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問題

金属アーク溶接作業に従事する労働者に発生する可能性が高い健康障害はどれか。

解説
金属アーク溶接では、亜鉛や銅などの金属酸化物のヒュームを吸入することで、金属熱(亜鉛熱)が発生することがある。症状は発熱、悪寒、筋肉痛などで、インフルエンザ様症状を示す。溶接作業では他にも紫外線による電撃性眼炎のリスクがある。
同じテーマの次の問題有機溶剤を取り扱う作業場で働く40歳の男性労働者。有機溶剤中毒の予防として最も重要なのはどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、金属アーク溶接 (Metal Arc Welding) という特定の作業環境に従事する労働者に生じる可能性が高い健康障害(職業性疾病)を問うています。溶接作業中に発生するヒューム(金属微粒子)の吸入が、どのような病態を引き起こすかを理解することが鍵となります。 1. 核心概念の分析 (Key Concept):
金属アーク溶接では、母材や溶接棒に含まれる亜鉛 (Zinc)、銅 (Copper)、マグネシウム (Magnesium) などの金属が、高温のアークによって気化し、空気中で冷却されて微細な酸化物の粒子(ヒューム)となります。このヒュームを吸入することが健康障害の直接の原因です。特に亜鉛含有量の高い材料(例: 亜鉛メッキ鋼板)の溶接で発生しやすいのが「金属熱」、別名「亜鉛熱 (Zinc Fume Fever)」です。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 正解は③番の金属熱 (Metal Fume Fever) です。
病態は、吸入された金属酸化物の微粒子が肺胞に到達し、好中球などの炎症細胞を活性化させ、発熱やインフルエンザ様症状を引き起こすと考えられています。
主な症状: 溶接作業から数時間後に出現する発熱、悪寒、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、口の中の金属味
通常は24~48時間で自然に軽快する一過性の疾患ですが、曝露を繰り返すと症状が重症化したり、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) のリスクが高まる可能性があります。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①番 電離放射線障害: 放射線業務や核燃料取扱い業務が該当します。溶接作業で発生するのは紫外線 (Ultraviolet Radiation) であり、これは電離放射線とは異なります(電離作用がなく、非電離放射線に分類)。
②番 珪肺 (Silicosis): 遊離珪酸 (Crystalline Silica) を含む粉じん(鉱山、採石、トンネル工事、窯業など)を長期間吸入することで発症する塵肺 (Pneumoconiosis) の一種です。溶接作業では、金属ヒュームが主ですが、酸化物の種類によっては「溶接工肺 (Welder's Lung)」を生じることもありますが、珪肺とは原因物質が異なります。
④番 有機溶剤中毒: 塗装、印刷、洗浄など、トルエン、キシレン、アセトン などの有機溶剤を取り扱う作業で発生します。溶接作業では、被塗装面の溶接(有機溶剤が残存している場合)以外では直接的な原因となりにくいです。
⑤番 熱中症 (Heat Stroke): 高温多湿環境での作業が原因です。溶接作業も高熱環境ではありますが、問題文の「金属アーク溶接」という作業内容から直接連想される特有の健康障害ではありません。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts):
溶接作業に伴うその他の健康障害として、紫外線による電撃性眼炎(アーク目、Welder's Flash) と、一酸化炭素 (CO) 中毒(換気不良の密閉空間での溶接)も併せて覚えておくと良いでしょう。これらは金属熱と並んで溶接作業の三大健康障害とも言われます。
概念整理: 職業性呼吸器疾患における原因物質の整理。
疾患名原因物質主な作業
金属熱亜鉛・銅などの金属酸化物ヒューム金属アーク溶接、ガス切断
珪肺遊離珪酸(結晶質シリカ)粉じん採鉱、採石、トンネル工事、窯業
じん肺(溶接工肺)鉄粉じん、金属ヒューム溶接、金属研磨
過敏性肺炎有機粉じん(カビ、鳥類の糞など)農業、鳥類飼育

一目で比較!: 職業病における症状の比較
項目金属熱インフルエンザ熱中症
原因金属ヒューム吸入インフルエンザウイルス高温環境
主症状発熱・悪寒・筋肉痛(作業数時間後)発熱・悪寒・咽頭痛(潜伏期あり)高体温・意識障害・皮膚乾燥
経過24~48時間で自然軽快(一過性)数日~1週間持続重症化すると生命危機
関連所見口の中の金属味鼻汁・くしゃみ発汗停止・脱水

