核心解説
この問題は、
慢性腎不全 (Chronic Renal Failure) で維持透析中の患者に対する看護の適否を問うています。
血液透析 (Hemodialysis) に必須のバスキュラーアクセス(血管アクセス)であるシャント (Shunt / Arteriovenous Fistula; AVF)の管理と、
透析療法に伴う食事・水分・体重管理の知識が鍵となります。透析患者の生活全体を支える看護の視点が求められる問題です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は⑤番です。透析用のシャント(内シャント / 動静脈瘻)は、動脈と静脈を吻合して作られた血流が豊富で非常に脆弱な血管です。シャント肢での血圧測定や採血、輸液、過度な圧迫は、
シャントの閉塞や損傷、感染、出血のリスクを高めるため、絶対に避けなければなりません。これは血液透析患者の生命線であるシャントを守るための基本中の基本です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意!「シャント肢の安静は不要である」→ 誤りです。シャント肢は、患側の上肢であり、重い荷物を持つ、圧迫する、寝るときに下にするなどの行動は避け、安静を保つ必要があります。日常生活動作(ADL)においても注意深く管理します。
② 「水分摂取制限は設けない」→ 誤りです。透析患者は腎機能が廃絶しているため、尿量が著しく減少または消失します。体内の水分量が増加すると、
溢水 (Hypervolemia) による肺水腫や心不全を引き起こすため、厳格な水分制限が必要です。
③ 「体重増加は問わない」→ 誤りです。透析間の体重増加(ドライウェイト(目標体重)からの増加量)は、体内の水分貯留量を反映する最も重要な指標です。体重増加が大きすぎると、透析中の血圧変動(低下)や痙攣、除水困難の原因となります。体重管理は透析療法の根幹です。
④ 「カリウムの多い食品を積極的に摂取させる」→ 誤りです。腎不全ではカリウム排泄が障害されるため、
高カリウム血症 (Hyperkalemia) を来しやすく、致死性不整脈の原因となります。カリウムの多い食品(バナナ、オレンジ、芋類、ほうれん草など)は制限する必要があります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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シャント管理 (Shunt Care):視診(発赤、腫脹、疼痛、拍動の有無)、聴診(血管雑音の確認)、触診(スリル / 振動の確認)が毎日の観察項目です。シャント肢の保温、清潔保持も重要です。
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透析患者の食事療法:低たんぱく食、低食塩食、高カロリー食を基本とし、カリウム、リン、水分の制限が加わります。
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ドライウェイト (Dry Weight):透析終了時の目標体重。適正なドライウェイトの維持が、長期的な予後とQOLに直結します。
概念整理: 血液透析患者の看護の3本柱
1.
シャントの管理(生命線の保護)2.
食事・水分・体重管理(溢水・電解質異常の予防)3.
透析中のモニタリングと合併症予防(血圧変動、不均衡症候群など)
一目で比較!: 血液透析 vs 腹膜透析(CAPD)
| 項目 | 血液透析 (HD) | 腹膜透析 (CAPD) |
|---|
| アクセス | シャント(内シャント) | 腹膜カテーテル(テンコフカテーテル) |
| 管理場所 | 医療機関(透析室) | 自宅(患者自身または家族) |
| 看護の優先事項 | シャント保護、体重管理、血圧管理 | カテーテル感染予防(出口部感染、腹膜炎)、排液管理 |
| 食事制限 | 厳格(カリウム、リン、水分) | 比較的緩やか(たんぱく質はむしろ多く必要) |
看護過程ポイントアセスメント: シャントの状態(スリル/雑音)、バイタルサイン(血圧変動)、体重増加量、浮腫の有無、自覚症状(倦怠感、掻痒感、不眠)を毎日評価。
看護診断:
非効果的透析療法リスク状態、溢水リスク状態、栄養バランス異常:過剰/不足リスク状態計画: 患者・家族へのセルフケア教育(シャント自己管理、食事療法、体重記録)を含む。
評価: ドライウェイト達成度、シャント合併症の有無、検査値(BUN, Cr, K, P)の推移。
暗記のコツ: 「シャントは患者さんの命の道!触って(スリル)、聴いて(雑音)、見て(色・腫れ)、測らない(血圧・採血)!」
「カリウム制限は『バナナ、オレンジ、イモ、緑黄色野菜を控える』と覚える。」
国試頻出ポイント: シャント肢の禁忌行為(血圧測定・採血・輸液・注射・重いものを持つ)は毎年のように出題される超頻出項目。食事・水分制限の具体例も合わせて確認。
出題パターン注意!: 「透析患者の食事指導で適切なのはどれか」「シャント合併症の徴候と看護介入」などの選択問題や、「透析患者の体重増加が2kg、ドライウェイトは50kg。この患者の状態をアセスメントせよ」といった状況設定問題に発展します。