核心解説
この問題は、
老化 (Aging) に伴う身体機能の生理的変化を正しく理解しているかを問うています。老化は全身の臓器や組織に不可逆的な変化をもたらし、特に代謝・呼吸・循環・排泄・骨格系に特徴的な変化が現れます。誤っている選択肢は「基礎代謝量が増加する」です。実際には、加齢により
基礎代謝量 (Basal Metabolic Rate, BMR) は減少します。これは、筋肉量(除脂肪体重)の減少と、肝臓や腎臓などの主要臓器の代謝活性が低下することが主な原因です。他の選択肢はすべて老化による生理的変化として正しい記述です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、「加齢による正常な生理的変化」の理解です。看護師国家試験では、正常老化と病的変化(疾患)を区別する能力が頻繁に問われます。老化に伴う変化は、多くの臓器で「予備力 (Reserve Capacity)」の低下として現れます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は①番「基礎代謝量が増加する」です。
最重要! 基礎代謝量は加齢とともに減少します。20~30歳をピークに、その後は徐々に低下し、70歳代では若年期と比較して約10~20%減少します。この減少は、筋肉量の減少(サルコペニア)と密接に関連しています。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ②番「肺活量が減少する」:
混同注意! これは正しい変化です。加齢により、肺胞壁の弾性が低下し、呼吸筋力も低下するため、肺活量 (Vital Capacity) は減少します。一方、残気量 (Residual Volume) は増加します。
- ③番「最大心拍出量が減少する」: 正しい変化です。加齢に伴い、心筋のコンプライアンスが低下し、心拍出量 (Cardiac Output) の予備力が減少します。特に運動時の最大心拍出量は顕著に低下します。
- ④番「骨密度が減少する」: 正しい変化です。特に閉経後の女性ではエストロゲン減少により骨吸収が亢進し、骨密度 (Bone Mineral Density) は顕著に減少します。男性でも緩徐に減少します。
- ⑤番「腎血流量が減少する」: 正しい変化です。加齢により腎血管の硬化が進行し、腎血流量 (Renal Blood Flow) は減少します。その結果、クレアチニンクリアランス (Creatinine Clearance) も低下します。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 老化に伴う代謝変化として、基礎代謝量の減少に加え、
耐糖能 (Glucose Tolerance) の低下も重要です。また、薬物動態にも影響し、
薬物の分布容積と排泄速度 が変化するため、高齢者への薬物投与量には注意が必要です(ポリファーマシー問題)。
概念整理: 加齢に伴う身体機能の変化は、多くの臓器で「機能低下」が生じます。基礎代謝量・肺活量・最大心拍出量・腎血流量・骨密度はすべて加齢により低下または減少します。例外として、
残気量 (Residual Volume) や
収縮期血圧 (Systolic Blood Pressure) は加齢により上昇する傾向があります。
一目で比較!:
| 項目 | 加齢による変化 | 主な原因 |
| 基礎代謝量 | 減少 | 筋肉量減少、臓器代謝活性低下 |
| 肺活量 | 減少 | 肺弾性低下、呼吸筋力低下 |
| 最大心拍出量 | 減少 | 心筋コンプライアンス低下、交感神経反応性低下 |
| 骨密度 | 減少 | 骨吸収亢進(特に閉経後女性) |
| 腎血流量 | 減少 | 腎血管硬化、糸球体数減少 |
看護過程ポイント: 高齢者の看護アセスメントでは、「老化による正常な変化」と「疾患による異常な変化」の鑑別が重要です。例えば、高齢者の活動時息切れが、単なる肺活量減少によるものか、
心不全 (Heart Failure) や
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) によるものかを、バイタルサイン (Vital Signs) や身体所見から総合的にアセスメントします。
暗記のコツ: 「老いては下がる」と覚えましょう!基礎代謝、肺活量、心拍出量、腎血流量、骨密度など、多くの「量・能」は加齢で低下します。逆に「上がるもの(血圧、残気量、前立腺肥大など)」と対比して覚えると混同しにくいです。
国試頻出ポイント: この問題は、老年看護学の基本であり、毎年必ずどこかの大問で出題されます。単純な知識問題としてだけでなく、「高齢者の術後管理」や「薬物療法」の事例問題の中で、加齢変化を考慮した看護計画を問う形でも頻出です。
出題パターン注意!: 例えば、「75歳の男性。肺炎で入院。腎機能低下を考慮して薬剤の投与量調整が必要」という状況設定問題に発展します。加齢による腎血流量減少とクレアチニンクリアランス低下の知識が、薬剤選択と投与量の根拠となります。