核心解説
この問題は、眼の
調節 (Accommodation)、つまり近くのものを見る(近方視)際に眼球内で起こる一連の反応を問うています。近方視時には、網膜に鮮明な像を結ぶために、
毛様体筋の収縮、水晶体の厚み増加、縮瞳の3つの反応が同時に起こります。これを理解するには、水晶体の厚みを変える仕組みが鍵です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④番「毛様体筋の収縮、水晶体の厚み増加、縮瞳」です。
近方視時、
毛様体筋 (Ciliary Muscle) は収縮します。これにより、水晶体を吊るしている
毛様体小帯 (Zonule of Zinn) の緊張が弛緩します。すると、水晶体は自身の弾性によって丸く厚みを増します(これを
調節 (Accommodation)と呼びます)。同時に、
瞳孔括約筋 (Pupillary Sphincter Muscle) が収縮し、
縮瞳 (Miosis) が起こります。これは焦点深度を深め、ピントを合わせやすくするためです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:
混同注意! 遠方視時に毛様体筋は弛緩します。近方視では収縮が正解です。「水晶体の厚み増加」と「縮瞳」は合っていますが、毛様体筋の状態が誤っています。
②番:
混同注意! 「散瞳 (Mydriasis)」は暗い場所や遠方視、または交感神経刺激で起こります。近方視では副交感神経が優位となり、縮瞳が起こります。
③番:「水晶体の厚み減少」は遠方視で起こる変化です。近方視では水晶体は厚みを増します。
⑤番:全てが誤りです。近方視とは逆の、遠方視で起こる反応の組み合わせです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
この反応は、
近見反射 (Near Reflex) または
調節反射 (Accommodation Reflex) と呼ばれ、以下の3つから構成されます。
| 反応 | 内容 | 神経支配 |
|---|
| 1. 調節 | 毛様体筋収縮 → 水晶体厚み増加 | 動眼神経(副交感神経) |
| 2. 縮瞳 | 瞳孔括約筋収縮 → 瞳孔縮小 | 動眼神経(副交感神経) |
| 3. 輻輳 | 両眼の内直筋収縮 → 眼球が内側に向く | 動眼神経(体性運動神経) |
「散瞳」は遠方視時や、
対光反射 (Pupillary Light Reflex) で起こります。対光反射は「光が入ったら縮瞳、光が減ったら散瞳」であり、近見反射とは刺激が異なります。
概念整理: 近方視=
毛様体筋収縮+水晶体厚み増加+縮瞳。すべて副交感神経(動眼神経)が司る。
一目で比較!:
| 状態 | 毛様体筋 | 水晶体 | 瞳孔 |
|---|
| 近方視 | 収縮 | 厚み増加 | 縮瞳 |
| 遠方視 | 弛緩 | 厚み減少 | 散瞳 |
看護過程ポイント:
最重要! 脳神経障害(特に動眼神経麻痺)の患者では、調節反射や対光反射が障害され、複視やピント調節困難を訴える。神経学的アセスメントでは、瞳孔の大きさ、形状、対光反射とともに、輻輳や調節の評価も重要。
暗記のコツ: 「近くを見る=毛様体が『縮む』(収縮)→水晶体が『太る』(厚み増加)→瞳が『小さくなる』(縮瞳)」と覚えましょう。「3つの『縮』(収縮、縮瞳)」がキーワードです!
国試頻出ポイント: 近見反射の3要素(調節・縮瞳・輻輳)をセットで問う問題、対光反射との比較、動眼神経麻痺の症状として出題される。
出題パターン注意!: 「遠方視と近方視の比較」や、「ある薬剤(例:抗コリン薬)を投与した際に近方視にどのような影響が出るか」といった応用問題に発展する可能性がある。