核心解説
この問題は、
抗がん薬(抗癌剤 / Anticancer Drugs)の調製時における
職業曝露防止対策(Occupational Exposure Prevention)に関する知識を問うています。看護師は調製業務において、薬剤の飛散や針刺し事故による健康被害(発がん性、催奇形性など)を防ぐため、厳格な安全手順を遵守する必要があります。
最重要!「注射器のキャップ戻し(Recapping)」は、針刺し事故(Needlestick Injury)の主要な原因行為であり、
絶対に禁止されているため、不適切な対策となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
適切でないのは「⑤ 調製後は注射器のキャップを元に戻す」です。
針刺し事故防止(Needlestick Injury Prevention)の観点から、使用後の針には
絶対にキャップを戻してはならないと定められています。抗がん薬は特に危険薬(Hazardous Drug)に該当し、わずかな曝露でも発がんリスクが高まるため、キャップ戻し行為は最大のリスク行為となります。正しい手順は、キャップを戻さずにそのまま専用の鋭利廃棄物容器(Sharps Container)へ廃棄することです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 手袋は二重に着用する:
適切な対策です。抗がん薬調製時は、内側にラテックス手袋、外側に耐薬品性の高いニトリル手袋を二重に着用することで、万一の手袋破損時にも皮膚曝露を防ぎます。
② 調製作業後は手洗いを徹底する:
適切な対策です。手袋を外した後も、目に見えない微粒子が付着している可能性があるため、流水と石けんでの十分な手洗いが必須です。
③ ディスポーザブルの防護衣を着用する:
適切な対策です。不織布製のディスポーザブル防護衣(袖口がゴムで密閉されているタイプ)を着用し、調製作業後に速やかに廃棄することで、衣類への薬剤付着を防ぎます。
④ 安全キャビネット内で調製する:
適切な対策です。
安全キャビネット(Safety Cabinet / クラスII B2型など)は、HEPAフィルターと排気システムにより、薬剤のエアロゾルや粉塵が作業者に拡散するのを防ぎます。調製は必ずこの中で行います。
⑤ 調製後は注射器のキャップを元に戻す:
不適切な対策であり、正解です。前述の通り、針刺し事故のリスクを著しく高めるため、キャップ戻しは厳禁です。
概念整理:
抗がん薬調製の安全対策は「
個人防護具(PPE)の完全着用(手袋二重、防護衣、マスク、ゴーグル)」と「
閉鎖式薬物移送システム(Closed System Drug Transfer Device / CSTD)の使用」、「安全キャビネット内での作業」、「鋭利廃棄物容器への直行廃棄」の4本柱です。キャップ戻しは絶対に行わないという点は、国試で毎年のように問われる頻出事項です。
一目で比較!:
| 行為 | リスク | 適切な対策 |
|---|
| 注射器のキャップ戻し | 針刺し事故(最大のリスク) | 絶対禁止。キャップを戻さず鋭利廃棄物容器へ直行廃棄 |
| 針を抜いてシリンジと分離 | 薬液飛散・針刺しリスク | 分離せず、そのまま廃棄(安全キャビネット内で廃棄容器に投入) |
| 手袋の着脱 | 皮膚曝露 | 二重着用。外側の手袋は調製後すぐに廃棄し、内側はその後に外す |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: 看護師自身の曝露リスク(取り扱う薬剤の危険性、使用する器具・設備の整備状況)を常に評価する。
-
看護診断:
【危険性】職業曝露による健康障害のリスク(Risk for Injury related to handling of hazardous drugs)
-
計画・実施: 施設の危険薬取り扱いマニュアルに従い、曝露を最小限にする手技を徹底する。針刺し事故発生時の報告・対応手順も確認しておく。
-
評価: 定期的な環境モニタリングと、看護師への定期的な教育・トレーニングの実施状況を確認する。
暗記のコツ:
「
キケン!キャップ戻しは絶対ダメ!」とゴロで覚えましょう。針刺し事故の原因の多くがキャップ戻しであることを常に意識し、「使った針にはキャップを戻さない」が鉄則です。
国試頻出ポイント:
この問題は、
基礎看護学および
成人看護学(化学療法)の領域から、以下の観点で頻出です。
1. 「注射器のキャップ戻し」が適切か不適切かを直接問う形式。
2. 抗がん薬調製時の正しいPPE(個人防護具)の組み合わせを選ばせる形式。
3. 針刺し事故後の対応(血液曝露時の感染症検査・予防内服など)と組み合わせた事例問題。
出題パターン注意!:
「調製中に手袋が破れた場合の対応」や「曝露が生じた場合の緊急処置(大量の流水で洗浄、眼に入った場合は洗眼)」など、実践的な状況設定問題へ発展することが多いです。単なる知識暗記ではなく、「もし自分がその場面に遭遇したらどう行動するか」という視点で学習しておきましょう。