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リハビリテーション看護
問題

脊髄損傷により対麻痺となった20歳の男性患者が、リハビリテーション訓練に積極的に参加するようになった。患者は「自分にできることを一つずつ増やしていきたい」と発言している。この患者の心理状態として最も考えられるのはどれか。

解説
障害受容過程の解決への努力期(適応期)は、患者が現実を受け入れ、残存機能を最大限に活用して新たな生活を再構築しようと努力する時期である。本患者は「自分にできることを一つずつ増やしていきたい」と発言しており、積極的にリハビリテーションに取り組む姿勢が見られるため、解決への努力期にあると考えられる。
同じテーマの次の問題脳卒中により左片麻痺と失語症を呈した65歳の男性患者が、リハビリテーション開始から2週間経過したが、訓練に対して消極的で「もう元のようには動けない」と発言することが多い。この患者の…

詳細解説

核心解説 この問題は、脊髄損傷 (Spinal Cord Injury) など重度の障害を受けた患者の心理的適応過程、すなわち障害受容 (Acceptance of Disability)のプロセスを問うています。看護師は患者が現在どの段階にいるのかをアセスメントし、その段階に応じた適切な心理的支援を提供する必要があります。障害受容のプロセスは段階的に進むとは限らず、行きつ戻りつしながら進むことを理解しておきましょう。 正解の根拠 (Answer Rationale)
患者は「自分にできることを一つずつ増やしていきたい」と能動的かつ前向きに発言しており、リハビリテーション訓練に積極的に参加しています。これは、残存機能を最大限に活用し、新しい生活様式を再構築しようとする段階であり、障害受容過程における最重要!解決への努力期(適応期)の典型的な行動です。この時期の患者は、現実を認識しつつも絶望せず、未来志向で目標を設定し、社会参加への意欲を示します。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 障害受容過程は、ショック期 → 否認期 → 混乱期(怒り・抑うつ) → 解決への努力期(適応期)と進むことが多いとされています。
①番の混乱期は、怒りや抑うつ、不安が強く、周囲への攻撃性や無気力がみられる時期です。積極的な訓練参加とは相反します。
②番のショック期は、障害を受けた直後で、感情が麻痺し、現実感がない状態です。
③番の否認期は、「自分は動けるはずだ」「間違いだ」と障害の事実を認めようとせず、訓練にも消極的になる時期です。
④番の依存期は、一般的な受容過程の用語として確立されておらず、混乱期の一部として無力感や依存行動がみられることがありますが、本患者の能動的な姿勢とは明らかに異なります。 関連概念の整理 (Related Concepts)
障害受容過程を理解する上で有名なモデルとして、キューブラー・ロス (Kübler-Ross) の死の受容過程(否認→怒り→取引→抑うつ→受容)がありますが、これは終末期の心理過程です。脊髄損傷などの重度障害では、このモデルを参考にした**障害受容過程**が用いられることが多いです。両者の類似点と相違点を押さえておきましょう。
概念整理 障害受容過程の各段階における患者の心理と行動の特徴をまとめます。
段階心理状態行動の特徴
ショック期感情の麻痺、茫然自失無反応、無表情
否認期現実逃避、「自分だけは大丈夫」過剰な楽観視、訓練拒否
混乱期(怒り・抑うつ)怒り、不安、無力感、悲嘆周囲への攻撃、過度な依存、不眠
解決への努力期(適応期)現実受容、未来志向積極的なリハビリ参加、自己決定、社会復帰への意欲

