核心解説
この問題は、
神経細胞 (Neuron) における
活動電位 (Action Potential) 発生のメカニズム、特に
脱分極 (Depolarization) を引き起こすイオン移動の基礎を問うています。活動電位は、細胞膜のイオンチャネルが開閉することで生じる電位変化であり、その各相をイオンの流れと関連付けて理解することが重要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
脱分極(膜電位が静止電位から0 mVを超えて上昇する相)では、
電位依存性ナトリウムチャネル (Voltage-gated Sodium Channel) が急激に開口します。このチャネルを通じて、細胞外液に高濃度で存在する
ナトリウムイオン (Na+) が、濃度勾配と電気的勾配に従って細胞内へ大量に流入します。この
ナトリウムの急激な細胞内流入 が、膜電位を上昇させる原動力となります。
最重要! 脱分極の主役は「ナトリウムイオンの細胞内流入」です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
②番:
カルシウムイオン (Ca2+) の細胞内流入は、心筋細胞や平滑筋細胞の活動電位(特にプラトー相)や神経終末での
神経伝達物質の放出 に関与しますが、神経細胞の活動電位発生における脱分極の主要な原因ではありません。
③番:ナトリウムイオンが細胞外へ流出することは、活動電位後の
ナトリウム-カリウムポンプ (Na+/K+ Pump) による能動輸送であり、脱分極とは逆方向の動きです。
④番:
カリウムイオン (K+) の細胞内流入は、静止電位の維持やナトリウム-カリウムポンプの働きに関与しますが、脱分極の主因ではありません。
⑤番:カリウムイオンの細胞外への流出は、
再分極 (Repolarization) の主な原因です。脱分極後、電位依存性カリウムチャネルが開口し、カリウムが細胞外に流出することで膜電位が静止電位に戻ります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
活動電位の各相とイオンの動きを整理しましょう。
| 相 (Phase) | 主なイオンの動き | 膜電位の変化 |
|---|
| 静止電位 | K+漏洩チャネルからのK+流出 | 約 -70 mV (一定) |
| 脱分極 | Na+ 細胞内流入 (正解) | 上昇 (-70 mV → +30 mV) |
| 再分極 | K+ 細胞外流出 | 下降 (+30 mV → -70 mV) |
| 不応期 | Na+チャネル不活性化 | 次の刺激に反応しない |
また、心筋細胞の活動電位では、カルシウムイオンの流入によるプラトー相が存在する点も併せて覚えておくと、混同を防げます。
概念整理: 脱分極の原動力は
Na+ の細胞内流入。再分極の原動力は
K+ の細胞外流出。この「Na+ in, K+ out」の原則は神経・筋細胞共通の基本です。
一目で比較!:
| イオン | 細胞内濃度 | 細胞外濃度 | 主な機能 |
|---|
| Na+ | 低 | 高 | 脱分極、浸透圧調整 |
| K+ | 高 | 低 | 静止電位の維持、再分極 |
| Ca2+ | 低 | 高 | 筋収縮、伝達物質放出 |
| Cl- | 低 | 高 | 抑制性シナプス電位 |
看護過程ポイント: 神経筋疾患や電解質異常(特に高Na血症・低Na血症、高K血症・低K血症)の患者では、このイオン移動の仕組みが障害され、筋力低下、意識障害、不整脈などの症状が現れます。アセスメントでは血清電解質値の確認が必須です。
暗記のコツ: 「ナトリウムが入って(In)興奮(脱分極)、カリウムが出て(Out)落ち着く(再分極)」と覚えましょう。入って(In)興奮するのがNa+、出て(Out)鎮まるのがK+です。
国試頻出ポイント: この問題は解剖生理学の基本中の基本です。過去には「活動電位の波形図」を示して、各相の名称やイオンの動きを問う形式や、「不応期」の意味を問う問題と組み合わせて出題されています。
出題パターン注意!: 基礎知識を確認する単純な選択肢問題(本問のような)から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やギラン・バレー症候群といった疾患の病態理解、さらには低K血症による不整脈の発生機序など、臨床事例と結びつけた応用問題へと発展します。