核心解説
この問題は、
グルカゴン負荷試験 (Glucagon Stimulation Test)の目的と患者への事前指導について問うています。本試験は、膵臓ランゲルハンス島のβ細胞が分泌するインスリンの予備能(分泌能)を評価するための負荷試験です。グルカゴンには肝臓での糖新生を促進し血糖を上昇させる作用があり、その刺激に対して膵臓からインスリンが適切に分泌されるかをみます。したがって、検査当日は他の食事や薬剤の影響を排除するために
絶食 (Fasting)とすることが必須です。よって、正解は①番です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
①
最重要! 検査当日は絶食とする。
グルカゴン負荷試験では、食事による内因性の血糖変動やインスリン分泌が検査結果に影響を与えるのを防ぐため、検査当日は
少なくとも8~12時間の絶食が必要です。患者には「検査前日の夕食以降は水のみ可」と説明します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②番:検査前日は高脂肪食を摂取する。
これは膵外分泌機能をみる
PFD試験 (Pancreatic Function Diagnostant Test)や、胆嚢収縮機能検査などの指示と混同しやすいポイントです。グルカゴン負荷試験では高脂肪食の摂取は不要であり、むしろ血糖値に影響を与えるため避けるべきです。
③番:検査後に高血糖を生じることはない。
誤り! グルカゴンは血糖上昇ホルモンです。投与後、
一過性の高血糖 (Transient Hyperglycemia)を生じることがあります。これは予測される生理的反応であり、通常は自然に改善しますが、糖尿病患者などでは高血糖が遷延するリスクがあるため、検査後の血糖モニタリングが重要です。
④番:検査前にインスリンを追加投与する。
絶対に避けるべき行為です。インスリンは血糖を下げるホルモンであり、追加投与すると負荷試験の前提である「グルカゴンによる血糖上昇刺激」が成立しなくなり、結果の解釈ができなくなります。通常、糖尿病患者でインスリンを使用している場合は、検査当日の朝のインスリンは原則として中止または減量の指示が出ます。
⑤番:検査中は安静にする必要はない。
誤り! 負荷試験中は自律神経系の影響を排除するため、また急な血糖変動による不快症状(動悸、冷汗、吐き気など)が出現する可能性があるため、
安静臥床 (Bed Rest)が必要です。
概念整理
| 負荷試験 | 評価対象 | 主要な患者準備 |
|---|
| グルカゴン負荷試験 | 膵β細胞のインスリン分泌予備能 | 絶食(前日夜から) |
| 75gOGTT | 耐糖能・インスリン抵抗性 | 絶食後、ブドウ糖75g経口負荷 |
| PFD試験 | 膵外分泌機能(消化酵素) | 検査食(高脂肪食)摂取後、尿中PABA測定 |
看護過程ポイント
アセスメント (Assessment): 検査前の血糖値、インスリンや経口血糖降下薬の使用状況を確認。
看護介入 (Intervention): 患者へ「なぜ絶食が必要か」「検査中は安静が必要か」をわかりやすく説明し、不安を軽減。検査後の低血糖・高血糖に備え、バイタルサイン (Vital Signs)と血糖値を定時モニタリングする。
評価 (Evaluation): 検査後の患者の全身状態(血糖値、意識レベル、自覚症状)が安定していることを確認する。
暗記のコツ
「グルカゴン = 血糖を上げるホルモン」とセットで覚えましょう。「負荷試験=絶食」が大原則です。膵臓の「外分泌(消化酵素)」を評価するのか、「内分泌(ホルモン:インスリン・グルカゴン)」を評価するのかを常に区別することが、類似問題を間違えない鍵です。
国試頻出ポイント
膵臓の機能検査(グルカゴン負荷試験、75gOGTT、PFD試験、血中膵酵素測定)の区別と、それぞれの検査に必要な患者準備(絶食、食事制限、安静)は頻出です。特に「検査前日の指示」と「検査当日の指示」を整理して覚えておきましょう。