核心解説
この問題は、
心拍出量 (Cardiac Output, CO) の定義と計算式を問う基本知識問題です。心拍出量は、心臓のポンプ機能を評価する上で最も重要な指標の一つであり、循環動態の理解に不可欠です。
心拍出量 (CO) は、1回拍出量 (Stroke Volume, SV) に心拍数 (Heart Rate, HR) を乗じた値で算出されます(CO = SV × HR)。この式は、心臓が1分間に全身に送り出す血液の総量(単位:L/min)を表します。成人の安静時の正常値は約5L/min(正常範囲:約4~8L/min)です。この概念は、
心不全 (Heart Failure)、
ショック (Shock)、
輸液療法 (Fluid Therapy) などの病態理解や看護介入の優先順位を考える上で基盤となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③番の「1回拍出量 × 心拍数」が正解です。心拍出量は、心臓が1回の収縮で拍出する血液量(1回拍出量, SV)と、1分間の拍動回数(心拍数, HR)の積で計算されます。例えば、1回拍出量が70mLで心拍数が70回/分の場合、心拍出量は70mL × 70回/分 = 4,900mL/min = 約4.9L/minとなります。この値は、組織への酸素供給や薬物の分布を評価する上で重要な指標です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「拡張期血圧 - 収縮期血圧」は、
混同注意! 脈圧(Pulse Pressure)の計算式です。脈圧は血管の弾性や動脈硬化の評価に用いられます。
②番「心拍数 ÷ 1回拍出量」は、心拍出量とは逆数の関係にあり、意味を持ちません。誤った計算式です。
④番「収縮期血圧 × 心拍数」は、血圧と心拍数の積であり、心拍出量を直接反映するものではありません。血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積(血圧 = CO × 末梢血管抵抗)で規定されるため、この式は不適切です。
⑤番「平均血圧 × 末梢血管抵抗」は、血圧の規定因子を掛け合わせたものですが、心拍出量を直接計算する式ではありません。むしろ、平均血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗(MAP = CO × SVR)の関係から、心拍出量を求めるには「平均血圧 ÷ 末梢血管抵抗」とすべきですが、この式は心拍出量を直接導くものではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
心拍出量に関連する重要な指標として、
心係数 (Cardiac Index, CI) があります。CI = CO ÷ 体表面積 (Body Surface Area, BSA) で算出され、体格の異なる患者間での心機能比較に用いられます。また、1回拍出量 (SV) は、前負荷 (Preload)、後負荷 (Afterload)、心収縮力 (Contractility) の3因子によって規定されます。これらの概念は、
心不全の病態理解や利尿薬・強心薬の投与効果の評価に直結します。
概念整理: 心拍出量 (CO) = 1回拍出量 (SV) × 心拍数 (HR)。正常値は約5L/min。心拍出量は、心臓のポンプ機能を総合的に評価する基本指標であり、循環血液量(前負荷)、血管抵抗(後負荷)、心筋収縮力のバランスで変動する。
一目で比較!:
| 指標 | 計算式 | 臨床的意義 |
|---|
| 心拍出量 (CO) | SV × HR | 1分間の総拍出量(L/min) |
| 心係数 (CI) | CO ÷ 体表面積 | 体格補正後の心機能指標 |
| 脈圧 (PP) | 収縮期血圧 - 拡張期血圧 | 血管弾性・動脈硬化評価 |
| 平均血圧 (MAP) | 拡張期血圧 + 脈圧/3 | 臓器灌流圧の指標 |
看護過程ポイント:
アセスメント:心拍出量低下の兆候(頻脈、血圧低下、尿量減少、意識レベルの変化、末梢冷感)を観察。
看護診断:
心拍出量減少 (Decreased Cardiac Output)。
計画・実施:バイタルサイン測定、尿量測定、SpO2モニタリング、医師への報告(SBAR使用)、安静維持、輸液・薬物療法の準備。
評価:バイタルサインの安定、尿量30mL/hr以上、意識レベル改善。
暗記のコツ: 「心拍出量は、1回の拍出量(SV)と心拍数(HR)を『掛け算』する」と覚えましょう。「心拍出量 = 1回の量 × 回数」という単純な関係をイメージすると、計算式を忘れにくくなります。「CO = SV × HR」の順序で暗記するとよいでしょう。
国試頻出ポイント: 心拍出量の計算式は毎年ほぼ必須で出題される基本中の基本です。単独の計算問題としてだけでなく、
心不全や
ショックの事例問題の中で、「心拍出量低下をアセスメントするための指標はどれか」といった形で頻出します。SV、HR、CO、CIの関係を必ず整理しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な「式を選べ」問題に加え、「心拍数80回/分、1回拍出量60mLの患者の心拍出量は何L/minか」という計算問題や、「心拍出量を増やす看護介入として適切なのはどれか」といった応用問題にも対応できるようにしておきましょう。