューブの閉塞を疑う所見であり、出血増加を直接示すものではありません。
②番:「患者の血圧が上昇した」は、一般的に出血が増加すると循環血液量が減少し、代償性の頻脈が生じ、最終的には血圧は低下します(出血性ショック)。血圧上昇は出血増加の指標とはならず、むしろ疼痛や不安、あるいは高血圧の既往による可能性が高いです。
④番:「洗浄液に小さな血の塊が混じらなくなった」は、出血が減少し、凝血塊が形成されなくなったことを示すため、改善傾向を示す所見です。
⑤番:「洗浄液の色が淡い紅色から黄色に変化した」は、出血がほぼ消失し、洗浄液が尿の色(黄色)に近づいていることを示すため、正常な経過であり出血増加ではありません。
関連概念の整理(Related Concepts)
TURP症候群(TUR Syndrome)との鑑別も重要です。TURP症候群は、灌流液が血管内に吸収されることで生じる
低Na血症と循環血液量過多であり、出血増加とは全く異なる病態です。意識障害、血圧上昇、徐脈、吐き気などの症状に注意します。
概念整理
TURP後膀胱洗浄の観察では、
①洗浄液の色調(赤色の濃さ)と性状(凝血塊の有無・大きさ)、②回収量(注入量と尿量のバランス)、③患者のバイタルサイン(血圧、脈拍)、④膀胱内圧やカテーテルの牽引状態を総合的に評価します。
一目で比較!
| 所見 | 評価 |
| 濃い紅色の持続・増加 | 出血増加(危険) |
| 淡い紅色から黄色へ | 出血減少(改善) |
| 凝血塊が多量に混じる | 出血増加または膀胱内凝血(閉塞リスク) |
| 洗浄液の回収量が少ない | 閉塞・貯留の可能性 |
看護過程ポイント
アセスメント: 洗浄液の色調変化を「赤みの濃さ」と「時間経過」で定量的に評価する(例:0.9%生理食塩水で希釈した比色表を用いる施設もある)。
看護診断: 「術後出血リスク状態」または「体液量減少リスク状態」。
計画・介入: 医師への報告基準(例:濃い紅色が30分以上持続、凝血塊が増加した場合)を事前に確認しておく。
評価: 洗浄液の色調が淡くなり、バイタルサインが安定していることを確認する。
暗記のコツ
「濃い赤=濃い血=出血増加」とストレートにイメージしましょう。洗浄液の色は「血の濃さの指標」です。黄色(尿色)に近づくほど安全、濃い赤になるほど危険です。
国試頻出ポイント
TURP術後看護は頻出分野です。特に膀胱洗浄の観察項目(色調、回収量、凝血塊)とTURP症候群(低Na血症・循環過多)の症状をセットで覚えましょう。状況設定問題(事例問題)では、急変時の対応(医師への報告、輸血準備、膀胱洗浄液の交換)が問われます。
出題パターン注意!
「洗浄液の色が濃くなった」→「看護師の最初の対応は?」という形で、
報告・記録・処置の優先順位を問う発展問題が出題されます。正解は「医師へ報告」が第一選択肢となることが多いです。