核心解説
この問題は、
血液凝固と線溶系 (Coagulation and Fibrinolysis System) における各因子の役割を問うています。特に、形成された血栓を溶解する最終段階の酵素を正しく理解することが鍵となります。
最重要! 正解は
プラスミン (Plasmin) です。プラスミンは、
フィブリン (Fibrin) を直接分解して
フィブリン分解産物 (FDPs; Fibrin Degradation Products) とし、血栓を溶解する線溶系の中心的な酵素です。プラスミンは、前駆体である
プラスミノーゲン (Plasminogen) が、組織プラスミノーゲンアクチベーター (t-PA; Tissue Plasminogen Activator) などの活性化因子により変換されて生成されます。この作用を利用した治療薬が、t-PA製剤(アルテプラーゼなど)で、急性心筋梗塞や脳梗塞の血栓溶解療法に用いられます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
プラスミンは、線溶系の最終段階でフィブリンを分解する唯一の酵素です。血管内で不必要に形成された血栓や、創傷治癒後に不要となったフィブリン塊を除去し、血管の開存性を維持する上で極めて重要な役割を果たします。つまり、
「血栓を溶かす」 作用がプラスミンです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各選択肢の作用を整理します。
①
トロンボキサンA2 (Thromboxane A2):
血小板凝集促進 と血管収縮作用を持ち、止血の初期段階で重要です。線溶とは逆方向の作用です。
②
トロンビン (Thrombin): 凝固系の中心的な酵素で、
フィブリノーゲン (Fibrinogen) をフィブリン (Fibrin) に変換 します。つまり、「血栓を作る」酵素です。プラスミンとは全く逆の働きをします。
③
トロンボプラスチン (Thromboplastin): 組織因子 (Tissue Factor) とも呼ばれ、
外因系凝固経路を開始する因子です。凝固反応の引き金を引く役割です。
④
プロスタサイクリン (Prostacyclin; PGI2):
血小板凝集抑制作用 と血管拡張作用を持ち、トロンボキサンA2とは拮抗的に働き、血栓の過剰形成を防ぎます。しかし、すでにできた血栓を分解する作用はありません。
⑤
プラスミン (Plasmin): 上記の通り、正解です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
凝固系と線溶系は、
生体内の止血バランス (Hemostatic Balance) を保つために密接に関連しています。凝固が亢進しすぎると血栓症(心筋梗塞、脳梗塞など)に、線溶が亢進しすぎると出血傾向(播種性血管内凝固症候群 DICの後期など)に傾きます。このバランスを理解することが、止血異常の病態を学ぶ基礎となります。また、臨床では
D-ダイマー (D-dimer) という検査値が、フィブリンがプラスミンによって分解されたことを示す特異的なマーカーとして、血栓症の診断やDICの評価に頻用されます。
概念整理: プラスミンは線溶系の最終酵素であり、フィブリン(血栓)を特異的に分解する。凝固系の最終酵素であるトロンビン(フィブリノーゲン→フィブリン)とは拮抗的な関係にある。
一目で比較!:
| 作用 | 酵素/物質名 | 機能 |
|---|
| 凝固(血栓形成) | トロンビン | フィブリノーゲン → フィブリン |
| 線溶(血栓溶解) | プラスミン | フィブリン → FDPs/D-ダイマー |
| 血小板凝集促進 | トロンボキサンA2 | 血管収縮 + 凝集 |
| 血小板凝集抑制 | プロスタサイクリン | 血管拡張 + 凝集抑制 |
看護過程ポイント: 血栓溶解療法(t-PAなど)を実施する患者では、
出血のリスクが極めて高い。観察では、穿刺部位の出血・血腫、皮下出血、歯肉出血、血尿、タール便、頭蓋内出血の徴候(意識レベル低下、頭痛、嘔吐)を注意深く観察する。看護診断としては「出血リスク状態」が優先される。
暗記のコツ: 「トロンビンは血栓を作る(ビン=瓶に詰めるイメージ)、プラスミンは血栓を溶かす(プラス=+で分解、ミル=水に溶かすイメージ)」と覚えましょう。または、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)の「PA」を「プラスミン・アクチベーター」と連想するのも有効です。
国試頻出ポイント: この問題は、血液凝固と線溶の基本的な知識を問う頻出問題です。特に、トロンビンとプラスミンの機能の対比、およびトロンボキサンA2とプロスタサイクリンの対比は毎年どこかで出題される可能性があります。単純暗記ではなく、止血機構全体の流れの中で各物質の位置づけを理解しておきましょう。
出題パターン注意!: この知識は、「播種性血管内凝固症候群 (DIC)」の病態や、「血栓溶解療法中の看護」、「抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレル)と抗凝固薬(ワルファリン、ヘパリン)の作用機序の違い」など、より複雑な状況設定問題へと発展します。基本をしっかり押さえておきましょう。