核心解説
この問題は、
瞳孔括約筋 (Sphincter Pupillae) を支配する神経の種類を問う、
自律神経系 と
脳神経 の基礎知識です。瞳孔の動きは、光の調節や対光反射に直結するため、看護師国家試験では頻出かつ臨床で非常に重要な項目です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 瞳孔の大きさは、2つの拮抗する平滑筋によって調節されています。1つは
瞳孔括約筋 (Sphincter Pupillae) で、収縮すると
縮瞳 (Miosis) を引き起こします。もう1つは
瞳孔散大筋 (Dilator Pupillae) で、収縮すると
散瞳 (Mydriasis) を引き起こします。この2つの筋肉は異なる神経支配を受けており、これを理解することが鍵です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 瞳孔括約筋を支配する神経は、
動眼神経 (Oculomotor Nerve: CN III) に含まれる
副交感神経 (Parasympathetic Nerve) です。この副交感神経線維は、中脳のエディンガー・ウェストファル核 (Edinger-Westphal Nucleus) を出発し、
毛様体神経節 (Ciliary Ganglion) でシナプスを形成した後、毛様体神経 (Short Ciliary Nerve) として眼球に入り、瞳孔括約筋と
毛様体筋 (Ciliary Muscle) を支配します。これにより、近くのものを見る際の
縮瞳 と
調節 (Accommodation) が行われます。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①番の「動眼神経 (交感神経)」は誤りです。動眼神経は
副交感神経線維 を含みますが、交感神経線維ではありません。
瞳孔散大筋 (Dilator Pupillae) を支配するのは
交感神経 (Sympathetic Nerve) であり、その経路は頸部交感神経幹を上行し、上頸神経節でシナプスします。
②番の「上眼窩神経 (Supraorbital Nerve)」は、眼神経(三叉神経第1枝)の終末枝で、前頭部や上眼瞼の皮膚感覚を支配する純粋な
感覚神経 です。
③番の「眼神経 (Ophthalmic Nerve: CN V1)」は、三叉神経 (Trigeminal Nerve: CN V) の第1枝で、眼球や前頭部の
感覚 を支配します。運動線維は含まれません。
⑤番の「滑車神経 (Trochlear Nerve: CN IV)」は、
上斜筋 (Superior Oblique Muscle) を支配する
純粋な運動神経 で、瞳孔の調節には関与しません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 対光反射 (Pupillary Light Reflex) の経路も併せて覚えましょう。光が網膜に入ると、求心路は
視神経 (Optic Nerve: CN II) を経由し、中脳の上丘 (Superior Colliculus) とエディンガー・ウェストファル核に伝わります。ここから遠心路として、前述の動眼神経(副交感神経)を介して両側の瞳孔括約筋が収縮し、縮瞳が起こります。これが
直接対光反射 (Direct Light Reflex) と
間接対光反射 (Consensual Light Reflex) のメカニズムです。
概念整理: 瞳孔調節の二重支配
| 筋肉 | 神経支配 | 作用 |
|---|
| 瞳孔括約筋 | 動眼神経 (副交感神経) | 縮瞳 (Miosis) |
| 瞳孔散大筋 | 交感神経 (頸部交感神経幹由来) | 散瞳 (Mydriasis) |
一目で比較!: 縮瞳 vs 散瞳
| 状態 | 支配神経 | 瞳孔の状態 | 代表的薬剤/病態 |
|---|
| 縮瞳 (Miosis) | 副交感神経 (動眼神経) | 小さくなる | ピロカルピン / 有機リン中毒 |
| 散瞳 (Mydriasis) | 交感神経 | 大きくなる | アトロピン / 動眼神経麻痺 |
看護過程ポイント: 瞳孔の観察は、
神経学的アセスメント (Neurological Assessment) の基本です。看護計画では「
対光反射の有無と瞳孔の大きさ・左右差・形状」を定期的に観察します。特に、脳ヘルニアや頭蓋内圧亢進時には、動眼神経が圧迫され、初期には同側の散瞳、進行すると対光反射消失が見られます。異常を発見したら、すぐにSBARで報告します。
暗記のコツ: 「括約筋」は「締める(縮める)」筋肉です。副交感神経は「休息と消化 (Rest and Digest)」を司り、体を安静な状態に導きます。近くのものを見る時は安静な状態ではありませんが、「
縮瞳と調節」は副交感神経の働きと覚えましょう。一方、「散大筋」は「開く」筋肉で、交感神経は「闘争か逃走か (Fight or Flight)」を司るため、散瞳は緊張状態を連想させると覚えやすいです。
国試頻出ポイント: 看護師国家試験では、直接的に「瞳孔括約筋を支配する神経はどれか」という単純知識問題に加え、状況設定問題として「頭部外傷後の瞳孔所見から何をアセスメントするか」「緑内障治療薬の作用機序に関する問題」「脳神経麻痺の症状を問う問題」として頻出します。
出題パターン注意!: 「動眼神経麻痺の患者にみられる症状はどれか」という問題で、「
散瞳 (Mydriasis)」を選べるようにしておく必要があります。この時、混同して「縮瞳」を選ばないように、今回の知識を確実にしてください。