核心解説
この問題は、
呼吸状態のアセスメント (Respiratory Assessment) における「視診 (Inspection)」の範囲を正しく理解しているかを問うています。看護過程におけるアセスメントの第一歩は系統的な観察(視診・触診・打診・聴診)であり、特に視診は侵襲がなく患者への負担が少ないため、最初に行うべき重要な観察方法です。視診で得られる情報は、その後の聴診や機器測定の解釈に役立つ基礎となります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
選択肢⑤「呼吸数、呼吸リズム、呼吸様式、胸郭の動き、チアノーゼの有無」は、すべて視診によって確認できる項目です。
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呼吸数 (Respiratory Rate): 1分間の呼吸回数を観察します。
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呼吸リズム (Respiratory Rhythm): 規則的か不規則か、
チェーンストークス呼吸 (Cheyne-Stokes Respiration) や
ビオー呼吸 (Biot's Respiration) などの異常パターンの有無を確認します。
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呼吸様式 (Breathing Pattern): 胸式呼吸か腹式呼吸か、どちらが優位かを観察します。
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胸郭の動き (Chest Wall Movement): 左右対称か、陥没呼吸(鎖骨上窩・肋間・剣状突起下の陥没)の有無を確認します。
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チアノーゼの有無 (Presence of Cyanosis): 口唇や爪床の色調変化を視診します。
これらはすべて看護師が目で見て評価できる項目であり、呼吸状態のスクリーニングとして極めて重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の「血圧値、心拍数、体温」はバイタルサイン (Vital Signs) の一部ですが、これらは測定器具を用いるか、触診(脈拍)が必要です。血圧は視診ではわかりません。
②番の「SpO2値、動脈血ガス分析結果、肺音の聴取」は、それぞれパルスオキシメーターや血液ガス分析装置、聴診器を用いるため、視診には該当しません。
③番の「呼吸音の左右差、気管の偏位」は、呼吸音は聴診、気管の偏位は触診で確認する項目です。
④番の「経皮的二酸化炭素濃度」は専用センサーを用いた測定値であり、視診では評価できません。「胸腹部の同期性、呼吸補助筋の使用」自体は視診で確認可能ですが、経皮的二酸化炭素濃度が視診に含まれるため誤りです。
関連概念の整理 (Related Concepts):
呼吸状態のアセスメントは、視診 → 触診 → 打診 → 聴診の順に行うのが基本です。視診で異常を発見した場合、その後のアセスメントをより焦点化することができます。また、視診で確認した呼吸数やリズムの異常は、
無気肺 (Atelectasis)、
肺炎 (Pneumonia)、
心不全 (Heart Failure) などの病態を疑う重要な手がかりとなります。
概念整理:
呼吸アセスメントの4つの基本手法:
1.
視診 (Inspection): 呼吸数、リズム、様式、胸郭の動き、チアノーゼ、痰の有無(視認できる場合)
2.
触診 (Palpation): 気管の偏位、胸郭の拡張の左右差、圧痛、皮下気腫
3.
打診 (Percussion): 肺野の共鳴音の変化(鼓音・濁音など)
4.
聴診 (Auscultation): 肺音(正常・異常呼吸音)、副雑音(ラ音・ wheeze など)
一目で比較!:
| 観察手法 | 視診で確認できる項目 | 視診では確認できない項目 |
|---|
| 呼吸数 | 胸郭の動きを目視でカウント | SpO2値、血液ガス分析値 |
| 呼吸リズム | 規則性、チェーンストークス呼吸などのパターン | 肺音の詳細、気管の位置 |
| 呼吸様式 | 胸式/腹式の優位、呼吸補助筋の使用 | 肺の含気量、酸素化能 |
| 胸郭の動き | 左右対称性、陥没呼吸の有無 | 気道分泌物の性状(痰の色・粘稠度) |
| チアノーゼ | 口唇・爪床の色調変化 | 血圧値、心拍数(触診が必要) |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 視診で得た情報(呼吸数30回/分、浅く速い呼吸、口唇チアノーゼ)から、
低酸素血症 (Hypoxemia) や
呼吸不全 (Respiratory Failure) の可能性を推測します。
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看護診断: 「非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern)」や「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」の診断を検討します。
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計画・実施: 視診で異常を認めた場合、直ちにパルスオキシメーターや聴診器を用いた詳細な評価、医師への報告を行います。酸素投与や体位変換(ファウラー位など)の準備をします。
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評価: 介入後の呼吸数、チアノーゼの改善、SpO2値の上昇を再評価します。
暗記のコツ:
呼吸状態の視診項目は「数(呼吸数)・リズム・様式・胸郭・チアノーゼ」と覚えましょう!「数リ様胸チ」と頭文字を取ると記憶に残りやすいです。また、「視診は『見る』だけ、聴診や機器測定は含まない」というルールを徹底しましょう。
国試頻出ポイント:
看護師国家試験では、「呼吸状態の観察項目」を問う問題は頻出です。特に「視診」「聴診」「触診」の各手法で何を確認するのかを混同しないように注意しましょう。また、事例問題で患者の呼吸状態を評価させる設問では、視診で異常を発見し、その後の対応(医師報告、酸素投与準備など)を問われるパターンが多いです。
出題パターン注意!:
単純な「視診項目を選べ」という知識問題だけでなく、「術後患者の呼吸状態をアセスメントする場面で、最初に行うべき観察はどれか」のような状況設定問題にも対応できるように、視診の優先順位とその根拠を理解しておきましょう。