核心解説
この問題は、
ABO式血液型 (ABO Blood Group System) における赤血球表面抗原の基本的な知識を問うものです。血液型は、赤血球膜上に存在する糖鎖抗原(A抗原・B抗原)の有無によって分類されます。この分類を理解することは、輸血療法 (Blood Transfusion) における
交差適合試験 (Crossmatching) や
輸血副作用 (Transfusion Reaction) の予防のために極めて重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
A型の赤血球表面には
A抗原 (A Antigen) が存在します。これは、遺伝子によって決定される糖転移酵素の働きにより、前駆物質であるH抗原にN-アセチルガラクトサミンが付加されることで形成されます。血漿中には対応する抗体として
抗B抗体 (Anti-B Antibody) を持ち、B型の赤血球と反応して凝集を起こすため、輸血時には注意が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①
A抗原もB抗原もなし:これは
O型 (Type O) の特徴です。O型の赤血球にはA抗原もB抗原も存在せず、H抗原のみが豊富に存在します。
②
A抗原とB抗原の両方:これは
AB型 (Type AB) の特徴です。AB型の赤血球にはA抗原とB抗原の両方が存在し、血漿中には抗A抗体も抗B抗体も持たないため、理論上はどの血液型からも輸血を受けられます(万能受血者)。
③
B抗原:これは
B型 (Type B) の特徴です。B型の赤血球表面にはB抗原が存在し、血漿中には抗A抗体を持ちます。
④
H抗原のみ:これは上記①の通りO型の特徴ですが、厳密にはO型の赤血球表面にはH抗原が最も多く存在します。A型やB型の赤血球でもH抗原は存在しますが、A抗原やB抗原に変換されるためO型ほど多くはありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ABO式血液型に加えて、
最重要! Rh式血液型 (Rh Blood Group System) も併せて覚えましょう。Rh(D)抗原の有無でRh陽性・陰性が決まります。Rh陰性の人がRh陽性の血液を輸血されると、抗D抗体を産生し、次回の輸血や妊娠(新生児溶血性疾患)で問題を引き起こす可能性があります。ABO式とRh式は、輸血前の必須検査項目です。
概念整理
| 血液型 | 赤血球表面抗原 | 血漿中抗体 |
|---|
| A型 | A抗原 | 抗B抗体 |
| B型 | B抗原 | 抗A抗体 |
| AB型 | A抗原とB抗原の両方 | なし |
| O型 | なし(H抗原が多い) | 抗A抗体と抗B抗体の両方 |
一目で比較!
ABO式血液型の抗原と抗体の関係は、
「自分が持っていない抗原に対する抗体を必ず持っている」というルールで覚えましょう。これが輸血の大原則です(A型ならB抗原を持たないので抗B抗体を持つ)。
看護過程ポイント
輸血療法の看護では、
アセスメント として患者の血液型を確認し、医師の指示と照合します。輸血開始後は
溶血性副作用 (Hemolytic Transfusion Reaction) の兆候(発熱、悪寒、腰痛、血尿、血圧低下など)を観察します。
暗記のコツ「A型はA(抗原)、B型はB(抗原)」と、型名と抗原を一致させるだけで覚えられます。O型は「Zero(0)」と覚え、抗原がゼロであるとイメージすると良いでしょう。
国試頻出ポイント血液型と抗原・抗体の組み合わせは毎年出題される基本知識です。単純暗記だけでなく、
「なぜA型の人はB型の血液を輸血できないのか?」という病態生理的な理由(抗B抗体による凝集反応)まで理解しておくことが、応用問題に対応する鍵です。
出題パターン注意!近年の国家試験では、単純な知識問題(本問のような)に加えて、「手術前に交差適合試験を実施する目的は何か」や「輸血中に患者に悪寒が出現した場合の看護師の対応」といった状況設定問題に発展して出題されることが多いです。基礎知識を確実にした上で、臨床での応用力を養いましょう。