核心解説
この問題は、細胞死の形態学的分類である
壊死 (Necrosis)の種類とその特徴を問うています。特に「虚血や低酸素状態」「細胞の外形は保たれるが核が消失する」という記述が、
凝固壊死 (Coagulative Necrosis)の典型的な病態を指しています。これは、虚血により細胞内のタンパク質が変性・凝固することで、細胞の基本的な輪郭(外形)が一時的に保持される現象です。核は染色質の溶解により消失します(核融解)。
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢1の
凝固壊死 (Coagulative Necrosis)は、心筋梗塞や腎梗塞など、血流が途絶えた臓器で典型的に観察されます。虚血により細胞内pHが低下し、酵素(特にリソソーム酵素)の活性が阻害されるため、細胞構造の自己融解が抑制され、組織の硬さ(凝固状態)と細胞外形が保たれるのです。
最重要! この「外形が保たれる」という特徴は、他の壊死と鑑別する上で極めて重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
②
混同注意! 乾酪壊死 (Caseous Necrosis)は
結核 (Tuberculosis)に特徴的で、組織が崩壊してチーズ様の外観(黄色・粥状)を呈します。細胞構造は完全に破壊され、外形は保たれません。融合した類上皮細胞とラングハンス巨細胞が特徴です。
③
融解壊死 (Liquefactive Necrosis)は、細胞が酵素により完全に融解・液化する壊死で、脳梗塞や膿瘍にみられます。細胞外形は保たれず、融解した液体が貯留します。
④
脂肪壊死 (Fat Necrosis)は、脂肪組織がリパーゼにより分解される特殊な壊死で、急性膵炎や外傷による脂肪組織損傷でみられます。ケン化により白亜様の病変を形成します。
⑤
壊疽 (Gangrene)は、壊死が進行して腐敗菌の二次感染を伴い、組織が黒色・乾燥(乾性壊疽)または湿潤・悪臭(湿性壊疽)を呈する状態です。細胞外形は保たれません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
| 壊死の種類 | 典型例 | 特徴 |
|---|
| 凝固壊死 | 心筋梗塞、腎梗塞 | 細胞外形保持、タンパク凝固 |
| 融解壊死 | 脳梗塞、膿瘍 | 細胞融解・液化、外形消失 |
| 乾酪壊死 | 結核 | チーズ様、崩壊、外形消失 |
| 脂肪壊死 | 急性膵炎 | 脂肪分解、白亜様 |
概念整理: 壊死は細胞死の一形態で、細胞が障害を受けて不可逆的に死滅するプロセスです。凝固壊死の本質は「虚血によるタンパク質の変性・凝固」であり、これにより細胞の輪郭が一時的に残存します。一方、核は必ず消失(核融解、核崩壊、核濃縮)します。
一目で比較!: 凝固壊死 vs 融解壊死。前者は「固まる(凝固)」、後者は「溶ける(融解)」と覚えましょう。凝固壊死は心臓や腎臓などの固い臓器、融解壊死は脳などの柔らかい臓器に多い。
看護過程ポイント: アセスメントでは、臓器特異的な壊死の種類を理解し、それに応じた全身状態の観察(例えば心筋梗塞では心電図モニタリング、腎梗塞では尿量や血清クレアチニンのモニタリング)を計画します。
暗記のコツ: 「コアギュレーション(凝固)で固まるコアギュレイティブ。外形はそのまま残るけれど、核は消える。」と語呂合わせで。
国試頻出ポイント: 壊死の分類は病理学の基礎として頻出です。特に「心筋梗塞でみられる壊死は凝固壊死」という知識は必須。
出題パターン注意!: 「組織の外形が保たれる壊死はどれか」という直接的な知識問題から、事例問題「心筋梗塞患者の心筋組織にみられる壊死はどれか」へと発展します。