核心解説
この問題は、
骨格筋の収縮様式 (Muscle Contraction Types) の分類を問うています。筋収縮は「筋の長さが変化するかどうか」と「張力が発生するかどうか」の組み合わせで分類されます。正解は、筋の長さが変化せずに張力のみが発生する
等尺性収縮 (Isometric Contraction) です。これは、壁を押す時や重い物を持ち上げて静止する時などに生じます。一方、筋の長さが変化する収縮は
等張性収縮 (Isotonic Contraction) と呼ばれ、さらに筋が短縮する
求心性収縮 (Concentric Contraction) と、筋が伸張される
遠心性収縮 (Eccentric Contraction) に分けられます。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、筋収縮における「張力」と「筋長」の関係性の理解です。等尺性収縮は、関節を動かさずに力を発揮するため、関節疾患のリハビリテーションや、体幹の安定化に重要な役割を果たします。看護では、患者さんの筋力評価や、体位変換・移動介助の際の力の入れ方の指導に関連します。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ⑤番
等尺性収縮 (Isometric Contraction) が正解です。筋の両端が固定され、収縮しても筋全体の長さは変わらず、内部で張力(筋の硬さ)だけが増加するためです。例として、壁を押す動作や、仰臥位で膝を伸ばしたまま大腿四頭筋を緊張させる運動(等尺性運動)が挙げられます。
最重要! この収縮は関節に負担をかけないため、関節炎や骨折後の筋力維持トレーニングに適しています。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①番
混同注意! 求心性収縮 (Concentric Contraction) は等張性収縮の一種で、筋が短縮しながら張力を発生します。上腕二頭筋で物を持ち上げる時に生じます。筋長は短縮するため誤りです。
②番 単収縮 (Twitch Contraction) は、単一の活動電位による筋線維の単発的な収縮を指し、収縮様式の分類ではなく、刺激に対する反応の単位です。問題文の「張力が発生する」という条件には合いますが、「筋の長さが変化しない」という条件には合いません(通常は短縮します)。
③番 遠心性収縮 (Eccentric Contraction) は等張性収縮の一種で、筋が伸ばされながら張力を発生します。ダンベルをゆっくり下ろす時や、階段を下りる時に生じます。筋長は伸張するため誤りです。
④番 等張性収縮 (Isotonic Contraction) は、筋の張力が一定で長さが変化する収縮です。求心性と遠心性を含み、筋長が変化するため誤りです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 筋収縮のエネルギー源(ATP)、神経筋接合部の伝達、筋線維の種類(速筋・遅筋)も合わせて学習しましょう。また、臨床では「徒手筋力テスト (MMT)」の評価時に、重力に抗して保持できるか(等尺性)や、関節を動かせるか(等張性)を判断します。
概念整理
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等尺性収縮 (Isometric Contraction): 筋長変化なし、張力発生。関節不動。例: 壁押し、プランク。
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等張性収縮 (Isotonic Contraction): 筋長変化あり、張力一定。
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求心性収縮 (Concentric Contraction): 筋短縮。例: 物を持ち上げる。
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遠心性収縮 (Eccentric Contraction): 筋伸張。例: 物をゆっくり下ろす。
一目で比較!
| 項目 | 等尺性収縮 | 等張性収縮(求心性) | 等張性収縮(遠心性) |
|---|
| 筋の長さ | 変化しない | 短縮する | 伸張する |
| 張力 | 発生する(筋長と等しい) | 一定(負荷と等しい) | 一定(負荷より大きい) |
| 関節運動 | なし | あり(関節角度減少) | あり(関節角度増加) |
| 代表例 | 壁押し | ダンベルを上げる | ダンベルを下ろす |
看護過程ポイント
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アセスメント: 患者の筋力を評価する際、等尺性収縮と等張性収縮のどちらを評価しているか意識する。例えば、MMTで「重力に抗して保持できる」は等尺性収縮、「重力に抗して可動域を動かせる」は等張性収縮である。
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看護介入: 術後や安静が必要な患者には、関節を動かさない等尺性運動(例えば、足関節の背屈・底屈を繰り返す運動)を指導し、筋力低下と廃用症候群を予防する。
標準ケア として、ベッド上での四肢の等尺性運動は、深部静脈血栓症 (DVT) 予防にも有効である。
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評価: 患者が正しい方法で等尺性運動を実施できているか、疼痛の有無、疲労の程度を確認する。
暗記のコツ
「等尺性」の「尺」は「長さ」の意味。「等しい長さ」=「筋の長さが変わらない」と覚えましょう。
「求心性」は「中心(筋の起始部)に向かって筋が縮む」、「遠心性」は「中心から遠ざかるように筋が伸びる」とイメージすると良いです。
国試頻出ポイント
- 「筋の長さが変化しない」と「張力が発生する」の組み合わせは、等尺性収縮の定義として頻出です。
- 等尺性収縮は、関節を動かさないリハビリ(術後、関節リウマチなど)に用いられるという応用問題もよく出ます。
- 求心性収縮と遠心性収縮の違いは、動作(持ち上げる vs 下ろす)と関連づけて問われやすいです。
出題パターン注意!
基礎的な知識問題として、収縮様式の定義を問う形が一般的です。また、状況設定問題では、「人工股関節置換術後の患者に対して、筋力維持のために指導する運動はどれか?」のように、等尺性運動の適応を問う形で出題されることがあります。その場合、関節に負担をかけない運動であることを根拠に選択します。