核心解説
この問題は、
筋紡錘 (Muscle Spindle) と
ゴルジ腱器官 (Golgi Tendon Organ, GTO) という2つの主要な筋感覚受容器の機能と局在の違いを問うています。どちらも身体の位置覚や運動制御に関わる重要な感覚器であり、特に
伸張反射 (Stretch Reflex) や
相反抑制 (Reciprocal Inhibition) を理解する上で不可欠な概念です。これらの受容器の正確な役割と反射回路を区別できるかが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①番です。
最重要! 筋紡錘 (Muscle Spindle) は骨格筋の筋腹内、つまり筋線維の間に並行して存在する感覚受容器です。主に
筋の長さ (Muscle Length) とその変化速度 (Velocity) を感知します。筋が他動的に伸張されると、筋紡錘内の
錘内筋線維 (Intrafusal Muscle Fiber) も引き伸ばされ、これが求心性神経(Ia群線維)を興奮させます。この信号は脊髄後根から入り、単シナプスで同じ筋の
α運動ニューロン (Alpha Motor Neuron) を興奮させ、筋を収縮させます。これが
伸張反射 (Stretch Reflex / Deep Tendon Reflex) のメカニズムであり、臨床で行う
膝蓋腱反射 (Patellar Tendon Reflex) などの深部腱反射の受容器となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:正解の選択肢です。前述の通り、筋紡錘は伸張反射の受容器として機能します。
②番:
混同注意! 筋紡錘とゴルジ腱器官はどちらも
深部感覚受容器 (Proprioceptor) であり、皮膚の表層(表在感覚)に位置するわけではありません。皮膚の表層には、触覚や痛覚、温度覚を司る受容器(メルケル細胞、パチニ小体など)が存在します。
③番:筋紡錘は「腱」ではなく「筋腹(筋線維の中)」に存在します。腱に存在し、筋の張力を感知するのは
ゴルジ腱器官 です。この2つの局在を混同しないようにしましょう。
④番:ゴルジ腱器官は筋と腱の接合部(筋腱移行部)に存在し、
筋の張力 (Muscle Tension) を感知します。筋の長さの変化を感知するのは筋紡錘の役割です。
⑤番:ゴルジ腱器官からの求心性信号(Ib群線維)は、脊髄内で介在ニューロンを介して、同じ筋の
α運動ニューロンを抑制 します。これにより過度な筋収縮から筋や腱を保護する機構を
相反抑制の一種 (Autogenic Inhibition) と呼びます。興奮させるのは筋紡錘の経路です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
-
筋紡錘: 筋長の変化を感知 → Ia群線維 → α運動ニューロン興奮 → 伸張反射。
-
ゴルジ腱器官: 筋張力の増大を感知 → Ib群線維 → α運動ニューロン抑制 → 自己抑制反射。
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混同注意! 相反抑制 (Reciprocal Inhibition) には、伸張反射時に拮抗筋を抑制するものと、ゴルジ腱器官を介する自己抑制の2種類があります。どちらも脊髄レベルの反射ですが、受容器と回路が異なります。
概念整理:
| 項目 | 筋紡錘 (Muscle Spindle) | ゴルジ腱器官 (GTO) |
|---|
| 局在 | 筋腹(筋線維内) | 筋腱移行部 |
| 感知する刺激 | 筋の長さとその変化速度 | 筋の張力(収縮力) |
| 求心性神経 | Ia群線維(速い) | Ib群線維(やや遅い) |
| 反射効果 | 同じ筋のα運動ニューロンを興奮させる | 同じ筋のα運動ニューロンを抑制させる |
| 生理的意義 | 筋の長さを一定に保ち、姿勢維持や随意運動の調節 | 過度な筋張力から筋や腱を保護する |
一目で比較!:
「
紡錘」は「糸巻き」のような形で「
長さ」を測るイメージ →
筋長感知。
「
ゴルジ」は人名で「
腱」の近くにあり「
張力」を監視する →
筋張力感知。
看護過程ポイント:
これらの反射は、神経学的アセスメント(特に深部腱反射の評価)や、
痙縮 (Spasticity) や
固縮 (Rigidity) などの上位運動ニューロン障害の鑑別に重要です。リハビリテーション看護においても、筋緊張の亢進を緩和するストレッチやポジショニングの理論的根拠となります。
暗記のコツ:
「
筋紡錘」は「
身の
長(身長)を測る」と覚える → 筋の長さ。
「
ゴルジ腱器官」は「
ゴル(ゴリラの力)
ジ(強い)」と覚える → 筋の張力(力)。ゴルジ腱器官は「保護」の反射なので、力を弱める方向に働く。
国試頻出ポイント:
「筋紡錘」と「ゴルジ腱器官」の局在と機能の対比は、国試で非常に頻出のテーマです。選択肢で「筋紡錘は腱にある」「ゴルジ腱器官は筋線維内にある」といった逆の記述がよく出題されます。また、伸張反射と相反抑制のどちらの反射経路かを問う問題もよく見られます。
出題パターン注意!:
単純知識問題としてだけでなく、「
痙縮 (Spasticity)」や「
腱反射亢進 (Hyperreflexia)」といった症状を呈する疾患(例:
脳血管障害 (CVA))の事例問題に絡めて出題されることがあります。その際、どの受容器の異常が原因なのかを問う形式に注意しましょう。