核心解説
この問題は、
細胞内蓄積物質 (Intracellular Accumulation) の種類を問う基礎病理学の問題です。
肝細胞 (Hepatocytes) は代謝の中心的役割を担っており、様々な原因で物質が異常に蓄積すると、細胞障害を引き起こします。本問の核心は、
「中性脂肪 (Triglyceride)」が肝細胞に過剰に蓄積する病変を正確に特定することです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は②番の
脂肪変性 (Fatty Degeneration / Steatosis)です。
最重要! 脂肪変性とは、細胞質内に中性脂肪(トリグリセリド)が異常に貯留する病態であり、肝臓で最も高頻度に認められます。これを臨床的に
脂肪肝 (Fatty Liver)と呼びます。原因としては、アルコール多飲、肥満(メタボリックシンドローム)、糖尿病、薬剤性肝障害、飢餓状態などが挙げられ、近年では非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) への移行が問題視されています。
病態生理の鍵は、肝細胞内での脂肪酸の合成亢進、あるいはβ酸化(エネルギー代謝)の低下により、中性脂肪としての貯蔵が過剰になる点にあります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各変性は、蓄積する物質が異なります。病理組織像をイメージしながら整理しましょう。
①
アミロイドーシス (Amyloidosis):線維性タンパク質(アミロイド)が細胞外に沈着する病態であり、肝臓への蓄積もありますが、本問は「肝細胞内」への「中性脂肪」蓄積を問うているため不適切です。
③
水腫様変性 (Hydropic Degeneration):細胞内に水分と電解質が過剰に貯留する病態で、細胞障害の初期像です。実質臓器の虚血や中毒でみられます。蓄積物が「水」である点が中性脂肪とは全く異なります。
④
糖原変性 (Glycogen Degeneration):細胞内にグリコーゲンが異常に蓄積した状態です。糖尿病コントロール不良例や糖原病 (Glycogen Storage Disease) でみられます。
⑤
硝子滴変性 (Hyaline Droplet Degeneration):細胞内に均一なガラス様(硝子様)のタンパク質が蓄積する病変です。代表例として、腎尿細管上皮細胞にみられるタンパク尿の再吸収による硝子滴変性や、アルコール性肝障害でみられる
マロリー小体 (Mallory Body)が挙げられます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
この問題と関連して、以下の概念を同時に整理しておくと、類似問題で混乱しにくくなります。
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混同注意! 脂肪変性 (Steatosis) vs 脂肪壊死 (Fat Necrosis):脂肪変性は細胞内への蓄積ですが、脂肪壊死は細胞死に伴い脂肪が融解・遊離し、周囲組織に炎症を起こす病態(例:急性膵炎における大網の脂肪壊死)です。
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肝硬変 (Liver Cirrhosis) との連続性:高度な脂肪変性(脂肪肝)は、炎症(脂肪性肝炎)を経て肝線維化を引き起こし、最終的に肝硬変へと進行する可能性があります(NASHの病態)。これは臨床的にも重要なポイントです。
概念整理:
細胞内蓄積と主な物質
| 病変名 | 蓄積物質 | 代表的疾患/所見 |
|---|
| 脂肪変性 (Fatty Degeneration) | 中性脂肪 (Triglyceride) | 脂肪肝(アルコール性/非アルコール性) |
| 水腫様変性 (Hydropic Degeneration) | 水・電解質 | 細胞障害の初期像(虚血・中毒) |
| 硝子滴変性 (Hyaline Degeneration) | タンパク質 (Protein) | 腎尿細管(タンパク尿)、マロリー小体 |
| 糖原変性 (Glycogen Degeneration) | グリコーゲン (Glycogen) | 糖尿病、糖原病 |
| アミロイドーシス (Amyloidosis) | アミロイド (Amyloid / 線維性タンパク) | 細胞外沈着が主体、全身性/限局性 |
暗記のコツ:
「脂肪の肝臓」=「脂肪肝」で直結! 脂肪は「油」、肝臓は「あぶらの肝臓(脂肪肝)」とイメージしましょう。変性の名前は「蓄積している物質の名前」で覚えるのが簡単です。「水腫様=水」、「硝子滴=硝子のように見えるタンパク」、「糖原=糖(グリコーゲン)」、「アミロイド=アミロイドタンパク」です。
国試頻出ポイント: 細胞傷害と適応の分野では、このような「物質名と病変名の一致」が毎年1~2問程度出題されます。また、脂肪肝の原因(アルコール、肥満、糖尿病など)も合わせて問われることが多いです。