核心解説
この問題は、
脳梗塞 (Cerebral Infarction) による左片麻痺と感覚障害を有する患者に対する、
廃用症候群(生活不活発病)(Disuse Syndrome) の予防看護を問うています。廃用症候群とは、活動量の低下や不動状態が続くことで生じる二次的な身体・精神機能の低下(筋萎縮、関節拘縮、骨萎縮、廃用性低血圧、深部静脈血栓症、褥瘡、誤嚥性肺炎、うつ状態など)の総称です。予防の基本は、
最重要! 「早期からの可動域訓練 (Range of Motion, ROM訓練)」と「早期離床」です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 脳卒中患者では、片麻痺と感覚障害により患側(麻痺側)の四肢が動かせず、感覚が鈍麻しているため、不動による二次的障害(関節拘縮、筋委縮、褥瘡)のリスクが極めて高い状態にあります。廃用症候群の予防は、急性期から開始する必要があり、特に
関節拘縮 (Joint Contracture) 予防のための
他動的関節可動域訓練 (Passive ROM Exercise) が必須です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ③番「麻痺側の関節を他動的に関節可動域訓練する」が最も適切です。患者自身では動かせない麻痺側の関節を、看護師が他動的に全可動域にわたって動かすことで、関節包や靭帯の短縮、筋の短縮・萎縮を予防し、関節拘縮を防ぎます。これは廃用症候群予防の根幹をなす看護介入です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番「痛みを避けるため、体位変換は1日1回とする」:
混同注意! 廃用症候群予防には、少なくとも
2時間ごとの体位変換が標準です。1日1回では長時間同一体位が続き、褥瘡や関節拘縮を促進します。痛みがある場合は、除痛処置(鎮痛薬の使用、クッションでの除圧)を併用しながら体位変換を実施します。
- ②番「患側上肢を常に伸展位で固定する」:関節拘縮予防には固定は逆効果です。脳卒中患者の上肢は痙性麻痺(Spastic Paralysis)により屈曲パターン(肩関節内転内旋、肘関節屈曲、手関節屈曲)を呈しやすいため、むしろ
良肢位 (Good Positioning)(肩関節外転、肘関節伸展、手関節背屈)でのポジショニングと、定期的な関節可動域訓練が重要です。
- ④番「ベッド上での安静を徹底し、離床を制限する」:これは廃用症候群を最も促進する対応です。安静度は医師の指示に従いますが、廃用予防の観点からは、病状が安定し次第、ギャッジアップ → 端坐位 → 車椅子移乗 → 歩行訓練と、段階的に離床を進めることが推奨されます。
- ⑤番「非麻痺側の筋力増強訓練は行わない」:非麻痺側(健側)の筋力維持・増強は、
ADL(Activities of Daily Living)維持(車椅子移乗、食事、更衣)のために極めて重要です。また、将来的な歩行訓練やT字杖歩行への移行にも必須です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
混同注意! 廃用症候群 (Disuse Syndrome) と
過用症候群 (Overuse Syndrome) は対義語。廃用症候群予防では「動かす」ことが基本ですが、健側や患側の誤った使いすぎ(過用)にも注意が必要です。また、
痙性麻痺 (Spastic Paralysis) と
弛緩性麻痺 (Flaccid Paralysis) では関節可動域訓練の際の注意点が異なります(痙性麻痺ではゆっくりと伸展方向に動かす)。
概念整理:
廃用症候群予防の3本柱:
1.
関節可動域訓練(自動・他動) → 関節拘縮予防
2.
体位変換(2時間ごと) → 褥瘡予防、姿勢変化
3.
早期離床・ADL訓練 → 筋力維持、心肺機能維持、廃用性低血圧予防
一目で比較!:
| 予防対象 | 介入方法 | 禁忌・注意 |
|---|
| 関節拘縮 | 他動的ROM訓練(全可動域) | 過伸展・急な動き(痛み誘発) |
| 筋萎縮 | 自動的ROM訓練・筋力増強訓練(健側) | 過用(疲労・腱断裂) |
| 褥瘡 | 2時間ごとの体位変換・除圧用具 | ずれ・摩擦(シーツ引きずらない) |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 麻痺の種類(弛緩性or痙性)、感覚障害の有無・程度、関節可動域制限の有無、痛みの有無
-
看護診断: 「廃用症候群のリスク状態 (Risk for Disuse Syndrome)」/「活動耐性低下 (Activity Intolerance)」
-
計画・実施: 他動的ROM訓練(各関節3~5回、痛みのない範囲で)、良肢位の保持、体位変換(2時間ごと)、ベッド上での自動運動(健側)促進
-
評価: 関節可動域の維持・改善、筋萎縮・褥瘡の発生予防
暗記のコツ:
「廃用=動かさないことによる障害」 → 予防の反対語は「動かすこと」!「ROM訓練(動かす)+体位変換(動かす)+離床(動かす)」の3つをセットで覚えましょう。
国試頻出ポイント:
脳卒中患者の廃用症候群予防は国試で超頻出です。特に「他動的ROM訓練」がキーワードで、誤答選択肢には「安静」「固定」「離床制限」が並びやすい。設問を読んだら「廃用予防=ROM訓練+早期離床」と即座に連想できるようになりましょう。
出題パターン注意!:
事例問題に発展した場合、「術後1日目の脳梗塞患者、左片麻痺あり。リハビリ開始のタイミングは?」といった形で、他動的ROM訓練から自動的ROM訓練、さらに坐位・立位訓練への段階的移行のタイミングが問われます。急性期であれば医師の指示がなくても実施可能な看護ケア(他動的ROM訓練)を選ぶのがポイントです。