核心解説
この問題は、
解糖系 (Glycolysis) におけるATP産生のメカニズムを理解しているかを問うものです。解糖系は、グルコース1分子をピルビン酸2分子に分解する過程で、
基質レベルのリン酸化 (Substrate-Level Phosphorylation) によりATPを産生します。正味のATP産生量は2分子ですが、各反応段階での産生量を比較する問題です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①番、
ホスホエノールピルビン酸 (PEP) からピルビン酸への変換 です。この反応は
ピルビン酸キナーゼ (Pyruvate Kinase) によって触媒され、1分子のPEPから1分子のATPが産生されます。グルコース1分子からはピルビン酸が2分子生成されるため、この段階は計2回行われ、合計2分子のATPを産生します。これは解糖系全体の正味のATP産生量(2分子)に直接貢献する最終段階であり、
最重要! 最も多くのATPを産生する段階の一つです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
②番の
1,3-ビスホスホグリセリン酸から3-ホスホグリセリン酸への変換 もATP産生段階ですが、この反応は1分子のグルコースから2回行われ、合計2分子のATPを産生します。正味の産生量は①と同程度ですが、問題文は「最も多く産生される段階」を問うており、①の反応も同等の産生量を持つため、厳密には「最も多い」とは言い切れませんが、標準的な解説ではピルビン酸キナーゼ反応が該当します。③番の
グリセルアルデヒド-3-リン酸から1,3-ビスホスホグリセリン酸への変換 はNADHを産生する段階であり、ATPは産生されません。
混同注意! ④番の
グルコースからグルコース-6-リン酸への変換 と⑤番の
フルクトース-1,6-ビスリン酸の開裂 は、いずれもATPを消費する反応(エネルギー投資段階)です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
解糖系全体の収支を整理しましょう。投資段階で2分子のATPを消費し、産生段階で4分子のATPを産生するため、正味2分子のATPが得られます。産生段階は、
ホスホグリセリン酸キナーゼ (Phosphoglycerate Kinase) による②の反応と、ピルビン酸キナーゼによる①の反応の2カ所です。どちらも2分子ずつ産生するため、問題文の意図としては「正味の産生量」ではなく「1回の反応あたりのATP産生量」あるいは「最終段階」を意識した出題と考えられます。また、解糖系全体ではATPの他に
NADH も2分子産生されることも併せて覚えておきましょう。
概念整理
| 段階 | 酵素 | ATP産生/消費 | 補酵素 |
|---|
| グルコース→G6P | ヘキソキナーゼ | 消費2ATP (全体) | - |
| F6P→F1,6BP | ホスホフルクトキナーゼ-1 | 消費 (上記に含む) | - |
| GAP→1,3-BPG | GAPデヒドロゲナーゼ | 産生なし | NADH産生 |
| 1,3-BPG→3-PG | ホスホグリセリン酸キナーゼ | 産生2ATP (全体) | - |
| PEP→ピルビン酸 | ピルビン酸キナーゼ | 産生2ATP (全体) | - |
一目で比較!
混同注意! 解糖系のATP産生段階は2カ所(ホスホグリセリン酸キナーゼ反応とピルビン酸キナーゼ反応)ありますが、どちらもグルコース1分子あたり2分子のATPを産生します。一方、
クエン酸回路 (TCA Cycle) や
電子伝達系 (Electron Transport Chain) では、NADHやFADH2を介して大量のATP(約34分子)が産生されるため、解糖系単独のATP産生量は少ないことを理解しましょう。
暗記のコツ
「解糖系のATP産生は、
『PEPからピルビン酸』と『1,3-BPGから3-PG』 の2カ所!ピルビン酸キナーゼは『最終段階』で『基質レベルのリン酸化』の代表例」と覚えましょう。語呂合わせ:「
ピルビン酸キナーゼ、最後にATPをゲット!」
国試頻出ポイント
解糖系のATP産生量や各酵素の名称は、
生化学 や
病態生理 の基礎として頻出です。特に、
嫌気的代謝 や
乳酸アシドーシス (Lactic Acidosis) との関連で出題されることが多いため、解糖系の最終産物がピルビン酸であり、無酸素状態では乳酸に変換される流れも合わせて学習しましょう。
出題パターン注意!
単純な知識問題として「ATP産生段階はどれか」が出題される他、事例問題で「
低酸素状態 の患者で解糖系が亢進し、乳酸が蓄積する機序」を問う発展問題にも対応できるようにしておきましょう。