看護過程ポイント: - アセスメント: 患者の職業歴(特に直近の作業内容・時間・換気状況)を聴取する。症状出現時間と作業時間のタイムラグ(数時間後)が重要。 - 看護診断: 「非効果的健康維持 (Ineffective Health Maintenance)」関連因子として職業性有害物質への曝露。 - 計画・介入: 症状は一過性であるが、重症化リスク(呼吸困難、持続する発熱)の観察が必要。患者教育として、局所排気装置の使用、保護マスク(防じんマスク)の適切な着用、作業環境の換気 の重要性を指導する。 - 評価: 症状が48時間以内に改善するか、再発防止策がとられているか。
暗記のコツ: 「金属の『湯気(ヒューム)』を吸うと、『風邪(熱)』をひく → 金属熱」とイメージすると覚えやすいです。特に亜鉛は「亜鉛メッキ(トタン板)」の溶接で有名なので、「亜鉛(Zn)→ Zの次はA?→ 熱 (Fever) のF」と連想しても良いでしょう。
国試頻出ポイント: 職業性疾病は、原因物質と作業内容の組み合わせが頻出です。溶接作業なら「金属熱」と「電撃性眼炎」、鉱山・トンネル工事なら「珪肺」、塗装作業なら「有機溶剤中毒」というように、定型パターンを押さえておけば得点源になります。また、症状がインフルエンザと類似するため、「作業歴の聴取」が鑑別の鍵となることも覚えておきましょう。
出題パターン注意!: 近年は単純な知識問題に加え、「事例問題」として出題されることがあります。例:「深夜、金属アーク溶接を行っていた作業員が、終業後に悪寒と発熱を訴えて救急外来を受診しました。看護師としてまず行うアセスメントはどれか?」というように、症状を目の前にした時の判断力を問う形式です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 50代男性、鉄骨製作工場で金属アーク溶接に従事。勤務終了3時間後、急な悪寒と38.5℃の発熱、全身の筋肉痛を訴えて来院。問診で「今日は亜鉛メッキされた鋼材を溶接していた」と話す。他に明らかな感染徴候(咽頭発赤、咳嗽、鼻汁)はなし。 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): - 観察: バイタルサイン(体温、脈拍、血圧、呼吸数、SpO2)を測定。口の中の「金属味」の有無を確認。呼吸音の聴取(喘鳴やラ音の有無)。 - アセスメント: 作業内容(亜鉛メッキ材の溶接)と症状出現のタイミング(作業後数時間)から、金属熱の可能性が高いと判断。感染症(インフルエンザ等)の可能性も考慮し、問診を深める。 - 報告: 医師にSBARで報告(S: 金属熱疑いの患者、B: 今日亜鉛メッキ材を溶接、A: 38.5℃の発熱・悪寒・筋肉痛・金属味、R: 経過観察と症状緩和の指示を仰ぎたい)。 - 介入: 安静、経口補水(発熱による脱水予防)、解熱鎮痛剤の投与(医師の指示に基づく)。症状は通常24~48時間で軽快することを説明し、不安を軽減する。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 注意! 金属熱は一過性とはいえ、高熱による脱水や、稀に呼吸困難を伴う場合がある。症状が改善しない、または増悪する場合は、他の疾患(肺炎、敗血症など)の可能性も考慮する。退院時には、再発防止のための作業環境の改善(局所排気装置の使用、適切な呼吸用保護具の選択)について指導する。
看護プロトコル: 職業歴(特に現在・過去の職種、作業内容、曝露物質)をカルテに必ず記載する。インフルエンザ様症状の患者では、必ず職業歴を確認する習慣をつける。発熱時は体温管理と脱水予防が最優先。
先輩看護師の一言: 「『溶接工が夕方になって急に熱を出したら金属熱』って、先輩から教わったんです。患者さんも『風邪ひいたかな?』って思って受診することが多いけど、作業内容を聞くだけで診断がグッと絞れます。職業歴の問診は、現場の看護師の腕の見せどころですよ!」

重要概念

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