脂肪酸のβ酸化が行われる細胞内小器官と、その過程で産生される物質の組み合わせで正しいものはどれか。 | MyMerci
代謝
問題

脂肪酸のβ酸化が行われる細胞内小器官と、その過程で産生される物質の組み合わせで正しいものはどれか。

解説
脂肪酸のβ酸化は主にミトコンドリアマトリックスで行われる。この過程では、脂肪酸が2炭素単位ずつ切断され、アセチルCoAが生成される。同時に、電子伝達系に供給されるFADH2とNADHも産生される。NADPHは主にペントースリン酸経路や脂肪酸合成で産生される。GTPはクエン酸回路で産生される。滑面小胞体やペルオキシソームでもβ酸化の一部が行われるが、主要な場はミトコンドリアである。

詳細解説

核心解説 この問題は、脂肪酸のβ酸化 (Beta-oxidation of Fatty Acids) の主要な場と産生物を問うています。β酸化は、脂肪酸からエネルギーを効率的に産生するための重要な代謝経路です。最重要! 主要な反応の場は ミトコンドリアマトリックス (Mitochondrial Matrix) であり、脂肪酸は1サイクルごとに2炭素単位(アセチルCoA)に切断され、同時に FADH2NADH が産生されます。これらの還元型補酵素は、電子伝達系でATP産生に利用されます。 正解の根拠 (Answer Rationale)
③が正解です。脂肪酸のβ酸化は主にミトコンドリアマトリックスで行われ、アセチルCoA、FADH2、NADHが生成されます。
- アセチルCoA (Acetyl-CoA): β酸化の直接の産物で、クエン酸回路(TCA回路)へと運ばれ、さらなるATP産生に利用されます。
- FADH2 (Flavin Adenine Dinucleotide, reduced): β酸化の第一脱水素反応で産生され、電子伝達系の複合体IIに電子を渡します。
- NADH (Nicotinamide Adenine Dinucleotide, reduced): β酸化の第二脱水素反応で産生され、電子伝達系の複合体Iに電子を渡します。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! - ① 細胞質基質 - アセチルCoAとNADPH: NADPHは主にペントースリン酸経路 (Pentose Phosphate Pathway)脂肪酸合成 (Lipogenesis)で産生されます。β酸化ではNADPHは産生されません。
- ② ペルオキシソーム - アセチルCoAとGTP: ペルオキシソームでもβ酸化の一部(特に長鎖脂肪酸)が行われますが、主要な場はミトコンドリアです。また、GTPはクエン酸回路(TCA回路)の基質レベルリン酸化で産生されるもので、β酸化では産生されません。
- ④ 滑面小胞体 - アセチルCoAとNADH: 滑面小胞体は脂質合成 (Lipid Synthesis)薬物代謝 (Drug Metabolism)の場であり、β酸化の主要な場ではありません。
- ⑤ ゴルジ装置 - アセチルCoAとATP: ゴルジ装置はタンパク質の修飾・輸送 (Protein Modification and Sorting)に関与し、β酸化とは無関係です。 関連概念の整理 (Related Concepts)
- 脂肪酸合成 (Lipogenesis) との違い: 脂肪酸合成は細胞質基質で行われ、NADPHを消費し、アセチルCoAから脂肪酸を合成します。β酸化とは逆の経路です。
- ケトン体生成 (Ketogenesis): β酸化で過剰に産生されたアセチルCoAは、肝臓のミトコンドリアでケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)に変換されます。これは飢餓時や糖尿病性ケトアシドーシスで重要です。 概念整理 - β酸化の場: ミトコンドリアマトリックス(主要)、ペルオキシソーム(極長鎖脂肪酸の初期分解) - β酸化の産生物: アセチルCoAFADH2NADH - β酸化のエネルギー収支: 1サイクルでアセチルCoA 1分子、FADH2 1分子、NADH 1分子。パルミチン酸(C16)の場合、7サイクルでアセチルCoA 8分子、FADH2 7分子、NADH 7分子。 一目で比較!
代謝経路主要な細胞内小器官主な産生物
β酸化 (β-Oxidation)ミトコンドリアマトリックスアセチルCoA, FADH2, NADH
脂肪酸合成 (Lipogenesis)細胞質基質脂肪酸, NADP+ (NADPHを消費)
ペントースリン酸経路細胞質基質リボース5-リン酸, NADPH
クエン酸回路 (TCA回路)ミトコンドリアマトリックスCO2, GTP, FADH2, NADH
