核心解説
この問題は、心臓の拍動調節に関わる自律神経(交感神経と副交感神経)の作用を正しく理解しているかを問うものです。心臓は自動性(自動能)を持ちますが、その拍動数や収縮力は自律神経によって調整されています。
最重要! 交感神経 (Sympathetic Nerve) と
副交感神経 (Parasympathetic Nerve / 迷走神経 Vagus Nerve) は、それぞれ心臓に対して逆の効果をもたらすことを覚えましょう。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢⑤「副交感神経の刺激は心拍数を減少させる」が正解です。
副交感神経(迷走神経)が興奮すると、心臓のペースメーカーである
洞房結節 (SA Node) の発火頻度が低下します。これを
陰性変時作用 (Negative Chronotropic Effect) といい、結果として心拍数が減少します。これは安静時や睡眠時に優位となる生理的反応です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 交感神経と副交感神経の作用を混同しないことが重要です。
①番:交感神経の刺激は房室伝導を促進するため、
房室伝導時間 (AV Conduction Time) は「短縮」します。延長するのは副交感神経刺激の作用です。
②番:交感神経の刺激は心拍数を「増加」させます(陽性変時作用)。減少させるのは副交感神経刺激の作用です。
③番:副交感神経の刺激は心収縮力を「減少」させます(陰性変力作用 Negative Inotropic Effect)。増加させるのは交感神経刺激の作用です。
④番:交感神経の刺激は、心筋細胞の活動電位持続時間を短縮させるため、
不応期 (Refractory Period) は「短縮」します。これは心拍数増加に伴う適応現象です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
自律神経による心機能調節は、「変時作用(心拍数)」「変力作用(収縮力)」「変伝導作用(伝導速度)」の3つの視点で整理すると理解しやすくなります。また、これらの作用は
β受容体(交感神経)と
ムスカリン受容体(副交感神経)を介して発現します。循環器用薬(β遮断薬、ジギタリス製剤など)の作用機序を理解する上でも基礎となる重要知識です。
概念整理: 心臓の自律神経支配
| 神経系 | 変時作用 (心拍数) | 変力作用 (収縮力) | 変伝導作用 (AV伝導) |
|---|
| 交感神経 | 増加 (陽性) | 増加 (陽性) | 促進 (短縮) |
| 副交感神経 | 減少 (陰性) | 減少 (陰性) | 抑制 (延長) |
一目で比較!:
混同注意! 交感神経 = アクセル(戦闘/逃走反応 Fight or Flight) / 副交感神経 = ブレーキ(休息/消化反応 Rest and Digest)とイメージすると覚えやすいです。
看護過程ポイント:
アセスメント:自律神経のバランスはバイタルサイン測定時に評価します。発熱や疼痛(交感神経亢進)では頻脈、睡眠中や失神発作時(副交感神経亢進)では除脈や血圧低下を観察します。
暗記のコツ: 語呂合わせ:「交感神経は+(プラス)の効果。心拍数+、収縮力+、伝導速度+(短縮)。」 逆に「副交感神経は-(マイナス)の効果。心拍数-、収縮力-、伝導速度-(延長)。」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 自律神経と心機能の関係は、基礎医学(生理学)と臨床看護(循環器、周術期、救急)の両方で繰り返し問われる超頻出テーマです。特に「交感神経β遮断薬が適応となる疾患(狭心症、心不全、頻脈性不整脈)」や「アトロピン(副交感神経遮断薬)が徐脈治療に用いられる」といった薬理作用との関連問題が頻出です。