核心解説
この問題は、創傷管理における
感染の徴候 (Signs of Infection)を正しく評価する能力を問うています。創傷治癒過程において、感染の有無は治癒の遅延や全身状態の悪化に直結するため、
正確なアセスメント (Assessment)が看護師には不可欠です。感染の古典的な徴候は、
最重要!発赤 (Redness)・熱感 (Warmth)・腫脹 (Swelling)・疼痛 (Pain)・機能障害 (Loss of function)であり、創傷においてはこれに加えて
膿性滲出液 (Purulent Exudate)・悪臭 (Foul Odor)・創傷治癒の遅延が挙げられます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ①の「創部に発赤と熱感がある」は、
炎症反応 (Inflammatory Response)の代表的な局所所見です。感染症では、細菌の侵入に対して白血球(特に好中球)が遊走し、サイトカインが放出されることで血管が拡張し、血流が増加します。この結果、
発赤 (Rubor)と
熱感 (Calor)が生じます。これらは感染の最も初期かつ重要な徴候であり、創傷アセスメントの第一歩です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
②番:「創傷周囲の皮膚に色素沈着がある」は、
混同注意! 感染の徴候ではなく、むしろ慢性静脈不全や過去の炎症後の色素変化(ヘモジデリン沈着)を示唆する所見です。急性感染の評価には用いません。
③番:「滲出液が漿液性で無色透明である」は、
正常な創傷治癒過程における生理的滲出液です。感染がなければ、滲出液は透明または淡黄色の漿液性です。
④番:「創縁の色が淡いピンク色である」は、創傷治癒が順調に進行していることを示す所見です。上皮化が進んでいる状態であり、感染とは無関係です。
⑤番:「肉芽組織が鮮紅色で充実している」は、
良好な肉芽形成 (Good Granulation Tissue)の所見です。鮮紅色で表面がブツブツとした肉芽は、血流が豊富で創傷治癒が順調であることを示します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
創傷評価には、
創傷の局所評価と全身評価の統合が重要です。局所では感染徴候(発赤・熱感・腫脹・疼痛・膿性滲出液)とともに、創傷の大きさ・深さ・ポケットの有無・周囲皮膚の状態を評価します。全身評価では、発熱(Fever)、白血球増加、CRP上昇などの全身性炎症反応(SIRS)の有無も確認します。
混同注意! 創傷感染と「創傷治癒の正常な炎症期」は、発症時期と程度で鑑別します。正常な炎症期は術後24~48時間程度でピークを迎え、その後消退しますが、感染はそれ以降も持続または悪化します。
概念整理: 創傷感染の局所徴候は、炎症の古典的5徴候(発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害)に加え、膿性滲出液と悪臭です。これらは血管透過性亢進と白血球浸潤による反応です。
一目で比較!:
| 状態 | 創傷所見 | 滲出液 |
|---|
| 正常治癒 | 淡いピンク色の創縁 / 鮮紅色の肉芽 | 漿液性・透明~淡黄色 |
| 感染 | 発赤・熱感・腫脹・疼痛 | 膿性・黄色~緑色・悪臭 |
| 虚血 | 創縁が暗紫色・壊死組織 | 漿液性~血性・少量 |
看護過程ポイント:
アセスメント:創傷の感染徴候は毎回のドレッシング交換時に確認し、DESIGN-R®(日本褥瘡学会の評価ツール)の感染項目も参考にします。感染が疑われる場合、
創部培養検査 (Wound Culture)を医師に提案します。
計画:感染創の場合、適切な洗浄(生理食塩水など)と抗菌薬投与(全身または局所)が必要です。
介入:無菌操作の徹底、創周囲皮膚の保護、滲出液が多い場合は吸収性ドレッシング材を使用します。
暗記のコツ: 感染の徴候は「赤・熱・腫・痛・機能障」の「5徴候」と覚えましょう。また、「透明=正常、膿=感染」と滲出液の色で判断するのも基本です。
国試頻出ポイント: 創傷管理の問題では、「感染徴候」と「治癒の好ましい徴候」を対比して問うパターンが頻出です。特に、肉芽組織の色(鮮紅色=良好、暗赤色=感染疑い)や滲出液の性状は必ず押さえましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「術後3日目の創部に発赤と膿性滲出液を認めた場合の看護師の対応」といった状況設定問題(事例問題)で出題されます。この場合、感染の評価だけでなく、
医師への報告基準や、必要に応じた培養検査の実施判断も問われます。