核心解説
この問題は、
中枢神経系 (Central Nervous System, CNS) における髄鞘 (Myelin Sheath) 形成細胞の識別を問うています。
活動電位の跳躍伝導 (Saltatory Conduction) は、軸索が髄鞘によって絶縁されることで、興奮が
ランヴィエ絞輪 (Nodes of Ranvier) に限局して伝わる現象であり、神経伝導速度を著しく高めます。中枢神経系でこの髄鞘を形成するのは
希突起膠細胞 (Oligodendrocyte) です。1つのオリゴデンドロサイトが複数の軸索に突起を伸ばして髄鞘を形成する点が、末梢神経系のシュワン細胞 (1つの細胞が1本の軸索のみを巻く) との大きな違いです。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 問題文は「中枢神経系」という条件付きです。希突起膠細胞は、中枢神経系 (脳・脊髄) に存在するグリア細胞の一種で、軸索を取り巻く髄鞘を形成・維持します。これにより、軸索の電気的絶縁と跳躍伝導が可能となり、高速な神経情報伝達が実現します。多発性硬化症 (Multiple Sclerosis, MS) では、この希突起膠細胞または髄鞘が自己免疫的に破壊されることで、神経伝導障害が生じます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①
シュワン細胞 (Schwann Cell): 末梢神経系 (Peripheral Nervous System, PNS) で髄鞘を形成する細胞です。中枢神経系ではないため、本問の条件には該当しません。
③
ミクログリア (Microglia): 中枢神経系の免疫担当細胞です。貪食作用を持ち、損傷した神経細胞や病原体を除去する役割を担いますが、髄鞘形成は行いません。
④
アストロサイト (Astrocyte): 中枢神経系で最も多いグリア細胞です。血液脳関門 (Blood-Brain Barrier, BBB) の維持、神経細胞への栄養供給、神経伝達物質の代謝など多様な機能を持ちますが、髄鞘形成は行いません。
⑤
上衣細胞 (Ependymal Cell): 脳室や脊髄中心管の内面を覆う上皮様の細胞です。脳脊髄液 (Cerebrospinal Fluid, CSF) の産生と循環に関与しますが、髄鞘形成は行いません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
グリア細胞 (Glial Cells) の機能を一覧で整理しておきましょう。
| 細胞名 | 主な所在 | 主な機能 |
|---|
| 希突起膠細胞 | 中枢神経系 | 髄鞘形成 |
| シュワン細胞 | 末梢神経系 | 髄鞘形成 |
| アストロサイト | 中枢神経系 | BBB維持・栄養供給・瘢痕形成 |
| ミクログリア | 中枢神経系 | 免疫監視・貪食 |
| 上衣細胞 | 中枢神経系 (脳室) | CSF産生・循環補助 |
概念整理: 神経系の情報伝達を高速化するための「絶縁体 (髄鞘)」は、その存在する場所(中枢か末梢か)によって形成細胞が異なる。中枢神経系では
希突起膠細胞、末梢神経系では
シュワン細胞。この「場所による分類」が本問の核心。
一目で比較!:
混同注意! 「髄鞘形成細胞」と「グリア細胞の機能」をゴチャゴチャにしないこと。神経系のグリア細胞5種類(希突起膠細胞、アストロサイト、ミクログリア、上衣細胞、シュワン細胞(末梢))の機能を必ず比較表で暗記する。
看護過程ポイント: 中枢神経系の脱髄疾患(例:
多発性硬化症 (Multiple Sclerosis))の病態を理解する上で、この細胞知識は必須。患者の症状(視力障害、感覚異常、運動麻痺)をアセスメントする際、「なぜこの症状が出るのか」を細胞レベルの障害(跳躍伝導の遮断)と結び付けて考える。
暗記のコツ: 「中希(中枢は希突起膠細胞)」と覚える。「中」=中枢神経系、「希」=希突起膠細胞。末梢は「末シュ(末梢はシュワン細胞)」。
国試頻出ポイント: 基礎医学問題として、グリア細胞の機能を問う問題は頻出。特に「中枢神経系の髄鞘形成細胞」と「末梢神経系の髄鞘形成細胞」の対比は必ず押さえる。疾患と結び付けて「多発性硬化症で障害される細胞は?」という形でも出題される。
出題パターン注意!: 「
ギラン・バレー症候群 (Guillain-Barré Syndrome) で障害される細胞は?」→ 正解は末梢神経の「シュワン細胞」となります。中枢と末梢、どちらの疾患かを問題文から正確に読み取ることが重要です。