看護過程ポイント - アセスメント: 患者の言動(特に「~したい」「~できる」といった能動的表現か、「どうせ無理だ」といった否定的表現か)と、リハビリへの参加態度を観察します。 - 看護診断: 適応期では、非効果的対処 (Ineffective Coping) から 自己効力感向上 (Readiness for Enhanced Self-Efficacy) へと看護診断が変化します。 - 計画・実施: 患者の主体的な目標設定を支援し、成功体験を積み重ねられるよう、具体的な課題を段階的に設定します。心理的なサポートに加え、自助具の選定や環境調整も重要です。 - 評価: 患者自身が設定した目標の達成度と、QOL (Quality of Life) の主観的評価を確認します。
暗記のコツ 「ショックで否認し、混乱してから、やっと解決(適応)する」と語呂合わせで覚えましょう。「ショック・否認・混乱・解決」の順番は、多くの患者の心理的プロセスで共通しています。各段階で「患者が何を言っているか(発言)」と「何をしているか(行動)」をセットでイメージすると記憶に定着しやすいです。
国試頻出ポイント 国試では、患者の発言行動から心理的段階を推測する問題が頻出です。「できることを増やしたい」「この状態でどう生きていくか考えたい」という発言は適応期、「なぜ私だけが」「こんなはずじゃなかった」は混乱期(怒り)、「リハビリに行っても意味がない」は混乱期(抑うつ)や否認期と判別します。
出題パターン注意! 単純な段階の名称を問うだけでなく、「この患者への最も適切な看護介入はどれか」といった状況設定問題に発展することが多いです。例えば、否認期の患者には事実をゆっくりと繰り返し伝える支援が、混乱期の患者には感情表出の機会を設けることが適切となります。段階と看護介入を紐づけて学習しましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
30歳男性、交通事故による第6胸椎レベルの脊髄損傷(対麻痺)でリハビリテーション病院に転院。車椅子の自走と移乗動作を獲得し、退院後の就労について前向きに話すようになりました。しかし、夜間に「もう歩けない自分に何の価値があるのか」と涙ぐむ場面も見られます。看護師はどのように関わればよいでしょうか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
この患者は、基本的には解決への努力期にありますが、時折混乱期(抑うつ)の感情が再燃している状態です。これは非常に自然なプロセスであり、看護師は患者の揺れ動く感情を否定せず、その感情を表出できる安全な場を提供することが最優先です。
- 最重要! 「つらい気持ちを話してくれてありがとう。今はどんな気持ちですか?」と共感 (Empathy) をもって受け止めます。決して「前向きになりましょう」と励ますだけでは、患者は理解されないと感じる可能性があります。
- 具体的な目標(例:「職場の見学に行く」「趣味の道具を車椅子で使う方法を考える」)を患者と一緒に計画し、小さな成功体験を積み重ねられるように支援します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
混同注意! 解決への努力期だからといって、身体的な安全を軽視してはいけません。転倒・転落リスクは常にアセスメントが必要です。また、この時期の患者は過度に頑張りすぎて無理をすることがあり、褥瘡 (Pressure Ulcer) の悪化疲労骨折に注意が必要です。
看護プロトコル - 観察項目: 睡眠パターン、食欲、自殺念慮の有無(特に抑うつ感情が強い場合)、リハビリ後の疲労度、褥瘡の有無。 - 報告基準(SBAR): S(状況)「リハビリは順調ですが、夜間に抑うつの訴えがありました」、B(背景)「脊髄損傷後の適応過程で、解決への努力期と混乱期の揺れ戻しがみられます」、A(アセスメント)「感情のサポートと共に、無理のないペースでのリハビリ継続が必要です」、R(提案)「心理士へのコンサルテーションを検討してはいかがでしょうか」。 - 記録のポイント: 患者の発言(ポジティブな内容とネガティブな内容の両方)、リハビリへの参加状況、看護師の介入内容と患者の反応を具体的に記載します。
先輩看護師の一言 「障害受容は一直線の道じゃないんです。今日は『頑張る』と言っていても、次の日には『もう嫌だ』と泣いてしまうこともあります。大事なのは、患者さんの『今』の気持ちをそのまま受け止めること。『泣いていいんだよ』という言葉が、次の一歩を踏み出す力になることもあります。国試でも『この時期だからこの介入』と単純に覚えず、患者さんの揺れ動く心に寄り添う看護をイメージしてほしいですね!」

重要概念

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