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神経機能の障害
問題

80歳の女性が、数時間前から続く右半身の脱力と構音障害を主訴に来院した。症状は発症後2時間で完全に消失した。頭部MRI(拡散強調画像)では異常を認めなかった。この患者の状態として最も考えられる疾患はどれか。

解説
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳虚血による神経症状が24時間以内(通常1~2時間以内)に完全に消失する病態である。症状が一過性であり、MRI拡散強調画像で新鮮梗塞巣を認めないことからTIAと診断される。TIAは脳梗塞の前駆症状であり、早期の評価と治療が必要である。
同じテーマの次の問題65歳の男性が、突然の激しい頭痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診した。意識レベルはJCS II-20で、項部硬直を認める。この患者に最も疑われる疾患はどれか。

詳細解説

核心解説 この問題は、一過性脳虚血発作 (Transient Ischemic Attack, TIA) の定義と診断基準を理解しているかを問う典型的な国試問題です。最重要! 症状が24時間以内(特に1~2時間以内)に完全に消失し、画像検査で脳梗塞の痕跡を認めないことがTIAの最大の特徴です。この患者は「症状が2時間で消失」「MRI(拡散強調画像)で異常なし」という2つの条件を満たしており、TIAと判断されます。TIAは脳梗塞の強力な前駆症状であり、放置すると発症後90日以内に約10~20%が脳梗塞に移行するとされています。そのため、早期発見と原因精査、二次予防(抗血栓療法・生活指導)が極めて重要です。 正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢① 一過性脳虚血発作 (TIA) が正解です。TIAは、脳血管の一時的な閉塞や血流低下により神経症状を呈するものの、可逆的な虚血であるため症状は完全に回復します。診断の決め手は、①症状が24時間以内(典型的には1時間以内)に完全消失 し、②拡散強調画像(DWI)を含むMRIで新たな梗塞巣を認めない ことです。本症例は両方を満たしています。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②番の 脳塞栓症 (Cerebral Embolism) や⑤番の 脳血栓症 (Cerebral Thrombosis) は、いずれも 脳梗塞 (Cerebral Infarction) の病型であり、神経症状は通常24時間以上持続し、MRI-DWIで高信号(新鮮梗塞)が認められます。症状が一過性で画像異常がない本例では否定的です。
③番の 脳出血 (Cerebral Hemorrhage) と④番の くも膜下出血 (Subarachnoid Hemorrhage, SAH) は、頭部CTやMRIで出血所見が認められます。本例では画像異常を認めないため除外されます。また、脳出血では片麻痺などの神経症状が数時間~数日持続することが一般的で、一過性に消失することは稀です。 関連概念の整理 (Related Concepts)
TIAと鑑別すべき病態として、混同注意! 片頭痛 (Migraine) の前兆症状(閃輝暗点など)や てんかん (Epilepsy) の部分発作(ジャクソン発作など)があります。片頭痛は拍動性頭痛を伴い、てんかんは不随意運動や意識障害を伴うことが多い点が異なります。また、低血糖 (Hypoglycemia) でも一過性の片麻痺を呈することがあり(Todd麻痺類似)、血糖測定も重要です。 概念整理: 一過性脳虚血発作 (TIA) は「症状が24時間以内に完全消失する可逆的な脳虚血発作」であり、脳梗塞の前兆です。診断には 症状の経過と画像検査(特にMRI-DWI)の組み合わせ が不可欠です。
一目で比較!:
病態症状持続時間MRI-DWI頭部CT
TIA24時間以内(多くは1時間以内)異常なし異常なし
脳梗塞24時間以上持続・残存高信号(新鮮梗塞)発症数時間後から低吸収域
脳出血持続・進行性もあり出血による信号変化高吸収域(出血)

看護過程ポイント: アセスメント: 症状発症からの経過時間、症状の完全消失の確認、ABCD²スコア(年齢、血圧、症状、持続時間、糖尿病)を用いた脳梗塞発症リスク評価。計画: 早期の原因精査(頸動脈エコー、心電図、ホルター心電図など)と二次予防のための生活指導(禁煙、減塩、脂質管理)。実施: 抗血小板薬(アスピリンなど)の服薬指導と服薬アドヒアランスの確認。
暗記のコツ: 「TIAは24時間以内に完全消失する『脳梗塞の警告』」と覚えましょう。キーワードは「一過性=TIA」「持続性=脳梗塞」とイメージすると混同しにくいです。
国試頻出ポイント: 症状の持続時間と画像検査(特にMRI-DWI)の所見を組み合わせた問題が頻出です。TIAと脳梗塞の定義の違いを正確に押さえ、「TIAは脳梗塞の前駆症状であり、早期介入が必要」という点もよく問われます。
出題パターン注意!: 「60歳男性、右片麻痺と構音障害が出現したが、1時間後に消失。頭部MRIで異常なし。次のうち適切な対応は?」→「抗血小板薬の内服開始と生活指導」のように、TIAと診断した後の治療方針を問う発展問題に注意!

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
夜間の救急外来に、80歳女性が「さっきまで右手が動かず、ろれつが回らなかったが、今は治った」と来院。バイタルサインは安定、神経学的所見も正常。家族からは「1週間前にも一瞬、右足に力が入らなかったことがある」と情報提供がありました。看護師はどのようにアセスメントし、情報を医師に報告すべきでしょうか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察・情報収集: 症状の発症時刻、持続時間、症状の質(脱力・感覚障害・視覚障害など)、完全消失の有無、既往歴(高血圧、糖尿病、心房細動の有無)を詳しく聴取。2. アセスメント: 症状が一過性で消失している点からTIAを強く疑う。心房細動があれば心原性脳塞栓症のリスクが高い。3. 報告(SBAR): 「S(状況): 80歳女性、右片麻痺と構音障害が2時間で消失。B(背景): 高血圧と心房細動の既往あり。A(アセスメント): TIA疑い。R(提案): 緊急頭部MRIと心電図、血液検査を提案します。」4. 介入: 安静の確保、経過観察、必要時酸素投与。二次予防として抗血栓療法の準備。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
危険所見 TIA発症後は脳梗塞リスクが高いため、症状が再出現した場合の対応(すぐに受診するよう指導) が重要。転倒・転落予防のため、歩行時は付き添いが必要。抗血小板薬・抗凝固薬内服中の出血リスクにも注意(皮下出血、消化管出血の観察)。
看護プロトコル: 観察項目: バイタルサイン、神経症状の再出現の有無、心電図モニター(不整脈の有無)、服薬状況の確認。 記録のポイント: 症状の出現・消失時刻、症状の詳細(部位・性状)、画像検査の結果、医師への報告内容と指示。
先輩看護師の一言: 「『治ったから大丈夫』と思いがちですが、TIAはまさに『脳梗塞の前触れ』です!症状が消えていても、原因をしっかり調べて、患者さんに『次に症状が出たらすぐに救急車を呼ぶ』ことの重要性を伝えてくださいね。早期発見・早期介入で、重症の脳梗塞を防げるんです!」
疾病の成り立ちと回復の促進 488 問 · ログイン不要

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