核心解説
この問題は、神経細胞の電気的興奮性の基盤となる
静止膜電位 (Resting Membrane Potential)の維持機構を問うています。
静止膜電位は、細胞内外のイオン濃度差(特にカリウムイオンの細胞内高濃度)によって生じる電位差であり、その濃度勾配を能動的に維持するポンプの理解が鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は④番の
ナトリウム-カリウムポンプ (Na+/K+ ATPase, Sodium-Potassium Pump)です。このポンプは、ATP(アデノシン三リン酸)をエネルギー源として、細胞内のナトリウムイオン (Na+) を3つ細胞外へ能動輸送し、同時に細胞外のカリウムイオン (K+) を2つ細胞内へ取り込みます。この働きにより、
細胞内は高カリウム・低ナトリウム、
細胞外は低カリウム・高ナトリウムというイオン濃度勾配が維持され、静止膜電位(約-70mV)が安定して保たれます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の
カルシウムポンプ (Ca2+ ATPase)は、主に筋小胞体や細胞膜に存在し、細胞内カルシウムイオン濃度を低く保つ役割を担います。筋収縮後の弛緩に重要ですが、静止膜電位の維持には直接的には関与しません。
②番の
ナトリウム-カルシウム交換輸送体 (NCX, Na+/Ca2+ Exchanger)は、ナトリウムの濃度勾配を利用してカルシウムを細胞外へ排出する二次性能動輸送です。心筋細胞の弛緩などに関与しますが、静止膜電位維持の主役ではありません。
③番の
プロトンポンプ (H+ ATPase, Proton Pump)は、水素イオン (H+) を能動輸送するポンプで、胃の壁細胞(胃酸分泌)や細胞内小器官(リソソームなど)の酸性環境維持に働きます。
⑤番の
カリウム-カルシウムポンプという名称のポンプは生体内に存在しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
混同注意! 静止膜電位の維持に重要なのは
ナトリウム-カリウムポンプですが、活動電位の発生(脱分極・再分極)には
電位依存性ナトリウムチャネルや
電位依存性カリウムチャネルが中心的な役割を果たします。ポンプはチャネルと異なり能動輸送であり、イオン濃度勾配を作り出す土台の役割を担っています。この「ポンプ vs チャネル」の機能分担は頻出です。
概念整理
静止膜電位 (Resting Membrane Potential) は、細胞内外のイオン濃度差によって生じる電位差。ナトリウム-カリウムポンプはATPを消費してNa+を細胞外へ、K+を細胞内へ輸送し、この濃度勾配を維持する能動輸送体。これが活動電位の基盤となる。
一目で比較!
| 輸送体名 | 輸送するイオン | 主な機能 |
|---|
| ナトリウム-カリウムポンプ | Na+ (外へ) / K+ (内へ) | 静止膜電位の維持 |
| カルシウムポンプ | Ca2+ (細胞内小器官へ / 細胞外へ) | 筋収縮後の弛緩、細胞内Ca2+濃度調節 |
| ナトリウム-カルシウム交換輸送体 | Na+ (内へ) / Ca2+ (外へ) | 心筋・神経細胞のCa2+排出(二次性能動輸送) |
看護過程ポイント
直接的な看護介入はありませんが、この知識は低カリウム血症(Hypokalemia)やジギタリス中毒時の不整脈発生機序(Na+/K+ポンプ阻害)の理解に必須。血清カリウム値 (K+ 3.5-5.0 mEq/L) の異常が神経・筋症状にどう影響するかアセスメントする際の基礎となる。
暗記のコツ
「ナカポン(Na-K Pump)」と覚えましょう。「ナ(Na)」トリウムを外に出し、「カ(K)」リウムを中に入れる。そして、カリウムが細胞内に多いから静止膜電位はマイナス(-70mV)。「3つ出して、2つ入れる」という比率も合わせて覚えると、電気的勾配の理解が深まります。
国試頻出ポイント
「静止膜電位の維持に最も関与するものは?」というストレートな知識問題だけでなく、「低カリウム血症で筋力低下が起こる理由は?」「ジギタリス中毒で不整脈が起こる機序は?」といった応用問題で出題される。また、活動電位の各相(脱分極・再分極)に関わるイオンチャネルとの区別も頻出。