看護学のコア解説
この問題は、妊娠中の患者に現れた
急性胆嚢炎 (Acute cholecystitis)を疑う際の、最も特異的な身体所見を問うています。
ここがポイント! 妊娠中はホルモンの影響で胆嚢の収縮力が低下し、胆汁が濃縮されやすく、
胆石症 (Cholelithiasis)や胆嚢炎のリスクが高まります。
重要概念の分析 (Key Concept)
マーフィー徴候 (Murphy's sign)は、急性胆嚢炎の診断に極めて有用な身体診察法です。患者の右季肋部(胆嚢の位置)に指を当て、深く息を吸わせると、炎症を起こした胆嚢が下降して指に触れ、痛みのため吸気を途中で止めてしまう現象です。右季肋部痛と悪心・嘔吐の症状と合わせて評価します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
患者の情報(28歳、妊娠中、右季肋部痛、悪心、胆石の既往)は、急性胆嚢炎の典型的な臨床像です。この状況で最も適切な身体診察は、胆嚢炎を直接評価する
マーフィー徴候 (Murphy's sign)です。選択肢①はこの所見を正確に説明しています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②の
反跳痛 (Rebound tenderness)は、腹膜刺激症状を示し、虫垂炎や憩室炎などでみられます。左側の反跳痛は、虫垂炎の初期やS状結腸憩室炎などを示唆しますが、胆嚢炎の直接的な所見ではありません。
③の
カレン徴候 (Cullen's sign)(臍周囲の青紫色変化)と④の
グレイ・ターナー徴候 (Grey Turner's sign)(側腹部の変色)は、いずれも
重症急性膵炎 (Severe acute pancreatitis)や腹腔内出血に伴う所見です。膵炎も上腹部痛を起こしますが、この患者の情報(胆石の既往、右季肋部痛)からは胆嚢炎がより疑わしく、これらの所見は重症合併症を示すため、初期評価の「最も特異的な」所見としては不適切です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
妊娠中の胆嚢炎管理は、胎児への影響を考慮する必要があります。診断には超音波検査が第一選択です。治療は保存的治療(絶食、輸液、抗生物質)から開始し、症状がコントロールできない場合は、妊娠中期(13-27週)が手術の相対的に安全な時期とされています。
概念のまとめ
・
マーフィー徴候 (Murphy's sign):急性胆嚢炎の特異的所見。右季肋部圧痛と吸気停止。
・
反跳痛 (Rebound tenderness):腹膜刺激症状。虫垂炎などで陽性。
・
カレン徴候 (Cullen's sign) &
グレイ・ターナー徴候 (Grey Turner's sign):重症急性膵炎や腹腔内出血の徴候。
一目で比較!
| 徴候 | 検査方法・所見 | 示唆される病態 |
|---|
| マーフィー徴候 | 右季肋部を押さえながら深呼吸させ、痛みで吸気が止まる | 急性胆嚢炎 |
| 反跳痛 | 圧迫を急に離した時に痛みが増強 | 腹膜炎(虫垂炎、憩室炎など) |
| カレン徴候 | 臍周囲の青紫色の変色 | 重症急性膵炎、腹腔内出血 |
| グレイ・ターナー徴候 | 側腹部の青紫色の変色 | 重症急性膵炎、後腹膜出血 |
解剖生理と薬理のポイント
胆嚢は肝臓の下面にあり、胆汁を濃縮・貯蔵します。胆石が胆嚢管に嵌頓すると胆汁の流出が妨げられ、胆嚢内圧が上昇し、細菌感染を伴う炎症(急性胆嚢炎)を引き起こします。妊娠中はプロゲステロンが胆嚢の平滑筋を弛緩させ、胆汁うっ滞を招き、胆石形成リスクを高めます。
暗記のコツとゴロ合わせ
・「
マーフィーで
吸い止める、胆嚢炎」:マーフィー徴候は吸気停止がポイント。
・カレンとグレイ・ターナーは「
色が変わる重症」:皮膚の色の変化は重症の膵炎や出血を示す。
国試頻出ポイント
急性胆嚢炎の3主徴は「
発熱、右季肋部痛、圧痛」です。マーフィー徴候はその圧痛を確認する方法として必ず出題されます。妊娠との関連も頻出です。
国試出題パターンの変化に注意!
「最も特異的な身体所見は?」という直接的な問い方のほか、「看護師が実施するべきアセスメントは?」「この所見が陽性の場合、疑われる疾患は?」と、看護ケアや鑑別診断の文脈で出題されることも多いです。徴候の名前とそれが何を示すのかをセットで覚えましょう。