看護過程ポイント 看護師が直接β酸化の過程を観察することはありませんが、エネルギー代謝の破綻に関連した病態を理解する上で重要です。 - アセスメント: 糖尿病患者のケトアシドーシス(ケトン体上昇)や、飢餓状態の患者のエネルギー不足は、β酸化の亢進を示唆します。低血糖や高脂血症の患者の代謝状態を評価する際の基礎知識となります。 - 看護介入: エネルギー消費の大きい患者(手術後、熱傷、感染症など)では、十分な栄養補給(特に糖質と脂質)の必要性をアセスメントし、経腸栄養や中心静脈栄養の管理を行います。 暗記のコツ - 「β(ベータ)」は脂肪酸のβ炭素(カルボキシ基から2番目の炭素)が酸化されることに由来します。 - 「ミトコンドリア」は「エネルギー工場」と覚えましょう。β酸化はこの工場で行われ、FADH2とNADHという「電子バッテリー」を生み出します。 - 脂肪酸合成(Lipogenesis)は「合成」→「細胞質(細胞の貯蔵庫)」→「NADPH(合成に使う還元力)」と連想します。 国試頻出ポイント - β酸化の場(ミトコンドリア)と産生物(アセチルCoA, FADH2, NADH)は、生化学の基本問題として頻出です。 - 脂肪酸合成(NADPH消費)、解糖系(NADH産生)、クエン酸回路(GTP産生)など、他の代謝経路との比較問題が出題されやすいです。 - 最重要! 過去問では「脂肪酸のβ酸化が行われるのはどれか」「β酸化で産生されないのはどれか」といった形でよく問われています。 出題パターン注意! - 基本パターン: 「β酸化が行われる細胞小器官を選べ」「β酸化で生成される物質を選べ」
- 応用パターン: 「糖尿病性ケトアシドーシスの患者で亢進している代謝経路はどれか」のように、病態と関連付けた出題にも対応できるよう、β酸化の生理的意義(飢餓時のエネルギー供給)まで理解しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド この問題の知識は、以下のような臨床場面で役立ちます。 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
「70代女性、2型糖尿病 (Type 2 Diabetes Mellitus) でインスリン治療中。感冒症状から食事摂取が不良となり、高血糖と脱水状態で救急搬送。動脈血液ガス分析でpH 7.20、HCO3- 10mEq/L、アニオンギャップ上昇。尿中ケトン体強陽性。糖尿病性ケトアシドーシス (Diabetic Ketoacidosis, DKA) と診断されました。看護師は、この患者さんの体内でどのような代謝異常が起きているかをアセスメントする必要があります。」 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
- 観察 → アセスメント: インスリン欠乏状態では、細胞への糖取り込みが阻害され、エネルギー源として脂肪酸のβ酸化が亢進します。その結果、アセチルCoAが過剰産生され、肝臓でケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)に変換されます。ケトン体は酸性物質であり、血液を酸性に傾け(代謝性アシドーシス)、動脈血pH低下、HCO3-低下を引き起こします。
- 報告 → 介入: 医師にSBARで報告します。Situation: 「糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんです。」Background: 「感冒で食事摂取不良、インスリン自己中断。」Assessment: 「アシドーシスあり、尿ケトン体強陽性。」Recommendation: 「輸液とインスリン持続静注の開始が必要です。」
- 看護介入: 医師の指示のもと、生理食塩液の急速輸液インスリン持続静注(レギュラーインスリン)を開始します。β酸化を抑制し、ケトン体産生を減少させることが治療の目的です。血糖値、電解質(K+)、動脈血液ガス、尿ケトン体の頻回モニタリングが不可欠です。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 最重要! インスリン投与により細胞内へのK+取り込みが促進されるため、低カリウム血症 (Hypokalemia)に注意が必要です。心電図モニター(U波出現など)を観察し、補正の準備をします。
- 輸液量が多くなるため、心不全 (Heart Failure)のリスクがある高齢者では、肺うっ血の有無(呼吸音、SpO2、頸静脈怒張)を慎重に観察します。 看護プロトコル - 観察項目: バイタルサイン(特に呼吸数と深さ:Kussmaul呼吸の有無)、意識レベル、血糖値(1時間毎)、電解質(2-4時間毎)、動脈血液ガス(2-4時間毎)、尿量、ケトン体(血中/尿中)、心電図モニター。 - 報告基準(SBAR): 血糖値が改善しない、またはアシドーシスが進行する場合、低K+血症(5.5mEq/L)を認めた場合、意識レベルが低下した場合は直ちに医師へ報告。 先輩看護師の一言 「『β酸化』というと難しい生化学の話に聞こえますが、臨床ではDKAや飢餓状態の患者さんの状態を理解するために欠かせない知識です。『インスリンが足りない → ブドウ糖が使えない → 脂肪を分解してエネルギーを作る(β酸化) → ケトン体がたまる → アシドーシス』というストーリーで覚えておくと、国試の勉強も現場のケアもつながりますよ!」

重要概念

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