核心解説
この問題は、
パルスオキシメータ (Pulse Oximeter) の測定原理を問うています。パルスオキシメータは、非侵襲的かつ簡便に動脈血酸素飽和度(
SpO2)を測定できる医療機器であり、看護師が日々のバイタルサイン測定で頻繁に使用する必須アイテムです。その原理を正しく理解することは、測定値の信頼性を評価し、患者の呼吸状態を適切にアセスメントするために極めて重要です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): パルスオキシメータの原理は、
酸化ヘモグロビン (Oxyhemoglobin) と還元ヘモグロビン (Deoxyhemoglobin) の光吸収特性の違いを利用しています。酸化ヘモグロビンは赤色光(波長約660nm)を吸収しにくく赤外光(波長約940nm)を吸収しやすいのに対し、還元ヘモグロビンはその逆の特性を持ちます。この差を利用して、動脈血中の酸素飽和度を算出しています。また、動脈血の拍動流に伴う透過光の変化(脈波)を検出することで、静脈血や組織の影響を除外しています。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ③番「酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光特性の差を利用する」が正解です。
最重要! 二種類の波長の光(赤色光と赤外光)を生体に照射し、透過光または反射光の吸光度変化を解析することで、SpO2を算出します。この原理を「分光光度法(Spectrophotometry)」と「脈波検出(Plethysmography)」の組み合わせと理解するとよいでしょう。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番:
混同注意! 二酸化炭素濃度の測定は、
経皮二酸化炭素分圧モニター (TcPCO2) や
呼気二酸化炭素濃度モニター (Capnometer) の役割です。パルスオキシメータは酸素飽和度のみを測定します。
- ②番: 動脈血酸素分圧(
PaO2: 80-100 Torr)は、
動脈血液ガス分析 (Arterial Blood Gas Analysis, ABG) で直接測定される値です。SpO2は酸素と結合したヘモグロビンの割合を示す指標であり、PaO2とは異なります(ただし両者は酸素解離曲線により関連します)。
- ④番: 赤外線のみではなく、
赤色光と赤外光の二波長を使用する点が重要です。単一波長では酸素飽和度を正確に算出できません。
- ⑤番: パルスオキシメータは動脈血の拍動流を利用して静脈血の影響を除去します。よって、測定対象はあくまで
動脈血酸素飽和度 であり、静脈血の酸素飽和度(
SvO2)は測定できません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): SpO2とPaO2の関係を表す
酸素解離曲線 (Oxygen-Hemoglobin Dissociation Curve) も併せて理解しておきましょう。この曲線は、SpO2が90%の時のPaO2は約60 Torr(
低酸素血症の目安)であることを示します。また、一酸化炭素中毒(CO中毒)では、SpO2値が実際の酸素飽和度より高めに表示される(偽高値を示す)という注意点も国試でよく問われます。
概念整理:
-
パルスオキシメータの原理: 分光光度法 + 脈波検出
-
使用波長: 赤色光(660nm)と赤外光(940nm)の二波長
-
測定対象:
動脈血酸素飽和度 (SpO2)
-
正常値:
96-100%(安静時、室内気吸入下)
-
注意点: 末梢循環不良、爪のマニキュア、メトヘモグロビン血症、一酸化炭素中毒などで誤差が生じる
一目で比較!:
| 指標 | 測定機器 | 測定対象 | 正常値(目安) |
|---|
| SpO2 | パルスオキシメータ | 動脈血酸素飽和度(機能的) | 96-100% |
| PaO2 | 動脈血液ガス分析装置 | 動脈血酸素分圧(溶解) | 80-100 Torr |
| SaO2 | 動脈血液ガス分析装置(計算値) | 動脈血酸素飽和度(機能的) | 95-98% |
| SvO2 | 肺動脈カテーテル(スワン・ガンツカテーテル) | 混合静脈血酸素飽和度 | 60-80% |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: SpO2低下時は、まずプローブの装着部位や循環状態を確認(末梢冷感、チアノーゼの有無)。波形の安定性も確認する。
-
看護診断:
「ガス交換障害 (Impaired Gas Exchange)」 または
「非効果的呼吸パターン (Ineffective Breathing Pattern)」
-
計画・介入: 酸素投与の指示確認、体位管理(ファウラー位など)、呼吸リハビリテーションの実施。
-
評価: SpO2目標値(例:90%以上、慢性呼吸器疾患では88-92%など)の達成度を確認。
暗記のコツ:
「パルス(脈波)オキシ(酸素)メータ(測定器)」と分解して覚えましょう。「赤い酸化ヘモ、赤外で還元ヘモ」とリズムで覚えると原理が頭に残りやすいです。
国試頻出ポイント:
- SpO2測定の原理そのもの(本問)
- SpO2値低下時の看護介入(酸素投与、体位変換、吸引など)
- 測定値に影響を与える因子(末梢循環障害、爪の色、炭酸ガスモニタとの混同)
- 酸素解離曲線との関連(特にP50の値や曲線のシフト)
出題パターン注意!:
近年の国家試験では、単純な知識問題に加え、「術後の患者のSpO2が88%に低下した。まず行うべきことは?」といった状況設定問題で出題されることが増えています。病態を考慮した優先順位を問われるため、「測定原理」だけでなく「測定値の解釈とそれに基づく行動」までを統合して学習しましょう。